+ 女 +















「う・・・うわぁあー!!?」








最初に声をあげたのは岳人だった。
他の全員は驚きのあまりに悲鳴すら忘れている。
全員の視線の先は一緒だった。






流れるように・・・。

ゆっくりと・・・。

壁に描かれた絵が、動いたのだ・・・。






背を向けて桜の木を見上げていた白いワンピースの女が・・・

こちらを振り返ったのだ。








「あ・・・あぁ・・・」

「なにを驚いているの?」








またあの声が聞こえる。

すると絵の中にいた女の肌が・・・髪が・・・1つ1つ鮮明になっていき

女は・・・絵の中から抜け出てきた。

実物になったのだ。








「やっと逢えたわね・・・








絵の中から出てきた彼女を見て全員が目を見開いた。










彼女は・・・ だった。










顔も、声も、そうやって浮かべる笑顔も・・・。

ただ、本物の に比べて彼女は少し髪が長く、歳上に見えた。








「お前が・・・黒幕か」

「えぇ・・・」








跡部の言葉に彼女は静かに頷いた。

その時、隣に立っていた が1歩進み出ながら震えた口を開いた。










「お姉・・・ちゃん」

「なっ・・・!?」










そこから出た言葉に跡部達全員は金縛りにあったように全身に衝撃が走った。








「お姉ちゃん・・・。なん、で・・・」

「フフッ。久しぶりね・・・








の姿をした幽霊はフワッと同じ笑顔をしてみせた。















「やっぱりだ・・・」








まるでバラバラだったパズルが組み合わさるように。

絡まった糸が解けるように・・・。

頭の中で全てが繋がった。








宍戸はポケットの中から例の写真を取り出した。








「この写真に写ってる女・・・こいつは じゃねぇ!この女は・・・」

「そう、私よ。隣に写ってる小さな女の子が ・・・」








宍戸の言葉を遮ると、全員に視線を向けながら続けた。








「自己紹介が遅れたわね。私は 風華・・・5年前に死んだ、 の姉よ」

「5年前に・・・」

「死ん・・・だ?」

「じゃあ、俺達をこの館に連れてきたのもお前・・・?」

「そう。」

「俺達の姿をした幽霊を呼んどったんもお前か!!」








「なんで・・・お姉ちゃん」








がフラフラと風華に近付いていく。








「よせ! っ、戻ってこい!!」








跡部の声なんて聞こえていないのか・・・ は風華のワンピースをギュッと握った。










「お姉ちゃんは、5年前に死んだはず・・・。でも、生きていてくれたの?戻ってきてくれたの!?」








涙を溜める の頭をまるで小さい子を慰めるように優しく撫でた。








「いいえ、 。私は死んだ・・・」

「えっ」

「私のこの姿はね、恨みの塊なの・・・ 。私はあなたを恨むためにここにいる」








スルッ・・・と、風華の白く長い指が の首に伸びた。








っ!!」

!そいつから離れろ!!」










2人に向かって駆け出したメンバーは、目の前に現れた幽霊達にそれを阻まれた。










「よぉ!もう1人の俺」

「チッ!出やがったな・・・!!」

「この先には行かせねぇよ?」








幽霊達は余裕の笑みを浮かべながら跡部達を足止めした。













「お姉ちゃ・・・」

「恨んでた、憎んでた。ずっと・・・ずっと・・・」















ポツッ・・・ポツッ・・・っと降り始めの雨が窓を濡らし

まもなくして激しい音と共に土砂降りになっていった・・・。
















+ ―――――――――― +

辛いは怒りを作り出し。

悲しみは涙を生み出し。

苦しみは憎しみに変わる。

ならば・・・寂しさは?





2006.7.27