+ 重 +















「あ、雨だ」






廊下の窓から外を覗くとシトシトと冷たい雨が降り注いでいた。






?」

「忍足!どうしたの1人?」

「あの部屋にずっとおるのも退屈なんや。 も何1人でフラフラしとんねん」

「ん?ちょっとね・・・」






そう言うと は再び窓の外に目を移した。






「なんや悩んでる顔やな?」

「えっ・・・」

は顔に出やすいからすぐ分かるんや。何悩んどるん?」

「いや、たいしたことじゃ・・・」






顔の前で両手を振って否定すると忍足はクシャ・・・っと の髪を撫でた。






「ほんまに何でもないんやったらそんな顔せぇへんはずやろ?隠し事なしやで」






ニコッと笑顔を向けてくる忍足に嬉しさを感じながら は足下に視線を落とした。






「あの幽霊が言ってた・・・」

「「精々この女を守るために足掻くこったな」ってやつか?」

「うん。跡部達の言う通り、もしもそれが本当に私のことだったら・・・
 私がみんなを巻き込んだことになるのかな?理由は分からないけど、私のせいで
 みんなが危険な目にあったら・・・」








ビシィッ!!!






「だっ!!?」






いきなり額に走る小さな痛み。
忍足は大きく溜息をつくと呆れた顔をしてみせた。






「あーぁ。また悪い癖や」

「はっ?」

「すぐに自分のせいにして、溜め込んで
 俺らの見とらん所で落ち込んで・・・ の悪い癖やで」






ビシィッ!っともう1発。 の額に忍足の指が勢いよく弾かれた。






「いっ!?」






「もっと頼ったらええんや。誰も を責めたりせぇへん・・・
 これやからうちのマネージャーは目ぇ離せなくて困るで」






額を押さえる に忍足は優しくほほ笑み手を差し伸べた。






「ここ全員で出て・・・早ぅ帰ろ」

「・・・そうだね」






の顔に笑顔が戻った。










――――― っ
!!?










「忍足っ!!」

「わかっとる!!」






忍足は手の平を耳に添えると瞳を伏せて、静かに流れる音色を聴いた・・・。






「これやな・・・噂のピアノっつーのは」

「うん・・・」






思わず息を飲む。
静かな廊下だから響くのか、あちらこちらから音が聞こえて来るような気がした。






「たしかピアノを聴いた奴には幽霊が見えるんやったなぁ・・・
 じゃあ、俺も仲間入りやな」






忍足は の手をギュッ!と握ると一目散に廊下を走り出した。










「お、忍足!?」

「ここにおるんはヤバイ。跡部達と合流するで!」

「う、うん!」






見えないピアノに追い込まれる恐怖を感じながら
忍足と は長い廊下の一角を曲がった。










バンッ!!










「うわっ!?」

「なっ!?」






いきなり目の前のドアが開いたので忍足と は驚き足を止めた。






しかし1番驚いた様子だったのはドアを開けた本人・・・岳人だった。








!侑士!!」

「ガックン!?」

「岳人!?」

「どこ行ってたんだよ!2人ともいねぇからすっげぇ探したんだぞ!!」

「ごめん。ごめん。ガックン1人で探してくれてたの?」

「跡部達と探してたんだけど・・・はぐれた」

「はぐれたぁ?」






忍足がクックッと笑いだすと岳人は不機嫌そうに唇を尖らせた。






「笑うんじゃねぇよ!クソクソ侑士!!」

「あぁ・・・堪忍な」

「私達も合流しようとしてるんだ!一緒に行こう?」






一瞬にして岳人の顔がパッ!と明るくなった。










「おう!」















そのころ跡部達は全員廊下を歩きながらいなくなった 達を探し回っていた。






「跡部さん・・・」

「わかってる。このピアノの音だろ?」

と忍足が一緒にいればいいけどな・・・」





「心配ですよね?」






長太郎は自分の隣を歩く人物に目を向けた。










「向日先輩」






「そうだな。大丈夫かな・・・侑士と の奴」















+ ―――――――――― +

迷えばいい。

騙される方が悪い。

さぁ・・・誤った道へ。

何の疑いもなく・・・。







2006.12.25