さて・・・あのバカはどこに行ったのかしら。
「まぁ・・・予想はつくけどね」
好きな歌をハミングしながら長い長い階段を上りきると
広いストリートコートが目に飛び込んできた。
「いつ来ても賑やかねぇ・・・ここは」
そこはテニスをしにきたプレーヤーでかなり賑わっていて
1歩中に入ると
の姿を見つけた男達が手を振りながら叫んだ。
「
じゃん!久しぶりだなぁ!」
その言葉にコートにいた大半が振り向いた。
「
!?」
「マジで!?久しぶりじゃん!!」
「
!試合しようぜ試合!!」
ここのストリートコートに通っていて
を知らない奴はいない。
は四方八方から飛び交う試合の申し込みをやんわり断ると
ここのリーダー格とも言える泉・布川ペアに歩み寄った。
「久しぶりー。泉!布川!」
「やっぱり
か!なんか騒がしいと思ったんだよ」
「珍しいじゃん?
がここに来るなんて」
「ちょっと探してる奴がいてね・・・っと、あの子も来てたのね?」
は遠くから駆け寄ってくる姿を見つけると両手を広げて構えた。
「
ちゃん!!」
「元気そうね。杏!」
ガバッ!っと胸に飛び込んできた杏を受け止めると、杏は
の腕の中で嬉しそうな顔を向けた。
「どうしたの?
ちゃんがここに来るなんて!」
「あら。迷惑だった?」
「全っ然!!」
ニッコリと笑みを浮かべ、杏の頭を撫でると再び泉・布川ペアに顔を向けた。
「ところで泉、布川・・・」
「あぁ、探してる奴がいるとか言ってたな」
「えぇ・・・ここに、ルール無視のシングルスで試合全部総嘗めにしてる部活サボりの馬鹿野郎がいない?」
「「「いるぜ(いるわ)」」」
は泉と布川、そして杏に案内されながら目的の人物を探した・・・。
ビシィッ!!
「勝負ありー♪」
「くそっ!こいつマジで強ぇ!」
「さー!次の相手は誰っスかぁ?」
お気に入りのTシャツを着た桃城は得意そうに笑うと次の対戦相手を待った。
「じゃあ私が挑戦するわ」
「えっ・・・女?」
ザッ!!
「私もシングルスだけどいい?青学の桃城くん」
「げっ!
先輩!?なんでここに!!?」
「試合中は集中しなさい!じゃないと・・・」
バシィ!!
「負けるわよ」
ストリートテニス場の空気はいっきに凍り付いた。
「ゲームセット!ウォンバイ
!!」
座り込む桃城・・・。
はゆっくり歩み寄るとネット越しに桃城を見下ろした。
「俺は・・・相手を甘く見てたから負けたんスよね・・・」
「さっきの桃、前に見た時よりダンクの威力が増してるしバランスもとれてる。あんたは強くなってる・・・でもね」
「・・・でも?」
「あんたを負かした乾は、強くなってもまだ上を目指してる」
「っ!!」
「レギュラーになるだけで満足したりしてない。それがあんたとの大きな違いね」
「・・・
先輩・・・俺!うわっ!?」
バサァ!!
顔に覆い被さった布を引き離すとそれは、胸に「桃城」と書かれた青学のレギュラージャージだった。
「俺のジャージ!?な、なんで!?」
「レギュラー落ちしてから部活サボってるんでしょ?みんなコートで桃の帰りを待ってる・・・行っておいで」
優しくほほ笑むと桃城はジャージを握り締めスクッ!っと立ち上がった。
「ありがとうございます!
先輩!!」
そう叫ぶと早々と支度をして走り去っていった。
「まったく世話の焼ける奴等ね」
溜息を1つ吐きながら携帯を取り出し、番号を呼び出した。
「あ、もしもし手塚?えぇ・・・桃を見つけたわ。今そっちに向かってるから。
大丈夫・・・桃だもん、今回のことをバネにして大きくなって帰ってくる・・・そう思うわ」
でも・・・っと
は電話越しに極上の笑顔を浮かべてみせた。
「桃の奴・・・私が練習試合をする日に無断で部活サボるなんて
いつの間にそんなに偉くなったのかしらねぇ?あいつが帰ってきたら走らせておいてくれる?100周くらい♪」
その後・・・部活に復帰した桃城は手塚からグラウンド100周が言い渡されたのだった。
2007.10.27