+ 繋 +















「また・・・あなた?」

「また?俺はあんたと初対面だけどなぁ?」

「じゃあ、あの日吉の姿をしてた人は」

「俺の仲間に会ったのか。なぁーんだ、俺が1番だと思ったのによ」






そして男はニヤッと不敵な笑みを私に向けた。






「おい。 ・・・お前さっきから誰と話してんだよ?」

先輩・・・」

「宍戸・・・長太郎」










また私にしか見えないんだ・・・どうして?


どうして宍戸達には見えないの!?










「なんだぁ?そいつら俺のこと見えねぇの?
  だったら仕事は早ぇや。お前一緒に来い」

「えっ?」






男はそう言うと私の腕をつかんできた。


体温のない冷たい手・・・ゾクッとした寒気を背中に感じた。










「嫌っ!!」






ガシッ!!










に触らないで」










「あぁ?」

「ジロー・・・ちゃん?」






ジローは男の手をつかむと から引き剥がした。
その目は今までのジローからは想像もできないほど鋭く、冷たいものになっていた。






に触るなって言ったの」

「ジロー・・・お前?」

「見えるの!?ジローちゃん!!」

「見える。俺にも見えるよ ・・・跡部の姿をしたあいつがね!!」






ジローは今にも跡部の姿をした男に掴み掛からん勢いだ。
表情からは怒りが満ち溢れていた。






「へぇ!こいつ跡部っつーの?」

「だったら何?それよりさっさとその皮はがしてくんない?
  のこと怖がらせてさぁ・・・跡部の姿までされると俺も怒るよ?」






姿は跡部そのもの・・・。
そいつは跡部の顔でニヤッと笑った。










「そんな怒んなよ。なぁ・・・ジロー?」






声も・・・跡部。










「その姿で俺の名前を呼ぶなよ!」






ガタンッ!!






「ジロー!?」

「ジローちゃん!!?」






跡部の姿をした男の胸倉をつかむとジローは吊り上げた目を向けた。






「その顔で笑うな!その目で を見るな!
  いい加減にしないと、怒るって言ったよ」

「へっ!」






嘲笑うと軽々とジローの手を払い除けチラッと に眼を向けた。










「まぁ、どうせこの館からは出られねぇんだし・・・



          精々この女を守るために足掻くこったな」








「・・・えっ?」

「じゃーな」






足からスーッと消えていくと最後に残ったのは男の不敵な笑み。
完璧に消えたと同時にドアの鍵がガチャ!と音を立てて開いた。










「開いたぞ! ー!!」

「ガックン!跡部、忍足、日吉!」

「全員無事みたいだな」

「良かった・・・」

「本当に心配したんだぜー!でも無事で良かった!なぁジロー?」








「よくないよ」








ようやくジローの変化に気付き、跡部達は動きを止めた。
岳人はオーラが違うジローに完璧に固まっている。






「ジロー・・・?」

の言ってた幽霊・・・俺にも見えたよ。あいつ、消える寸前にこう言ってった
 『精々この女を守るために足掻くこったな』って・・・どういう意味だかわかるよね?」

「・・・お前、見えたのか? と同じモノが」

「うん」

「宍戸と鳳も?」

「いや、俺達は・・・」






ジローは真っ赤に染まった花瓶を見つめながら拳を握り締めた。






「とりあえず・・・部屋に戻った方がよさそうですね」






日吉の一言で全員部屋を調べることは諦め、元いた部屋へ戻った。































「ジロー。何があったか詳しく聞かせろ」

「うん」






部屋に戻るなりジローはさっきあった出来事について話し始めた。
話し終わるころには全員顔をしかめて考え込んでいるようだった。






「日吉の次は跡部の幽霊か」

「だから死んでねぇよ」

「そいつの言ってた『精々この女を守るために足掻くこったな』
  って・・・ のことだよな?」

「そう考えるのが妥当でしょうね」

「じゃあその幽霊達は を狙ってんのかよ?!」






跡部はしばらくしてチッ・・・と舌打ちをした。






「そういえば・・・宍戸さん達が部屋に閉じ込められた時、
  ピアノの音が聞こえてきましたよね」

「日吉!それ本当!?」






日吉が頷くと は一点を見つめて考え込んだ。






「どうした?」

「ねぇ・・・初めて私が幽霊を見たときも跡部達とピアノ聴いてるよね?」

「あぁ・・・聴いてる」

「さっきは部屋にいたけど、その時もピアノが聞こえてきたんだよね?」

「何が言いてぇんだ?」






跡部が聞くとジローが再びあの鋭い目をして言った。






「わからないの?跡部・・・ や俺が幽霊に会う前に、
  必ずあのピアノの音を聴いてるんだよ」

「せやからピアノを聴いたジロー達には見えて、
  聴いてへん宍戸達には見えへんかったんか・・・」

「しかも、そばには必ず桜の絵がある」






日吉が付け足すとジローも頷いた。






「きっと他の部屋にもいくつかあるはずだよ・・・桜の絵が」



「そして、ピアノの音が・・・」















+ ―――――――――― +

1人。また1人。

いらっしゃい。

私のもとへ・・・。

そしてあの子を。





2006.12.9