「どうして私があんた達の応援に来なきゃいけないのよ」









女子テニス部の部長である はジャージを着たまま
男子テニス部の試合会場で不機嫌オーラを漂わせていた。








「いいじゃない。 はシードなんだからしばらく試合ないでしょ?」
「だったら俺達の応援してよー♪」





溜息をついて青学のベンチに座るとフェンスに寄りかかっている乾に顔を向けた。







「で?相手はどこなの?」
「不動峰中だ。今のとこ2−1でうちが勝ってる」
「次の試合は?」
「越前が出る。向こうは2年の伊武とかいう奴だよ」
「あぁ。深司ね?」
「知ってるのか?」
「不動峰なら少し面識があるのよ。深司が相手かぁ・・・リョーマの奴少し苦労するかもね」









そして
審判のコールによって試合は開始した。













バシッ!!





「おっ♪」





リョーマのツイストサーブに会場の雰囲気は一気に青学のものになった。








「越前は始めから飛ばしてるな」
「そうだねぇ・・・ねぇ乾?私ちょっと不動峰の方に行ってくる」
「わかった。早く戻って来いよ」
「はーい」





席を立つと菊丸が「にゃー! ちゃーん!!」と叫んでいたが は軽く流して
不動峰の応援席へ向かった。












「やっほ!ご無沙汰♪」
「えっ! っ!?」
「「「 さん!!?」」」
「桔平、久しぶりね。杏は?」
「まだ来てないなぁ。それよりなんで がここに?」
「青学の奴等を応援しにちょっとね・・・相手が不動峰だって聞いて
 顔だけ見に来たのよ。強くなったじゃない?」
「あぁ。もう昔の不動峰じゃない」






橘の言葉に はフッと笑みを浮かべた。






「フフッ♪深司の相手はうちのリョーマね。なんか面白い試合になりそうだけど・・・
 私は杏が心配だから探してくるわ」
「頼む。あいつのことだからどこかで油でも売ってるんだろ」
「見つけたら戻ってくるわ。じゃあねアキラ!またあとで」
「は、はい!!」






不動峰の応援席に背を向けて、 は橘の妹である杏を探しに向かった。














そのころ・・・試合会場とは離れた場所に男1人と女2人がなにやら言い争いをしていた。

男はこの試合にも参加している選手、一方的に三つ編みの少女を怒鳴りつけている。
そんな男に向かって一生懸命頭を下げているのは青学1年、竜崎桜乃。
もう1人は橘の妹で が探している張本人、橘杏だった。





「人の新しいクツ踏んどいてごめんで済むかよ!!クリーニング代3万円よこせよな」
「ス、スミマセン」









何様だこの男は?テメェの顔も踏んでやろうかぁ!!!




おっとすみません。ペコペコと必死に謝る桜乃の前に杏が止めに入った。






「ちょっと、もういいじゃない。謝ってんだから!」
「うるせーな!テメェはひっこんでろ!!」






パァン!!






「あぁっ!!」






男は手を上げ、杏の左頬を殴った。桜乃も青い顔をして杏に駆け寄る。






「大丈夫ですかっ?」
「う、うん。ありがと・・・」








タタタタタタッ・・・・・。








「バーカ」
「もー怒った!あなたねぇ!!!・・・・・・・・あっ」
「なんだよ?」









タンッ・・・バキィ!!!





「ぐあっ!?」






後ろを振り返った男の顔面に飛び蹴りがめり込み・・・そのまま後ろへ倒れ込んだ。







ドサッ!!!











「さっきから聞いてれば・・・クツなんて帰って洗えばいい話でしょ?
 なにをギャーギャー言ってるの」








「部長!!」
ちゃん!!!」






「なんだテメェは!?」










「私?私は青学3年・・・ 。覚えときな!青学女子テニス部の部員と・・・
 この橘杏に手ぇ出したら私が許さない!!!」






腕を組み、膝をつく男を見下ろすと は小さく「消えな」と言い放った。
男の顔は一気に青ざめ悲鳴と共に姿を消していった・・・。












部長!!」
ちゃーん!!!」







桜乃と杏は満面の笑顔で の腰に抱き付いた。
は2人を受け止め、優しい笑顔で頭を撫でた。









「はいはい。桜乃も杏も・・・こんなとこにいないで試合を見に行こう。ね?」


「はい!」
「うん!」

 





こうして という人物の好感度は日に日に高まっていく・・・。
















「お、俺の出番がぁ・・・(涙)」




その様子を影で見つめる桃は静かに肩を落とした。















2006.6.23