+ 途 +















ドクンッドクンッ・・・っと3人の心臓は嫌な三重奏を奏でていた。






「結構わかるの早かったやん!お見事お見事♪」

「侑士は・・・本物の侑士はどこだよ?」

「さぁ?どこやと思う?たぶん帽子かぶった兄ちゃんと一緒やと思うで」

「なんで宍戸や忍足や を襲うの?お前達の狙いは何!?」

「狙い・・・?」






忍足の姿で再びクックッと笑うとスッと吊り上がった眼が3人を見据えた。






そして人差し指でトントンッと胸を指差すと
先ほどまでとは比べられないほど低い声で言い放った。










「欲しいんや。お前らの・・・その体が」


















「どういう意味だ鳳?」

「いや、俺の勝手な想像ですけど・・・もし、ずっと 先輩の側にいる俺達が
 邪魔な存在だとしたら、相手側はどうにか 先輩を1人にしようとするはずです!」

「それが無理だからチーム分けをさせて邪魔者の数を減らしたってか?」

「たぶん・・・」

「待って!だとしたらチーム分けを考えたのは忍足だよ?あの忍足が偽者ってことに・・・」

「ありえねぇ話じゃねぇよ」

「そうですね。宍戸さんと一緒に捕まったと考えることもできます」

「そんな・・・」






あの忍足が・・・偽者?






「嫌な予感がするな・・・」

「どうします?」

「まずジロー達と合流だな。忍足のことが気になる」

「宍戸は!?」

。あいつはレギュラー落ちから這い上がった男だぜ?メンバーん中で1番根性あんだろ」

「でもっ・・・」

「信じましょう。 先輩」






長太郎の言葉に は1つ頷くと急ぎ足で廊下を戻っていった。















「本物の侑士と宍戸はどこにいるんだよ!!」

「知ってるんでしょう?」

「さぁ?知りたいんやったら・・・力ずくで聞かなアカンで?」

「あぁ、そうですか。後悔しないで下さいよ?」








シュッ・・・!!








「うわっと!?」








日吉の拳を寸前でかわした忍足は1回のジャンプで3人からの距離を広げた。








「ビビッたぁ!あんた空手かなんかの有段者なん!?恐っ!!」

「ふざけないで下さい。こっちは真剣なんです」

「真剣。真剣なぁ・・・なら1つ聞いてもええか?」






忍足は両手をポケットに突っ込むと急に顔付きが変わった。








「なんであんな女、庇うんや?」








「あんな・・・」

「女・・・?」








日吉と岳人が交互に小さく繰り返した。








「あんな女って・・・ のことか?」

「他に誰がおるん」

「どうして がお前みたいな奴に「あんな女」呼ばわりされなきゃいけないの?
 悪いけど・・・うちのマネージャーを馬鹿にするんだったら許さないよ」

「おーおー。美しい友情やなぁ?けど・・・
 そこまで言うんやったら、ちゃんと守ってやらんとアカンやん」

「・・・どういう意味ですか?」








足元からスーッと消えていき、すべて消え終わる寸前で忍足は口を開いた。








「早せんと・・・2度と会えへんようになるで?」








バッ!!っと3人同時に顔を上げ、その場に立ち尽くした。










「「「ピアノ!!?」」」















ハァ・・・ハァ・・・。






暗闇の部屋で2人分の苦しそうな息遣いが静かな空間に響いた。






「おい・・・生きてっか?忍足」

「当たり前やん。宍戸も大丈夫そうやな・・・」

「あー。ったく・・・捕まるなんて激ダサだぜ。このロープもウザってぇ」

「なんや。まだおとなしく縛られてるんか?」

「って・・・なんでテメェは抜け出してんだよ!?」

「さっき調理場でナイフ見つけたから持って来たんや!用意周到やろ?」

「おいっ、用意周到。とっとと俺のロープも切れ!」






やっと手足が自由になった2人は自分達が監禁されている部屋をぐるりと見渡してみた。






「誰かの部屋みたいやな」

「明りは机の上のキャンドルだけか・・・今までの部屋より薄暗ぇな」

「なんや?写真があるで」









忍足が手に取った1枚の写真立て。
そこに写る人間を見て2人は言葉を失った。












「し、宍戸・・・これ」

「どういう事だよ・・・?」












今、秘密を知った者。

それぞれの決断の時が・・・刻一刻と迫り来る。















+ ―――――――――― +

秘密を知りし者。

迷い迷って・・・。

自らの決断を待ちなさい。

それは誰も干渉できない。

自らの道なのだから・・・。







2007.1.27