+ 信 +















「ジロー?おいっ、ジローどうしたんだよ?」

「えっ?あ、何ガックン!」

「ボーッとしてさ。やっぱ日吉が心配・・・か?」

「・・・当たり前だよ」


















――― ほんの20分前。


















「はっ!?別行動!!?」

「はい。」











偽者の忍足が消えたあと、日吉が急に別行動を取りたいと言ってきた。











「調べたいことがあるんです」

「調べたいことってなんだよ?それって・・・俺達が一緒じゃダメなのか?」

「それは・・・」











日吉は眉をしかめると視線を下げて足元に目を置いた。











「調べる事はすぐに済みます。
 向日さんや芥川さんには一刻も早く跡部さん達と合流していてほしいんです」

「だからってお前をこんな状況で1人にするわけには・・・」

「お願いします。」

「いい加減にしろよ日吉!!」

「日吉・・・」











俺は日吉の眼をジッと見つめた。
日吉は逃げずに俺と視線を交えた。











「その調べたいことって・・・俺達が一緒だと何でダメなの?」

「言ったはずです。3人で行かなくても俺1人で十分・・・
 先輩達はその間に跡部さんや宍戸さんを捜してもらった方が時間の無駄がないでしょう?」

「日吉が危険だよ」

「俺は自分の身ぐらい自分で守れます。先輩に心配されるほど弱くもありませんし
  先輩のように狙われてるわけでもありませんしね」

「おいっ日吉!!そんな言い方」

「待ってガックン!!」











俺が大声で止めるとガックンはすぐにピタッと動きを止めてくれた。
















「なら日吉・・・1つだけ約束して」
















拳を作り日吉の顔の前まで持っていくと、俺は笑顔で言った。













「絶対・・・かならず戻ってくること!!」













少し間を置いてから日吉はゴツッ・・・と俺の拳に拳を合わせた。


















「かならず・・・」





















それから俺達は分かれ、日吉は別行動となったわけだが・・・。










「日吉の調べ物って何なんだろうな。ジロー?」

「うーん。俺にはわかんないや」













ただ1つだけわかってる事は・・・日吉がその調べ物に俺達を連れて行きたがらなかった理由。













きっと、巻き込みたくなかったんだね。














日吉が何を調べるのか知らないけど、危険な目に遭うなら自分1人で十分だって考えたんだろうね。



本当・・・鳳とは正反対な素直じゃない後輩。


















「なぁ、ジロー」

「うん?」

「なんで・・・なんで日吉を行かせたんだよ?わかってたんだろ?
 日吉が俺達を危険な目に遭わせたくなくて連れて行くの嫌がってたこと!!」

「ガックンも・・・気付いてたんだね」

「だったら!!」

「でもねガックン・・・」


















鳳みたいに素直になれなくて、あんな言い方しかできない日吉。

俺はそんな日吉がすごくいい奴だと思うんだよ。

鳳がすぐ側で守りたいモノを守るタイプなら、日吉は真逆。

守りたいモノから離れて影で守るタイプだ。













そんな日吉だから・・・そんな日吉だからこそ、俺達を心配させるような事はしないよ。


















「俺は・・・日吉を信じるよ。約束したもん!かならず無事に帰ってくるって!!」













そう。信じよう。



拳を合わせたときに少しだけ笑ってくれたあいつを。





































今までにピアノの演奏が聞こえたのは合計6回。

出てきた幽霊は・・・俺・跡部さん・向日さん・忍足さん・・・。
どこかで後2人現れたはずだ。そして残るは2人。











幽霊達は必要に 先輩を狙っているようだけど・・・
あの時向日先輩の幽霊は「会わせたい奴がいる」と言っていた。

恐らく幽霊達の司令塔。ピアノの演奏者。
そいつがこの館にいることは確実なんだ・・・。















まずはその演奏者を捜す・・・!!















+ ―――――――――― +

人が「大事なモノ」を守るとき。

その守り方はそれぞれ違う。

自分のやり方でそれを守る。

さぁ・・・。

貴方は守れるかしら?





2007.3.3