+ 呼 +
「おはようございます。
先輩」
「おはよ・・・長太郎」
「元気ねぇぞ!これから合宿なのにどうしたんだよ!!」
「朝早かったから眠いんだよ・・・ガックンはいつも元気良すぎるの!!」
「全員集まったか?」
「えっと・・・集まってるのは長太郎と宍戸とガックン。
忍足・・・日吉に跡部。あれ?ジローちゃんと樺地がまだみたい」
「あぁ・・・ジローの奴はどうせ寝坊するだろうから
バスに家まで迎えに行かせた。樺地は今回の合宿には不参加だ」
「へぇ。」
「あ!バス来たぜ!!」
ガックンが指差す方へ目を向けると1台のかなり大きなバスが校門の前で止まった。
「さっさと荷物乗せて出発するぞ」
「あ、うん!!」
荷物をすべて詰め込み、私達も全員バスに乗り込むと
1番奥の席でぐっすり眠るジローちゃんを発見した。
「跡部の読みは大正解ってわけね・・・」
「おーい!!起きろよジロー!!!」
「うーん・・・?」
「よしっ!じゃあ強化合宿に向けて・・・出発!!!」
「「おぉー!!!」」
朝からテンションの高いこのメンバーを乗せて・・・
バスは跡部の別荘へ向けて動き出した。
「
―!お菓子食う?」
「あ!ほしい!!」
「自分ら遠足気分やなぁ・・・」
「もっと緊張感持てねぇのかよ?」
「バスの中で緊張感は出せないよ。みんな到着すれば真剣に練習するって!」
「そーだよ!どうせ到着するまでテニスできねぇんだからさ!」
くだらない話で盛り上がり・・・笑い合い・・・
いつしか全員バスに揺られながら眠りに落ちていった・・・。
「ん・・・。寝ちゃっ・・・た」
だいぶ長い時間眠っていた気がする・・・窓の外を覗いて見るとバスは動いていない。
止まっているようだ。
「えっ。あ・・・みんな?みんな!!起きて!!!」
「・・・なんだよ?うるせぇな」
「・・・寝てしまったみたいですね・・・」
「どないしたん?
」
「外!外を見て!!」
バスの窓を開けて外を見渡すと・・・
森・・・森・・・森!!
大きな木々がバスを囲み、背の高い雑草が一面に生い茂っていた。
「なんだよ・・・これ?」
「おい!運転手いねぇぞ!?」
「見て!俺達の荷物が外に投げ出されてる!!」
見ると、運転席はもぬけの殻・・・
バスに積んでおいたはずの荷物は全部外に放り出されていた。
「なんで・・?」
恐怖という名の不安が全員に襲いかかった。
「とりあえず全員外に出ろ。ずっとここにいてもしょうがねぇ」
跡部の言葉に全員頷きバスから降りると再び心臓が嫌な音を立てた。
「う・・・わっ」
「なんだよ・・・ここ」
思わず全員が1歩下がる。
目の前には、ホラー映画から抜け出したような館がそびえ立っていた・・・。
学校くらいあるような大きな館・・・。
それでも今は「不気味」以外なんの感情も出てこなかった。
「ここが跡部の別荘・・・」
「なわけねーだろ」
「なんでこんな所に・・・」
「跡部?」
跡部はバスを見つめると小さく呟いた。
「おいっ・・・このバスは、どうやってここに来た?」
「はっ?どうやってって・・・普通に走って」
「よく見ろ!!!」
全員、ゆっくり辺りを見渡した・・・
そして、信じたくないが信じられない事実に気がつく。
「おかしいですよね・・・。この森にはバスが通ったはずの道がありません。
見渡す限り木に囲まれています」
「どうなってんだよ・・・?」
そう。見渡す限り全面が木に囲まれていてバスがここに入ってこれるはずがない。
全員が呆然と立ち尽くしている中、ポツッ・・・ポツッ・・・っと雨が
の頬を打った。
「雨・・・」
「次から次へと・・・」
携帯を開くがもちろんここは圏外・・・どこにも連絡はとれない状況だ。
「私・・・あのバスに戻るのは嫌」
「でも、ここがどこだかわからない状況で・・・下手に動くのは危険です」
「雨の中突っ立ってるわけにもいかへんしなぁ・・・だったら選択肢は1つや」
スッと伸びた指の先にあったのは・・・あの不気味な館だった。
「あの館に?」
「他にいい場所はないやろ?どないする・・・跡部?」
雨で少しぬれた手で荷物を拾い上げると、跡部は全員に向き直り背中越しに館を指差した。
「全員荷物を持ってあの館に入れ」
強くなってくる雨の中・・・跡部の声だけが静かに響いた。
+ ―――――――――― +
ようこそ。
さぁ、悲劇へのパーティーを楽しんで。
8人のお客様。
2006.7.12