+ 消 +















・・・ ・・・」








誰もいない暗い部屋で、静かに・・・あの子の名前を呼んだ。








・・・」








指先にある鍵盤を押すと、ポロンッと音色が落ちてきた・・・。




















「あ、跡部?」

「あーん?なんだよ」

「いや、それはこっちの台詞だったり・・・」






は俯き加減でだんだん声が小さくなっていく。
跡部はよく聞き取れなかったのか の顔を覗き込んだ。






「なんだよ?」

「だ・・・だから距離が近いっつーの!!!」








跡部の両肩をググーッと押し離すと は隣にいたジローの影に隠れた。








「さっきから何でくっついてくるの!?」






ジャージを握り締めてくる の頭をジローはポンポンッと撫でた。






「跡部! を苛めちゃダメー!」

「あん?俺がいつ苛めたっつーんだよ」

「さっきから にベタベタしすぎ!!俺怒るよ!!」








ブーッと唇を尖らせるジローを見て跡部は溜息をついた。
その後ろで聞こえてきたのは苦しそうな笑い声。


忍足が口に手を当てて必死に笑いを堪えていた。










「おいっ・・・忍足」

わーっ!?笑ってへん!笑ってへんよ!?痛たたたたたっ!!(涙)」

「笑ってんじゃねーか。思いっきり」

「せ、せやかて を心配しとる跡部が、
 なんつーか・・・めっさおもろいんやもん!!」

「あぁ!?(怒)」



「えっ、跡部心配してくれてたの?」








ピタッと忍足を絞める腕を止めると小さく舌打ちをして背を向けた。








「心配なんかしてねーよ」

「嘘やな。じゃあなんで から離れないんや?
 
答えは心配やから痛たたたた(泣)」

「2度と口聞けねぇようにしてやる・・・」

「跡部は照れてるんだー♪」

「黙れジロー!!」

「まぁ、跡部がこんなに心配すんのもわかるけどな」

「そうですね。だって・・・」








長太郎が言いずらそうに口を閉じると、代わりに日吉が淡々と答えた。








「あいつらは何らかの理由で 先輩を狙ってる」

「・・・あぁ」






シンッ・・・と辺りが静まり返った。
そんな中「はぁ・・・」っと の溜息が妙に響き渡った。






「でも何で狙われるんだろ?私なにか跡部達の幽霊に恨みでも買ったかな?」

「だから死んでねぇって。いい加減にやめろよそのネタ」

「会わせたい人がいるって言ってましたよね・・・」

「会わせたい人ねぇ・・・」

「なぁ。俺の勝手な憶測なんやけどぉ」








忍足はペットボトルに入っている水を一口飲むと少し間を開けて顔を上げた。








「幽霊達が言っとった「会わせたい奴」っちゅーのが今回の黒幕なんちゃう?」

「そう考えるのが妥当だな・・・」

。なにも心当たりねぇのかよ?」

「うーん・・・そう言われてもねぇ」






幽霊に恨みを買った覚えなんて誰もあるはずがない。
それに は元々誰かに恨まれるような人間ではないから尚更だった。










「あれっ。宍戸どこ行くの?」

「喉かわいたから飲みもん取って来る。他に欲しい奴いるか?」

「「「はーい!!」」」

「って全員じゃねぇか!しょうがねぇな・・・」

「ちょっと待って!1人じゃダメだよ!私も行く!!」

「バーカ。お前はこいつらから離れんな」

「なら俺行こか?それなら安心やろ?」






手を上げて宍戸と部屋を出ようとする忍足。
2人を見て跡部が真剣な目を向けた。






「気をつけろよ・・・」

「「了ー解。」」








ニィッと余裕の笑みを見せると2人は部屋を出て調理場へ向かった。















「宍戸って幽霊信じるか?」






お気楽な口調で忍足は宍戸に聞いてきた。
宍戸はその質問に眉をしかめながら考えるように慎重に答えていった。






「信じてなかったんだけどなぁ・・・本当にいるとはな」

「せやなぁ・・・あの岳人の姿した幽霊には腹立ったわ」






調理場につくと警戒しながらもペットボトルに入った水を素早く人数分抱えた。
宍戸は廊下へ1歩出ると中を振り返った。






「おいっ忍足!早くしろよ」

「あ、あぁ・・・せやな」






忍足の視線の先には真っ赤に彩られた絵画が不気味に存在していた。








「あれってホンマに血なんやろか・・・?」

「さぁな、ジローは血だって言ってたけどな。
 それより早く戻・・・。忍足っ!!?」

「ピアノや!!宍戸!!」








バタンッ!!!








忍足が宍戸に駆け寄ろうとした瞬間、
調理場の扉が勝手に閉まり2人を隔離した。








ガチャガチャ!!








「開かへんやと!?宍戸!宍戸無事なんか!!?」

「おぅ!テメェこそ無事かよ?」








扉を叩いて返事をしてきた宍戸にとりあえず安心していると、
間も無く宍戸のものであろう激しい叫び声が轟いた。










「なんや・・・?!宍戸どないしたん!宍戸!?返事せぃ!!」








バンッ!!








急に開いた扉。


忍足は勢い余って思わず前のめりに倒れ込むと、目の前には・・・。










「宍戸・・・?」










さっきまで宍戸が両手に抱えていたペットボトルだけが、散乱していた・・・。















+ ―――――――――― +

1人・・・。

そして同時に餌を撒き。

更なる迷路へご案内致します。

お楽しみあれ・・・。







2007.1.6