「・・・んー?」








は足を止めると首をかしげた。








「今、何か聞こえたような・・・」








見渡しても別に何もない。

はスッと目を閉じると全神経を集中させた・・・。
今の ならどんなに小さな音でも拾えてしまうだろう。








「いや!放してぇ!!」


















「・・・上、ね」








は左手にあった階段を見つけるとすぐさま駆け上がって行った。















場面は変わって、ここは最近また人が増え始めたストリートテニス場・・・
そこには数人のプレーヤー達と泉、布川・・・。そして桃城と不動峰の神尾アキラがいた。

2人の目線の先には・・・不動峰の橘杏と、嫌がる杏の肩を抱く男がいた。








「おい!杏ちゃんを放せ!!」
「あーん?こいつが言ったんだぜ?ここにいる全員に勝ったらデートしてくれるってな」
「杏ちゃん!何でそんなタンカきったの!?」
「だってこいつがストリートテニスを・・・」
「弱者のたまり場・・・ってか?」








キッ!と杏の眼が鋭くなる。
振り上げた腕は男に易々と止められてしまった。








「気が強ぇトコもカワイーじゃねぇの。嫌いじゃないぜ?」
「は、放してぇ!!」
「杏ちゃん!!」








スパァン!!








乾いた音がストリートテニス場に響いたかと思えば
次の瞬間には男の顔面にドコォ!!と黄色いテニスボールがめり込んだ。










「あ。」










ドサッ・・・!!










桃城が何か言いかけたと同時にそのまま倒れ込む男。
回りにいたプレーヤー達や杏、神尾はいきなりの出来事にかなり驚いている様子だった。
そんな中、桃城だけは「あーぁ・・・」と溜め息をついた。








「顔面いきましたよ? 先輩」
「当たり前じゃない。狙ったんだから」








バッ!っと全員が声の聞こえた方向へ顔を向けた。
そこにいたのは、ラケットを手に長い髪をサラッと靡く だった。








さん!?」
ちゃん!!」








杏が名前を叫ぶと はフワッと笑顔を向け「おいで」と言わんばかりに両手を伸ばした。
杏は に駆け寄るとガバッと抱き付き胸に顔をうめた。








さん!なんでここに!?」








神尾の問いに は笑顔のまま返した。








「ちょうど通り掛かってね。何事かと思えば可愛い杏が名も知らぬ自己中男にナンパされてるじゃない?
 思わず殺意が芽生えて、つい体が動いちゃったのよ(ニッコリ)」








笑顔と言葉が合ってない!!(恐っ)








「いってぇ・・・」








そこにムクッとサーブを顔面にくらった男が体を起こした。
咄嗟に はサッと杏を守るように後ろに隠す。








「テメェか・・・俺様の顔にボールぶつけたのは?傷がついたらどうすんだ」

「あら、大丈夫よ。顔にいくら傷が付いたって性格の悪さがカバーしてくれるわ








それはフォローになっていない!!








桃城と神尾は内心ツッコミたくて仕方なかった。








「お前・・・名前は?」
「人に名前を聞く時はまず自分から名乗りなさい。それに、お前呼ばわりさせる覚えはないわ」
「ククッ・・・言うじゃねぇの。気に入ったぜ?俺様は跡部だ。お前・・・俺の女になれ」

「断る。寝言は寝て言えナルシスト








思わぬ即答に跡部は固まり、杏は に尊敬のまなざしを向け・・・
ギャラリーは呆然とそのやり取りを見つめていた。










「そんなことより・・・桃!!」
「えぇ!?俺っスか!!?」
「あんた買い出しに行ったはずでしょ!こんなとこで何やってるの!!」
「あ・・・あぁあ!!








桃城は「しまったぁ!」っと言わんばかりに頭を抱えた。








「はぁ・・・ったく。私も買い出しだからとっとと買って帰るよ。アキラ、杏。一緒に帰ろ?」
「はい!」
「うん!」



「待ちやがれ!!(怒)」








来た道を戻ろうとしていた4人の背中に声が投げられた。

無論・・・跡部だ。








「まだテメェの名前を聞いてねぇ」








その言葉に はフッと不適な笑みを浮かべると跡部と向き合った。
そして人差し指を立てると真っ直ぐ跡部に向けた。













。覚えておきなさい。氷帝学園テニス部部長、跡部景吾・・・さん?」













目を見開く跡部・・・

は再び背を向けるとまるで3人を従えるように階段を降り、消えていった・・・。










・・・ね」










おもしれぇじゃねーの。





跡部は のあの不適な笑みに鳥肌を感じながら小さく笑みを浮かべた・・・。















2008.3.9