「「「演劇祭!?」」」
「そう」
数枚の書類を手塚に手渡しながら
は軽く頷いた。
「うちの演劇部が書いた脚本が最優秀賞をとったらしいの。だからそれを実際に演じてみようってわけ」
「女子テニス部だって練習があるだろ・・・多忙だな
」
「仕方ないわ。行事会の仕事だし・・・多忙って言っても手塚ほどではないし」
手渡した書類に手塚が目を通していると
が思い出したように手を合わせた。
「そういえば私・・・この話のヒロインをやってくれ!って演劇部に頼まれたんだった!」
「「「えぇえ!!?」」」
レギュラーの反応に
は「なによぅ?」と唇を尖らせた。
「
先輩がヒロイン!?」
「そうよ?」
「ヒロインってことは主役!!?」
「いや、主役は男キャラで私はその相手役」
「「「恋愛もの!!?」」」
青学のみなさんは本当に仲がよろしい・・・息がピッタリだ。
その中、不二が手塚の書類を覗き見しながら口を開いた。
「クスッ・・・ちなみに主役の男キャラは誰がやるか決まってるの?」
「ううん。あ・・・でも演劇部の奴等がテニス部で誰かやってくれないかなーって言ってたよ」
「「「なにー!!?」」」
「あんた達さっきからカブり過ぎよ!!」
鋭いツッコミを入れると越前が下からツンツンと
のジャージを引っ張った。
「なに?越前」
「越前じゃなくて!」
「はいはい。なーにリョーマ?」
「先輩って年下彼氏に興味ある?」
「「「越前っ!!?」」」
「年下彼氏ねぇ・・・嫌いではないけど?」
「じゃあ主役は俺に決まっ・・・ぐえっ」
「なにが決まったの越前?君なんかが
と釣り合うわけないでしょ?」
不二はほほ笑みながら越前の襟首を引っ張る。
越前はキッと不二を下から睨み付けた。
「不二先輩には関係ないじゃないっスか」
「クスッ・・・いつからそんな口聞くようになったのかな?」
「さぁ?」
「フフッ・・・」
黒い・・・寒い・・・怖い!!
2人以外の全員があまりの寒さに凍り付いた。
よっぽど怖いのか菊丸が青い顔をしながら大石にしがみついている。
「ねぇ大石?あの2人はさっきから何の話をしてるの?」
「えっ!
ちゃんわかんないのー!?」
菊丸の質問に
は首をかしげながら頷いた。
「た、たぶん主役は誰がやるかってことだと思うよ・・・?」
「
先輩。先輩の相手役は俺だよね」
「
。気にしなくていいよ?相手役なら僕が・・・」
「何言ってるの?主役ならもっといい奴がいるじゃない」
「「「えっ!?」」」
は全員に背を向け手塚に駆け寄ると、さりげなく自分の腕と手塚の腕を組んだ。
「書類は読んでくれた?よければ手塚からの判子が欲しいんだけど・・・」
「あぁ、問題ない。じゃあ部室まで来てくれるか」
「えぇ」
2人はそう言うと腕を組んだまま部室へ消えていった・・・。
そんな様子を面白くないといった表情で見つめる2人。
「にゃろう・・・」
「手塚・・・次会ったときは覚えときなよ」
その2人の背後からは黒いオーラが見えたという・・・。
■
手塚は書類にもう1度目を通すと生徒会会長の欄に判子を押した。
「やらないんだろう?」
「なにがー?」
「演劇祭のヒロインの話だ・・・お前は誘われたがヒロインをやるとは一言も言っていない」
「あら、気付いてたの?さすがね手塚。今頃ほかのみんなは大騒ぎよきっと」
「それで・・・結局誰がやることになったんだ?」
「うちの副部長にお願いしたわ。張り切ってたし・・・主役の男キャラは本当に未定だけどね。
聞いてよ、演劇部の奴等・・・私がヒロインだったら主役は手塚だ!って言うのよ?」
は手塚から書類を受け取ると小さく頷いた。
「はい。どうもありがとう」
「
」
「ん?」
「俺はお前が相手役だったら主役をやっても構わなかったが?」
はドアノブに手をかけながらゆっくり振り向いた。
「そう・・・それは残念」
外に出ると
は早足でテニスコートを後にした。
「私が相手なら・・・ね。さて、生徒会室に行ってお茶でも入れて用意するか」
おそらく、ルーキーや魔王の襲来に遭って生徒会室に逃げ込んで来るだろう。
ただし、来たらすぐに私は逃げるわよ。
1番心配なのは私の身の安全。
人間は皆、自分に降りかかる危険は事前に回避するものだ。
2006.5.13