いつもの待ち合わせ場所は、学校の近くの公園。





「あ!柳生!!」

「お待たせしました」











ッス 〜帰り道のラブソング〜











「すみません。部活が長引いてしまって」

「ううん!いいよ。あまり待ってないから!!」










そういっている彼女の鼻は赤く・・・寒い中ずっと私を待っていてくれたことは一目瞭然だった。
それもそうだ、もうすっかり日も落ちている寒空の下で何もせずに座っていれば・・・誰だってそうなる。

それでも彼女・・・ さんは満面の笑みを浮かべるとポケットからある物を取り出した。










「コレッ!今日の調理実習で作ったの。あげる!!」

「クッキーですか」










小さくて、少しだけ欠けた3つのクッキー。リボンを解いて1つだけつまむと静かに口に運んだ。










「・・・どう?」

「甘さ控えめで、とても私好みです」

「やった!!」










可愛く笑うわけでもなく、魅惑の笑みを浮かべるわけでもなく。
イタズラに「ニカッ!」と笑う さんを見て「あー。好きだなぁ」と思う私は重症なのかもしれません。










「さぁ、風邪を引く前に早く帰りましょう?」

「うん!!」










私がスッと手を差し出せば、少し恥ずかしがりながら重なる細い指。

並べば私の肩に並ぶくらいの小さな背丈。

その全てが・・・愛しい。










さん」

「ん?」



「もしも・・・もしも明日世界が無くなってしまったら・・・どうします?」



「えっ・・・?」










特に意味はない質問だった。ただ何となく聞いてみた。それだけ。

ただ さんが質問にどう答えるのか興味があった。

それだけなんです。










それなのに さんは足を止めると、不安を顔いっぱいに表して俯いた。
かすかに・・・繋いでいた手にギュッと力がこもった。










「すみません。冗談です」

「柳生・・・」

「はい?」

「ちょっと、怖かった」










私を見上げる さんの目が、かすかに潤む。










「だって、もし本当に世界が無くなったら柳生に会えなくなっちゃう。それって・・・すごく怖い」

「えぇ・・・」










私も、同じですよ。










そっと さんの頬に空いている手を添えて、顔を近付けると さんは慌てた様子で私の胸に手を置いた。










「や、柳生!ちょっと待って!?」

「待てません。 さんがそういう顔するのがいけないんですよ?」

「いや!でも外だし!!」

「暗いから大丈夫です」

「ダメダメ!!」










首を振る さんに負け、肩を落とした。
すると今度は さんが私に質問を投げかけた。










「柳生」

「はい?」

「あの・・・いつかさ、私がお婆さんになってもキス・・・してくれる?」

「何の心配ですか」










目を合わせると さんは「別に・・・」と言いながら視線をそらす。
頭を撫でるとやっと顔を上げてくれた。










さんがお婆さんになるころには私も同じです。
  さんは・・・そんな私でもキスをさせてくれますか?」

「えっ・・・」










頭を撫でていた手を素早く後頭部に回し、唇を重ねた。
寒かった身体に熱が戻り、唇が離れた後に漏れる吐息もどこか色っぽかった。










「まぁ、ダメと言われてもしますが」










満足した私は顔を真っ赤にしながらパニックになりかけている
さんの手を引いて、残りの帰り道を楽しんだ。















(バカ!バカ!柳生のバカー!!)

(そんなに怒らなくてもいいでしょう?)

(もう!クッキー返して!!)

(それは嫌です)















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

テゴマスさんの「キッス〜帰り道のラブソング〜」でした。

しかし、このお2人の歌声は素敵ですね。

初めて聴いた瞬間から夢中になってしまいました。

さて、この曲で夢を書くと決めたとき

桃城か柳生と迷いました。

なんとなく柳生っぽいかな?っと思い書いたんですけど。

なんだか柳生がSっぽい・・・?

いや、気のせいだ。(逃げた)








2008.11.23