+ 視 +















外に出るためにいろんなことを試したが全て無駄だった・・・。
もう全員、疲労と不安に押し潰されそうになっていた。






「・・・とりあえず少し休みませんか?」






廊下に座り込むメンバーを見て長太郎が静かに言った。






「そうだね。みんな疲れてるだろうし・・・どこかの部屋で休もうよ」

「それやったら丁度えぇ部屋があるで」








館を見回ったときに忍足達が見つけたと言う
広い部屋へ全員移動した。


いかにも客室のような場所で広い部屋に
高級そうはソファがいくつか置いてあった。


同じくオシャレな球体のランプが数個光を放っているだけで
相変わらず薄暗い印象を受けた。










「さて・・・これからどうする?」
 
「どうするったって・・・ドアも開かねぇし。窓も開かねぇし
 ガラスも割れねぇし携帯も通じねぇし!これでどうやって外に出るんだよ!?」

「助けも呼べませんね」






日吉の言葉にシンッとした空気が漂った。






「どっちにしろ館には誰もいないみたいだし、夜になっちゃったし・・・
 今日はここでゆっくり休んで明日の朝また考えようよ!!」

「そうだよー。怒ったってしょうがないよガックン」

「お前は・・・よくこの状況でお菓子なんか食ってられるな」

「えへへー♪」






無邪気に笑うジローを見て、緊張した面持ちだったメンバーに笑みが戻ってきた。










「そーいえば・・・なんか腹減ったな」

「せやな。ここの廊下の突き当たりに調理室っぽいところがあったで」

「本当?じゃあ私なにかないか探してくるよ!!」






部屋を出て行こうとした の手を跡部がつかんだ。






「バカ!1人で動くんじゃねぇよ!!」

「大丈夫だよ?すぐそこだし」

「ダメだ!俺も行く」

「みんなは疲れてるんだから休んでて!大丈夫。何かあったら呼ぶから」

っ!」






「じゃあ俺が一緒に行きます!」






声を上げたのはニッコリ笑った長太郎だった。






「跡部さん達は明日どうするか話し合った方がいいでしょうし・・・
 俺なら調理室の場所もわかります!」






跡部は少し考えるとハァと溜息をついた。






「すぐ戻れ。何かあったら呼べよ」

「わかった!!」






そう言って と長太郎は部屋を出て行った・・・。










「素直やないなぁー」

「何がだよ」

「心配なら、心配やって言えばえぇやん。そばに付いてたいんやろ?ホンマは」

「鳳が付いてんだ。心配なんかしてねぇよ」






忍足に背を向けると跡部はソファにドカッと座って、天井を仰ぎ見た。































「こっちの廊下も薄暗いねぇ」

「そうですね。そういえば 先輩達が聞いたって言ってたピアノの音・・・」

「あ、うん。どこから聞こえてきたんだろうね」

「もしかして他にも部屋があるのかも・・・あ!ここですよ調理室」

「よしっ!さっさと食べ物探して持って行ってあげようか!!」

「はい!」











ガチャ。











「わっ・・・!!ここも広いね」

「そうですねー」






部屋に入るなり長太郎と はフッと壁にかけてあった絵画に目が止まった。











「大きな絵だなぁ・・・」











描かれていたのは満開のピンクの桜・・・
その絵の大きさと美しさに は心を奪われた。









「素敵・・・」






「それは私達の主人(あるじ)様が描かれた絵でございます」






「っ!!?」











背後から聞こえてきた冷たい声に はビクッと体を震わせた。




















「いらっしゃいませ・・・ 様」














+ ―――――――――― 

歓迎するわ。

あなた達のこと。

精々私を退屈させないでね?







2006.9.30