あいつはまだ寝てんのか・・・!!








トロベリージャム








部屋中に焼きたてパンのいい香りが広がる。
私は慣れた手付きでチャッチャッとテーブルのセッティングを開始した。








バスケットに入った焼きたてパン。
シャキシャキのサラダ。
骨が命のあいつには牛乳は必要不可欠。








そして・・・。








「顔に似合わず甘党野郎め・・・」








ストロベリージャム。















今の時刻は日曜日の朝8時。
ここは私の幼馴染みが暮らす不二家。
なぜに私がこんな朝から不二家で朝食の準備をしているのかと言うと・・・。



あいつの両親は今2人で旅行中。
姉の由美子さんは友達とドライブ。
兄の周助くんはもう部活に出ていった・・・。








つまり、残る1人の世話を任されたのだった。










ガチャ!!










「ほらっ、裕太!!起きろぉー!!」








勝手にドアを開けてズカズカと部屋に踏み込む。
もう今更なんだから遠慮なんてない。








「裕太!今日は観月さん達と約束があるんでしょ?遅刻するぞぉ!!」








ユサユサと軽く肩を揺らしてみる。








「んー・・・。」








無駄だった・・・(泣)







裕太のベッドに腰かけて、そっと寝顔を盗み見てみる。

あ、こいつってよく見るとまつげ長いんだ・・・。










「可愛い・・・かも」










たぶん本人が聞いたら怒るであろう感想を呟くとベッドを離れてリビングに戻った。








「疲れてんのかな・・・昨日も遅かったみたいだし」








椅子をひいてセッティングした朝食を見つめる。
そういえばこのストロベリージャム・・・由美子さんの手作りだっけ?








「ちょっと味見・・・」








大丈夫。誰も見てないから。









ビンの蓋を開けると甘い香りに顔が緩む・・・。
指でちょこっとすくうと口に含んだ。
甘過ぎない上品な味・・・少し遅れてイチゴの甘酸っぱさが口いっぱいに広がった。








「おいしい・・・」








今度由美子さんにストロベリージャムの作り方を習おう。そうしよう。
ジャムを元に戻すと再び裕太の部屋に行ってみた。










ガチャ。










「まだ寝てるし・・・」








寝返りをうったのか、さっきと姿勢が変わっている裕太に近付いた。



まさか寝てるフリ・・・じゃ、ないよね?








ゆっくり寝顔を覗き込むとスッと、片目が開いて私を捕えた。











「寝込み襲う気かよ?」

「うわっ!?」








ビックリしたぁ!!予想はしていたものの、まさか本当に起きていたとは・・・。








「お、起きてるんだったら早くきなさいよ!!バカ裕太!!」

「お前さ、寝込み襲うんだったらもう少し静かに入れよな」

「なんの話だ!誰が襲うか!!」








ムカつく・・・!!
こうなったら苦いコーヒー入れてやる・・・熱くて苦いコーヒー入れてやる。








キッチンに戻ろうと私が背を向けると裕太もやっとベッドから起き上がった。









?」

「なに。早く朝ご飯食べ・・・っ」






















「あまっ」

「な・・・なぁあー!!?








振り返ったらまず目に入ったのは裕太の顔のドアップ。

次の瞬間には軽く触れたキス・・・って!!なんでキスされたん私!!?(汗)









「お前、姉さんのジャムつまみ食いしたろ」

「ふぇ!?な、なんで知って・・・!!」

「イチゴ味。」

「味って言うな!味って!!」

「別にいいじゃん。減るもんじゃないし」

「減るだ!!(怒)」









信じられない・・・いきなりキ、キスするか?普通。

最悪だ。心臓バクバクいってる・・・顔、かなり熱い・・・頭もクラクラする。








だって・・・私は。








。顔真っ赤だけど・・・大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょ・・・。好きな奴からキスされて誰が落ち着いてられるかぁ!!













・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。













あっ・・・。













「・・・怒鳴りながら告られたの初めてなんですけど」

「うっ・・・あ」








・・・バカだ私は・・・。

もう裕太の顔なんて見れない・・・。








なんてったって怒鳴りながら告白したわけだし、前代未聞だ。終わった。

グッバイ、私の青春。グッバイ、私の初恋。








あ・・・ヤバい。ちょっと泣けてきた・・・。










「なに、泣いてんだよ」

「泣いてないし・・・」

「嘘つけ。顔上げろよ」

「や、だ・・・」

「あっ、そう」








裕太の溜息が聞こえたかと思ったら、いきなりギュッと抱き締められた。
驚いて顔を上げると、そこには笑った裕太の顔があって大きな手でそっと涙を拭いてくれた。










「俺、こういうの苦手だから1回しか言わねぇけど・・・。よく聞いとけよ?」

「えっ?」













俺も好き・・・大好き。





















「ごちそーさま」

「はい。よく食べたねぇ・・・」








裕太のカラになった皿を片付けながら私は思いきって聞いてみた。








「ねぇ。裕太」

「ん?」

「なんでいきなり・・・あんな事したの?」








キスされてから告白なんて順番が・・・違う気がする。

もしかして裕太は私の気持ちに気付いてた?








返事が遅いから裕太の方を見てみると、あいつは手で口を押さえながら顔をそらしていた。








「なんでって・・・」

「うん?」

「朝起きて、いきなり好きな奴が目の前にいりゃ・・・我慢の限界ってのがあんだろ。お前鈍いし・・・」











最後の言葉はどういう意味だコラッ。
それに何でさっきから顔隠して・・・。










「あれっ?裕太なんか顔赤くない?」

「あっ!?」

「あ!ほら赤い!!なに?今更思い出して照れてんの!!?」

「バカ、違ぇよ!あーっ、たく!時間だから行ってくる!!」

「あっ!逃げんなぁー!!」










この2人の間が、イチゴジャムのようにもう少し甘くなるには・・・
そんなに時間はかからなそうだ・・・。











「ゆ、裕太可愛い・・・!!」

「かわっ!?お前それ褒めてねぇよ!!」















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

大塚愛さんの曲「ストロベリージャム」!!!

彼女視点の曲なんですよねコレ。

「顔に似合わず甘党なあなた・・・」

こいつしかいねぇ!!(゜∀゜)裕太カモン♪

裕太は彼女に対してだけ意地悪そう・・・。

いや、私の勝手な想像(妄想)だけどね。





2007.4.22