例えばの話だけど。
世の中には自分のことが嫌いな人間が何人いると思う?
コンプレックス
「クスッ。何のクイズかな?それは」
「いや、クイズとかじゃなくて純粋で素朴で個人的な質問」
世の中には自分のことが嫌いな人間が何人いると思う・・・?
「
は何人いると思うの?」
「私が先に周助に聞いてるんですけど・・・」
「
が答えたら答えてあげる」
「ずるいなぁ・・・」
私は読んでいた雑誌をパタンッと閉じて・・・。
いや、正確には適当なページを開いてただボーッと見つめていただけなのだが。
まぁとりあえず雑誌を閉じてベッドの上の・・・この部屋の主人、周助に目を向けた。
「とりあえず、今ここに1人」
「それって・・・僕のこと?」
「いや、私のこと」
「どうして
は自分のこと嫌いなの?」
「それは・・・」
視線をそらして再び雑誌に目を逃がす。
「まぁ・・・色々。コンプレックスとか」
嘘だ。
確かに人間誰にもコンプレックスはある。もちろん私にもある。
もっと足が長ければ・・・とか。もっとスラッと背が高ければ・・・とか。
もっと髪に艶があれば・・・とか。言っていても虚しくなるだけだから、この辺で止めておこう。
本当の理由は今日・・・学校が終わって帰ろうかと思った時に耳に入ってきた会話。
「ねぇ、不二くんと
ちゃんが付き合ってるの知ってる?」
「嘘!信じられなーい!ショック!!」
「でも何で
ちゃんかなー」
「ちょっと釣り合ってないよねー」
キャハハハ!という笑い声を聞きながら私は他人事のように思った。
「釣り合ってないよなぁ・・・」
「ん。何か言った?
」
「いやいや。何でもないっす・・・」
周助はかっこいい。っと言うか綺麗だ。
白いし髪はサラサラ。笑顔も似合うなら性格もいいときた。
腹立つなぁ・・・男子のくせに。並んだら彼女より彼氏の方が綺麗って・・・。
洒落にならん。
「あっ。じゃあ今度は僕からの質問」
「はっ?」
ベッドの上で本を読んでいた周助はニッコリ笑顔と共にとんでもない事を言い放った。
だいたいお前・・・私の質問にまともに答えてないじゃないか。
「
って子が1人。自分のことが嫌いらしい」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なぜ嫌いなのか・・・僕は知りたい」
こいつ・・・。
「ねぇ。何かあったの?」
「ないよ」
「あったんでしょ?」
「ないって」
「あったんだね」
「あったんだけどさ・・・」
バサッ!!読んでいた雑誌を奪い取られる。
やっぱり読んではいなかったものだが・・・心底ちょっとビックリして振り返った。
「ねぇ」
「うをっ!?」
振り返った瞬間、周助の顔が目の前にあってあまり可愛らしくない悲鳴をあげた。
ベッドの下に座っている私と、ベッドの上で寝そべった周助の視線はほぼ一緒でオマケに距離がかなり近かった。
「どうして嫌いなの?自分のことが」
「だから・・・」
視線を落として逃げるように顔を背ける。
「か、可愛くないし・・・綺麗じゃないし・・・素直になれないし。
なんか・・・周助の隣にいることが恥ずかしいって言うか・・・負けてるって言うか」
周助は私の持ってないもの全部持ってる。
ずっと羨ましかった。
ずっと憧れだった。
「周助と私は・・・釣り合わない気がする」
ちょっと泣きそうになった時。
周助の手が頬に伸びてきて優しく添えられると、グイッと無理やり顔を戻された。
相変わらず近すぎる周助の笑顔にゾクッとした。
「
が自分のことを嫌いでも、僕は
が好きだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「
は僕のこと好き?」
いきなり何を言い出すんだこの王子様は。
「ねぇ答えてよ。好き?嫌い?」
改めて言うとなるとかなり恥ずかしいものだ。
私は自分の顔がカァーッと熱くなっていくのを感じた。
「好き・・・かも」
「かも?」
「いや。好きです・・・」
「ん?聞こえないな」
絶対ワザとだ。聞こえてんだろ・・・!!
初めて本気で人を殴りたいと思った。
「だから!し、周助が好きだって!!」
もう半分ヤケだった。いや・・・3分の2ヤケだった。
「なら問題ないよ」
嬉しそうに笑うと周助はそのままチュッと軽く唇に触れた。
「
は僕が好き。僕も
が好き。それでいいんだよ」
まったく・・・敵わない・・・。
好きな人にそんなこと言われちゃ・・・少しは自分のことも好きになれるだろうか。
「
は可愛いよ」
「恥ずかしいから止め・・・」
「だって本当だもん」
最低でも・・・嫌いにはならなそうだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
好きな人に「好き」って言ってもらえると
嬉しいっていうか・・・どちらかと言ったら
恥ずかしくてムズムズするんですよね。
ヒロインにちゃぶ台返しくらいさせれば良かった。
(やらんでいい。やらんで)
2008.6.9