+ 縛 +















「なぁ・・・なんや変やない?」





ある部屋の机の上で指を滑らせながら忍足は他の3人に問い掛けた。





「なんだよ侑士?」

「なにか見つけたんですか?」

「見てみぃ。どの部屋も塵1つ落ちてへん・・・綺麗すぎやない?」

「それが?」


「俺らの見た限りやったらここに人は住んでへんやん。
 
せやのに誰がここを掃除するん?」





全員ハッと部屋を見渡す、忍足は窓の外を覗きながら続けた。





「こんだけ綺麗好きの人間が住んでるんやったら自分家の庭くらい世話するやろ?
 俺らがバスを下りた時・・・雑草が生えまくっとったで?」

「そういえば・・・」

「なんなんだ?ここ・・・」


「何かあることは確かですよね。
 とりあえず 先輩達と合流しましょう!心配です!!」






部屋を出ると忍足達は急いで階段下へ向かった。
そこにはすでに 達4人がいて、全員無事なことに安心した。






「ねぇ!1階にピアノなかった?」

「ピアノ?いえ、ありませんでしたよ?」

「うそ!?」

「どうしたんだよ ?」

「ピアノの演奏が聞こえてきたんですよ。
 曲は「月光」。だから鳳あたりが弾いてるのかと・・・」

「いや、俺は別に・・・」

「じゃあ!あのピアノは誰が!?」








シーンと辺りが静まり返る。








「俺も言っておきたいことがあんねん」

「館が全然汚れてねぇってことだろ?忍足」

「なんや、やっぱり跡部は気付いとったん?
 気になるやろ・・・そのくせ庭は雑草だらけや」

「「何者」かがこの館にいるってことかよ?」

「俺達以外の「何者」かがな・・・」





跡部の言葉が高い天井に響く・・・
は荷物を持つとそばにいた忍足のジャージを引っ張った。





「ねぇ?やっぱりここ出よう!?帰ろうよ!!」

「せやな・・・俺もここにおるんはヤバイ気ぃするで」

「どうにかして森を抜けましょう」

「よし、全員荷物を持て!ここを出る!」








全員慌しく自分達の荷物を持つと宍戸がドアノブをガチャガチャと回した。








「あ・・・?」

「何やってんだよ宍戸」

「宍戸さん?」

「・・・かねぇ」

「はっ?」

「開かねぇ!」

「「えぇ!?」」








ドンッ!!     バンッ!!!



「チッ・・・」







宍戸と長太郎が何度か体当たりしてもドアはビクともしない。








「くそ・・・!窓も開かねぇ!!」








たくさんある窓も鍵がガッチリかかっていて開かない。








バンッ!!








「窓ガラスも割れへんかっ!!」



忍足がイスを片手に溜息をついた。






「ど、どういうこと!?」

「外に出られないってことだろ・・・?」

「俺達、閉じ込められたみたいだね」

「そんな・・・外に出られない!!?」










ドアも開かない。

窓も開かない。

ガラスも割れない。

携帯電話も使えない・・・。



合宿に来たはずの8人は不気味な館に閉じ込められ、
助けを求めることもできない状況にただ黙ることしかできなかった・・・。














+ ―――――――――― +

何をしようと無駄なこと。

貴方達はもう私の手の中。

まるで籠の中にいる鳥のよう。







2006.8.17