ザザァーッ!!
「うっそー!雨だよ!!」
急に降り出した雨に部員達は慌てた様子で雨宿りを始めた。
「この程度ならすぐ止みそうだよ」
「本当?」
「あぁ。でも雨宿りはしていなよ?
も一応女の子なんだから」
「今なんで「一応」を激しく強調したの?」
Story27. 雨に濡れたハート
雨に打たれながら雨宿りをしようか、しまいか迷っていたとき・・・(だって雨宿りすると試合が見れないんだもん)
後ろからガッ!と腕をつかまれて思わずビクッ!?と体を震わせてしまった。
「
・・・。なにやってるの?」
「へっ?ふ、不二くんか・・・ビックリした」
バクバクと暴れる心臓を落ち着かせながら、手を掴んできた張本人の顔を見て安堵した。
「何ボーッとしてるの。雨宿りしなきゃ」
「えーっ?だってそうしたら試合が見れなくなっちゃう。いいよ、すぐ止むみたいだし」
「もう・・・」
不二くんは私の手を握ったまま背を向けズンズンと歩みを進めていく。
当然、私は抵抗むなしく引きずられる形となった。
「ちょちょちょ、不二くん!?」
スピードも引っ張る力も緩めない不二くんに違和感を感じて、私は首を傾げた。
とりあえず、休憩場所の屋根の下に入ると不二くんは着ていたジャージを脱いで私に羽織らせた。
「なっ、ダメだよ!不二くんが風邪ひいちゃう!!」
「いいから・・・。
に風邪をひかれると僕が困るんだ」
「どうして・・・?」
不二くんはただ、ニコッと笑うだけだった。
その笑顔が・・・なんだかとても悲しげで。
そうだ・・・あの時の笑顔と同じだ。
「じゃあ僕は応援席に戻るから。ちゃんと雨が止むまでここにいてね?」
少しだけ濡れた私の髪を撫でると、不二くんは応援席に戻るために再び雨の中を歩き出した。
「あっ・・・。待って不二くん!!」
バシャッ!!と水溜まりを気にせず飛び出すと、不二くんの腕をつかんで前に出た。
不二くんは少し驚いた表情を見せると足止めをするように立ちはだかる私を見て笑った。
「クスッ・・・。どうしたの慌てて?」
「不二くん・・・もしかしてタカさんの怪我気にしてるんじゃない?」
一瞬、目を見開いたのを見て私は確信した。
「それはそうだけど・・・。仲間の怪我を心配するのは当たり前のことじゃない?」
「そうじゃない。不二くん・・・タカさんの怪我を自分のせいだと思ってるでしょ?」
「えっ・・・?」
「自分をかばったせいでタカさんは怪我したんだって思ってるんでしょ?だから元気ないんでしょ!?」
「
・・・」
「確かにタカさんは不二くんをかばった。確かにタカさんは怪我をした。
でも不二くん・・・不二くんが今しなきゃいけないことは後悔なのかな?」
降り続ける雨が私達を容赦なく濡らしていく。
「不二くんがそんな不安そうな顔してたら・・・私まで不安になっちゃうよ」
不二くんは少し間をおいてからフッと柔らかく微笑んだ。
「ごめんね・・・
。もう大丈夫だから」
笑顔は・・・いつもの不二くんのものへ戻っていた。
「うん!!」
ワァアァァアァァァー!!!!!
遠くから青学の歓声が響いてきた。
「英二達の試合が終わったみたいだね」
「やった!勝ったんだね!!」
「それじゃあ、僕は2人にタオルを渡してくるよ。ビショビショだろうから」
「あっ、待って不二くん!!」
私は羽織っていたジャージを不二くんに突き返した。
「着てて!選手に体調崩されたんじゃマネやってられないから」
「でも・・・」
「私なら大丈夫。そんなに濡れてないし、不二くんの言う通り雨宿りしてるよ」
「クスッ・・・。わかった」
ジャージを返して屋根の下に戻ろうと背を向けた時、急に腕を引かれて後ろへ倒れた。
「わっ・・・!?」
腕を引いたのは不二くんで、私の体を受け止めるとスッポリと私を包み込むように抱き締めた。
「ありがとう・・・。
」
耳元で囁かれ・・・体が硬直しているうちに不二くんは私を離してコートへ戻っていった。
な、ななな、なんじゃ今のはぁー!!?
不二くんの・・・不二くんの吐息が耳にぃー!!!(興奮するとこ、そこぉ!!?)
はぁ・・・。まだ心臓バクバクしてるよ。
それにしても・・・あのジャージを返したのはやっぱり惜しかったなぁ。
不二くんの香りが・・・(台無しだよ)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
本当は不二くんのジャージを羽織らせたままでも
いいかなぁー。萌えるかなぁー。っと思ってたんですけど・・・
漫画見たら不二くんジャージ着てるんだもぉーん(泣)
泣く泣く返しました。(泣くなよ)
2008.8.13