+ 解 +















「やめてっ・・・!お願い!!!」








視界に入ったのは割れた花瓶の破片を握り、自分をかばっている日吉に向かって腕を振り上げる。











長太郎の・・・姿だった。











「ダメ!日吉ぃー!!!」








を抱き締める日吉の腕に力が込もった。
















「その辺にしとけ」












――― ピタッ。












あと数センチ・・・そんな距離しかないところで花瓶の破片は日吉の背中寸止めで、止まった。








「悪ふざけが過ぎるぞ」

「あれ。いたんですか?まいったなぁ」








言葉とは裏腹に楽しそうな笑みを浮かべると、持っていた花瓶をゴトンッとその場に捨てた。








「冗談ですよ・・・冗談。姫との約束を破るわけにもいきませんしね」








そう言うと長太郎は、いつの間にか現れた跡部に向かって笑みを向けた。








「日吉若・・・。最後の最後で邪魔してくれるぜ」








挑発的な態度に、日吉は を離して静かに立ち上がった。
それを見て跡部は肩を揺らしてクックッと笑う。








「仕方ありません。いったん引きましょう跡部さん」

「あぁ。じゃーなお姫様。奥で俺達の「主様」が・・・待ってるぜ?」








ガチャリ。鍵が外れる音がする。
そして、キィイ・・・っと不気味に開くドアに目を向けると
その隙に長太郎と跡部の幽霊は姿を消していった。













「な、なんや?何であいつら急に消えたん?」

「あ、 !!」

「日吉もいるぞ!!」








廊下にいたメンバーが全員部屋に入ってくる。
どうやら廊下にいた幽霊達も消えたようだ。








「日吉・・・無事やったんか!」

「当たり前でしょう」








日吉がジローに目を向けるとジローはニッコリ笑顔を返した。








「それより日吉。お前どうやってこの部屋に?いつの間に入ったんだよ」

「この館のカラクリがわかったんです・・・」

「カラクリ?」








日吉はコクンッと小さく頷いてから話を始めた。










「最初に変だと思ったのは調理場の絵画・・・」










ピアノが聴こえて俺の姿をした幽霊が出た途端、それは真っ赤に染まった。

それを踏まえて館中を回ってみたんですよ。

それこそ隅から隅までね。

今まで演奏が聴こえてきたのは7回。










「えっ・・・。まさか!!」

「えぇ。見つけましたよ・・・真っ赤に染まった家具7点を」








バッ!!全員が日吉に詰め寄った。








「元々赤い家具だとも考えられますが 先輩や鳳の話を聞く限り、本来は桜の模様をしていたんでしょう」

「じゃあ・・・演奏が聴こえるたびに1人ずつ桜の絵から出てきてたってわけか」

「そう考えるのが妥当かと」

「で?それと日吉がこの部屋に入ってこれたのとは何の繋がりがあんだよ?」

「これです。」








日吉は全員に背を向け、1つの本棚に近付いた。
そして中心より右に手をかけると、トンッと軽く押して見せた。










グルンッ!!








「「「えぇっ!!?」」」








本棚は回転扉のように回り、反対の壁から出てきたのは真っ赤なドレッサー。
鏡だけは赤に染まらず、驚いた表情のメンバーを写し出していた。








「つまり、7つの家具にはそれぞれカラクリが仕掛けられてあるんです。
 まだ全部を調べたわけではないんで何にどんなカラクリが仕掛けられているのかは把握していませんが・・・」

「でも・・・」








が小さく呟いた。








「消えた幽霊達やピアノの演奏者はどこにいるの?もうこの館の部屋は全部探して・・・」

。もう1つあるじゃない・・・赤く染まってない桜が」








ジローが廊下を見つめながら言う。








「そ、そうか!忍足さんと宍戸さんが捕まっていたはずの消えた部屋・・・。
 別の部屋へと繋げる桜の模様」














「この廊下の突き当たりにあった桜の水彩画。あれが「まだ見ぬ部屋」・・・か」















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心が決まったのならいらっしゃい。

待ってるから。

全員揃って。

いらっしゃい・・・。





2007.6.24