「やっほー!元気ー?」


「・・・・・ヒマ」








図書室にいる








部活も始まっているこの時間。
めちゃくちゃ不機嫌そうな顔で私を睨みつけるのは
テニス部ルーキー越前リョーマ。


そしてこの私、 はそんなキャラが濃いテニス部のマネージャーやってたりします。






「なにしに来たわけ?」
「うっわ!何そのセリフ!?聞き捨てならん!!リョーマが心配で来てあげたんでしょー?」
「うそつき」


「まぁ嘘なんだけど・・・手塚に、越前の様子を見て来い!っと指令を受け」
「本当のこと言えば?」


「はい。本当のこと言うとサボりです。すんません」
「はい。よろしい・・・」






本当の理由。それは私達がいるこの場所にある。
リョーマは今日図書室当番で、本の貸し出しをしなければならない。
そして私は借りたい本があってここに来た。理由としてはおかしくないでしょ?

もちろん本なんていつでも借りられた。でもリョーマが当番なのはこの日。
だから本借りるのも今日まで先延ばしにしたのが本当の理由なんて・・・言えるわけがない。








「フッ・・・」
「はぅ?今リョーマ笑った?」
「別に?」




カウンターでテニスの本をめくるリョーマは不機嫌な顔から
コロッと変わって楽しそうな顔をしている。何コイツ?




「なにか楽しいことでもあったの?顔が笑ってますよリョーマくん?」
「そお?気のせいじゃない?」
「だって、私が来たときすっごい不機嫌そうだったじゃん!でも今はご機嫌そうだよ?」
「ちょっと暇が潰せそうなんだよね。誰かさんのおかげで」
「へっ?誰かって?」


「まだまだだね」

「はぁ!?意味わかんないから!!」






私が怒ってもクックックッと肩をゆらしながら笑うリョーマ。
なに!?なんなの!!?私もしかしてバカにされてる!!?
だいたい前から思ってたけどリョーマはなにかとつかめない!!
でもいつかその挑発的な顔を歪ませてやろうと私は密かに闘志を燃やしている。


もういいよ!リョーマなんか知らない。私は勝手に本でも探してますよー。


















「あ、あった!」



少しして、お目当ての本を見つけた私。
ただし・・・・・高いなぁ〜(汗)
一応手を伸ばしてみる・・・届かない。背伸びして頑張ってみる・・・届かない。


クソッ・・・チビだからってバカにしやがって!!







「どれ?」
「えっ?」
「どれって聞いてるの」
「えっ、あ・・・その青い表紙の・・・」










・・・・・ん?ちょっと待てぇえ!!?
へっ!?なに?私もしかして本棚とリョーマに挟まれてる!!?
背中を向けていてリョーマの顔は見えないけど近いことはすぐわかる。

だって・・・今すっごい心臓バクバクいってるもん。まじめにヤバイ・・・。






「あっ」
「えっ?」





リョーマの腕が伸びる上に顔を向けると、私が言った青い表紙の本と
隣同士にいた本が一緒に本棚から落ちてこようとしていた。
ギッシリ詰め込まれていたらしく、その本につられて他の本もどんどんバランスを崩していく。







「危ない!!」
「っ!!」







ドサドサドサッ!!!!












私が最後に見たのは上から降ってくる本の雪崩。
それから反射的に頭を抱えて座り込んだけど・・・・・
聞こえるのは本が落ちる音だけで痛みも襲ってこない。


固く閉じた目をそっと開けてみた・・・・・。








「リョーマ!!?」
「痛っ・・・」






顔を上げるとリョーマが私に覆いかぶさるように本棚に両手をついて
まるで私を守るかのように、あの大量の本をすべて自分の背中で受け止めていた。





「なにやってるの!?」
「なにやってるのって・・・助けてもらっといて言う言葉がそれ?」
「あ、そうじゃなくて・・・怪我しなかった!?」
「ダメ。痛い」





リョーマは頭を押さえながらその場に座り込んだ。




「ご、ごめんね!保健室行こう!!?」
「いい」
「ダメだよ!!ね?早く」




リョーマの制服を引っ張ると、逆に私の腕が引かれそのまま倒れ込んだ。
ついでに言うなら倒れ込んだのはリョーマの腕の中・・・。
それもしっかり抱き締められる形になっている。




「どぅわ!?リ、リョーマ!!?」
「ねぇ。俺 のせいで怪我したんだけど?」
「っ・・・ごめん・・・ごめんねリョーマ。だから早く保健室に」


















・・・・・えっ・・・・・?








「ごちそうさま」


「リ・・・リョ!?リョーマ!今・・・なっ!!?」



ゆっくりリョーマの顔が近付いてきたかと思えば
軽く触れるだけのキス。


リョーマは立ち上がるといつもと同じ笑みを浮かべた。








「これは慰謝料としてもらっておくよ」
「慰謝料って・・・!?」

「俺はもう部活行くけど・・・ はその真っ赤な顔が治ってから来なよ」






口元をニヤッと上げてリョーマは図書室を出て行った。


そして私は散乱した本の真ん中で顔が熱くなるのを必死に堪えた。






挑発するような・・・あの声が、あの言葉が浮かんでくる。






「まだまだだね」






くやしいけど・・・私はあいつに勝てそうもない・・・。












〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
白状します。これは私が実際に見た夢です。


別にリョーマの妄想しながら寝たわけじゃないのに・・・。
少しオリジ入れましたがあとは夢のまんまです。



リョーマがキスしてきたとこで「だぁあ!!?////」っと飛び起きました。






2006.4.30