「んー!・・・にゃろう・・・」






放課後。
本当は部活でテニスしてるはずなのに・・・なんで図書当番なんてものがあるわけ?















「くっ・・・高い」






本を借りにくる人もいないのに、なんで本の整備なんか・・・恨むよ先生。
しかも棚高すぎ・・・これって俺への嫌がらせ?










スッ。










「あ、それ!」








横から伸びてきた手が俺の苦戦していた上の棚に余裕で届くと変わりに本を取ってみせた。








「はいよ。ルーキー」
先輩!!?」
「なによ。そんな驚かなくったっていいじゃない?」








先輩は俺の鼻をムニッとつまむと1冊の本を手にイスに座った。










その本に・・・






「呪いの呪文全集。あいつを呪うならこれに決まり☆」






・・・っと書いてあったのは、あえて無視しよう。










先輩・・・部活は?」
「んー?明日女子テニス部は試合があるのよ。だから体を休ませてもらうため今日はお休み」






その時越前は自分の部長に今の言葉を聞かせてやりたいと強く思った。



爪の垢を煎じて飲ませてやりたいとさえ思った。






「男子テニス部もそろそろだったねぇ。試合どこと?」
「山吹中っス」
「山吹?そこって確かリョーマやカチローくんに怪我させた男がいる学校よね?」
「あと荒井先輩」

荒井はどうでもいいわ。山吹って言えば・・・
 数日前、妙な男が女子テニス部覗いてたのよ。あれって山吹の制服だったような・・・」

「えっ? 先輩会ったの!?どんな奴?」

「部員からの苦情があったから、すぐにそいつをシメてどこかへ捨てたわ。
 私、消える存在の人間は覚えない主義なのよ








そういえば山吹の千石とか言う人・・・
男子部室の前で倒れてて乾先輩に助けられてたような・・・。








「でも派手な男だったわよ。髪なんか真っ赤に染めてて・・・」








オレンジだよオレンジ。

真っ赤にしたのは多分先輩だよ。(大正解)








越前はそう言いたくても言えない恐怖を覚えた。








先輩はあるページに目が留まり書いている内容をメモすると
パタンッと本と閉じて立ち上がった。








「さて!そろそろ行くか」
「どこ行くんスか? 先輩・・・ずっとここにいてよ」








ちょん。っと 先輩の制服を引っ張る・・・。
でも 先輩はニッコリ笑って俺の手を握った。








「ゴメンネ?これからちょっと約束があるのよ」
「約束って何?まさか男からの呼び出し!?」
「お。ピンポーン♪よくわかったわね?」
先輩!行っちゃダメ!!」
「はっ?なんで?」








なんでって・・・ 先輩鈍すぎ。
そんなの、呼び出した男が 先輩目当てだからに決まってるじゃん!








「大丈夫よ。私が負けると思う?」

「えっ・・・?喧嘩?」

「うん。実は昨日ケーキ買いに行ったら最後のモンブランを
 1人の男と奪い合いになっちゃってさ」

「・・・それで?」
「私がケーキを前にして負けると思う?力でねじ伏せた






「・・・誰? 先輩に喧嘩売るなんて命知らずな奴・・・」

「えっと。確か銀髪でタバコ吸ってて変なポーズでテニスする阿久津とか言う男」

「・・・・・・・・・・・。」
「じゃ、行ってくるわねリョーマ!」








満面の笑みで 先輩は図書室を出ていった。








たぶん・・・山吹中との試合が選手戦闘不能による不戦勝だと知らされる日は
そう遠くないだろう。越前は静かに合掌を送った。















2006.11.12