+ 音 +















氷帝レギュラーメンバーと は雨にうたれながらも、
ゆっくりゆっくり館へ近付いていった。





「ね、ねぇ・・・やっぱりあの館に入るのやめない?」

「だったら雨の中ずっと外で突っ立ってるか?」

「うっ・・・」

「大丈夫ですよ 先輩。雨が止むまでの辛抱です」





近くで見るとますます大きく、不気味な館の扉に跡部は手をかけた。








ギィ・・・。








「す、すみませーん」

「・・・誰もいねぇのか?」






中はいたって静か・・雨の音さえも聞こえない。










バタンッ!!!






「うわっ!!」

「な、なに!?」

「いえ、急に扉が閉まったんで・・・」

「脅かすなよなー!びっくりしたぁ」

「なんや岳人。怖いんか?」

「怖くねーよ!!クソクソ侑士!!」

「しっかし。広いなぁ・・・ここ」

「あぁ。外見からしてデカかったからな」






たしかに・・・中は静かなうえ薄暗く、高い天井に声が響いた。






「でもこれで雨が止むまでいられるね」

「そうだな。本当に誰もいねぇのかよ?ここには」

「せやったら探してみるか?」






忍足の言葉に一瞬全員の動きが止まった。










「探すって・・・この中を?」

「ずっと立ったままってのもあかんやろ。
 それにこの館・・・調べる価値ありそうやん」

「まだ何があるかわからねぇ館だ。
 動くなら2チームに分ける、いいな?」






チーム分けは跡部・ ・日吉・ジローチーム
そして忍足・岳人・宍戸・鳳チームに決まった。










「じゃあ俺達は2階。忍足達は1階を調べろ」

「この館なんや嫌な感じするし・・・気ぃつけるんやで?」

「そっちもな」






階段の下で別れると跡部達4人は2階に上がった。















「2階も無駄に広いですね・・・」

「すっげー!探検なんてワクワクするCー♪」

「ジローちゃんは楽しそうだねぇ」










それから部屋1つ1つを調べて周ったが、書斎・・・
シャワールーム・・・ギャラリーなど、別に変わった部屋はなかった。










「これで部屋全部調べ終わったな」

「そうですね・・・肝心の人間はいませんでしたが」

「なら1階に戻・・・・・・・・・ん?」

「どうしたの?






「・・・ピアノ・・・?」






「あ?」

「本当だ!ピアノの音だー!」

「曲は「月光」・・・でも」

「ピアノも演奏者もここにはいないはずだ・・・
 俺達でさっき全部の部屋調べたんだからな」

「じゃあ・・・誰が弾いてるの?」






どこからともなく聞こえてくるピアノの音は不気味で・・・
4人の背中にはゾクッと寒気が走った。






「もしかしたら下で忍足さん達が遊んでるのかもしれません」

「あ、そっか!忍足達は1階を調べてるんだよね!
 じゃあ合流しよう!!1階にピアノがあったのかもしれない!!」

「あぁ・・・そうだな」






跡部は 達が階段を下りるのを待って暗い廊下を見つめた・・・。








このピアノの音は1階からじゃねぇ・・・2階だ・・・。








「跡部ー!どうしたの?早く行こうよ」

「・・・あぁ」








跡部の察し通り・・・演奏者はここにいた。








とっくに雨が止んだ空から見える月にピアノを弾く手を止めると、
ニコッと静かに笑みを浮かべた。














+ ―――――――――― +

聞こえたでしょう?

あなた達を歓迎する私の演奏が・・・。

聞いたでしょう?

4人は私の演奏を・・・。









2006.7.23