+ 境 +
「なんで・・・?あんなに綺麗な絵だったのに・・・」
「
先輩・・・」
真っ赤に染まった絵を見て
は残念そうに肩を落とした。
「この館に誰かいるとしか思えませんね」
「わからないのが・・・何でこんなことをするのかってことだよ。
俺達を怖がらせたいのかな?」
「だったらわざわざ怖がってやる必要なんかねぇんじゃねーの?」
「とにかく・・・もう1度調べ直した方がよさそうやな」
忍足の言葉に
は一瞬ビクッと体を震わせた。
「また、この館を?」
「
・・・怖かったら待っててええよ?」
「ううん。行く!」
「無理すんじゃねぇよ。誰かとここに」
「行くったら行く!!」
「
先輩、やめた方が」
「絶対行く!!!」
跡部は盛大に溜息をつき忍足はクックッと肩を揺らして笑った。
「1度言い出したら頑固やからなぁ・・・うちの姫さんは」
「跡部さん。」
「跡部ー。」
「チッ。わかったよ!じゃあ今度は全員でまわる。文句ねぇな」
ジローは「やったー♪」っと
に抱き付き単純に喜んだ。
そして、全員見つけ出したパンやフルーツなどを口に運ぶと
調理室を出て1階から隅々まで調べ回った。
ガチャ。
「しっかしどこの部屋も薄暗ぇな」
「でも忍足や跡部が言った通り・・・どこの部屋もすごく綺麗に掃除されてる」
の言葉の後に宍戸が声を上げた。
「おい!また桜の絵があるぞ!」
全員そちらに向かうと今度は高級そうな花瓶の絵柄に満開の桜が彩られていた。
「本当だ・・・さっき来たときは気付きませんでしたよ」
「さ、特に何もなさそうやし・・・出よか?」
そう言って特に不思議なところはない部屋からまた廊下へ出た。
バタンッ!!!
「えっ!?」
「なっ!!?」
達4人が出ようとした途端、扉は勢いよく閉まり
固く閉じて開かなくなってしまった。
「嘘!!なんで!!?」
ガチャガチャとドアノブを回す音だけが部屋中に響く。
部屋に残されてしまったのは
とジロー。そして長太郎と宍戸だった。
「おいっ跡部!忍足!向日!日吉!無事か?!」
ドンドンと扉を叩くと向こうも叩いて返してきた。
「あぁ。そっちは?」
「全員無事だ。それで・・・どういう訳か扉が開かねぇんだ!!」
「どうしよう・・・」
「大丈夫だよ。
」
「ジローちゃん」
「俺達がいますから」
「長太郎・・・」
長太郎がニッコリ笑いかけジローが頭を撫でると不思議と口許が緩んだ。
「幸せそうだなぁ。お前ら・・・」
「えっ・・・?」
4人しかいないはずの部屋にもう1人・・・ニヤッと笑った顔が窓辺の影に映った。
一方跡部達4人はドアの前で頭を抱えていた。
「畜生・・・なんで開かねぇんだよ」
「どーすんだよ!中には
だっているんだぞ!?」
「一緒に宍戸達もおるから心配あらへん」
「それより俺達はどうやってこのドアを開けるか考えましょう」
岳人は考えるポーズをとると壁に寄り掛かりそのまま座り込んだ。
「クソクソ・・・俺なにもできねーじゃんか」
すると長い廊下の奥から岳人の耳に1つの音が入り込んできた・・・。
「ん?なぁなぁ!」
「なんだよ」
「これってピアノの音じゃねぇ?」
全員ピタッ!っと動きを止める・・・
そこには確かに、静かに曲を奏でるピアノの音があった。
+ ―――――――――― +
見苦しい、信頼なんて。
くだらない、信頼なんて。
壊してあげる。
何もかも・・・粉々にね。
2006.12.1