バシッ!!








・・・ヒュッ。         ビシィ!!














「・・・フゥ・・・」






私は流れ落ちる汗をタオルで押さえながら水飲み場へ向かった。













ジャー。





止めどなく流れる水を両手ですくい顔に押し当てた。
ほてった顔に冷たい水が気持ちいい・・・。












「・・・ん。あれ?」


「おはよーございます。 先輩」
「・・・越前・・・あんたねぇ」


「リョーマって呼んでって言ってるじゃん」








目の前に置いておいたはずの私のタオルを握りながら越前リョーマは拗ねたように唇を尖らせた。








「はいはい。越前でもリョーマでもいいからさ・・・タオル返してくれない?」
「俺と試合してくれるなら返す」






餓鬼かこいつ・・・。
どんな条件突き付けて私のタオル人質に取ってるんだよ。














「越前!いい加減にタオル返して!!」
「ヤダ!あとリョーマ!!」







力づくじゃ無理か・・・。
そう思った私は顔を伝う水をジャージで拭いリョーマにほほ笑みかけた。









「わかった。試合するから・・・タオル返して?リョーマ」






「・・・・・ん」







渋々といった様子でタオルを差し出すリョーマ・・・私はタオルを受け取ると顔についていた水滴を拭き取った。







「隙あり!」



ダッ!



「あ、ズルイ!!」







リョーマに背を向けて走り出す・・・もちろん追いつかれる程度の速さで。











ダダダダッ・・・ガシッ!!




先輩!約束!」
「あーあー。はいはい」







腰の辺りに抱き付いているリョーマを半分引きずりながら私は数歩移動した。
目的地にはすでに到着しているから、あとは目的の人物を探すだけ。















「手塚!」
・・・なんだその腰についているものは?」
「あんたんとこのルーキーよ。剥がしてもらえる?」






私がリョーマを指差すとコートから見ていた桃達が叫んで、こちらに駆け寄ってきた。





「あー!!越前!お前何 先輩に抱き付いてんだよ!?」
「おチビずるいにゃー!!」


「ほらー。桃と菊ちゃんもこう言ってることだし、いい加減離れて・・・」
「ヤダ。試合してくれるまで放さない」










「「はぁ・・・」」




手塚と私は同時に溜息をついた。








「ずりーぞ越前!俺だってまだ 先輩と試合してねぇのによ!!」
「早いもの勝ちっスよ!」
「ちょっと待て!私はタイムセールかなんかか!!」




















「大変そうだね。
「わかってるなら助けてくれない?いい加減疲れてきたわ」
「だって。なにかいい案はないかな乾?」
「そうだな・・・じゃあ今度の校内ランキング戦で全勝した奴が と試合するっていうのはどうだ?」






ピタッ・・・と全員の動きが一瞬で止まった。








「ランキング戦で全勝ねぇ・・・」
「いいっスね!!」
「そしたら ちゃんと試合できんの!?」







乾の提案で全員に気合が入る。
リョーマも納得したように を放した。













「全勝で と試合かぁ・・・今回は少し本気を出そうかな。手塚は?」
「どんな試合でも全力を出す・・・当然のことだ」



「クスッ・・・でもさっき乾が提案したとき顔つきが変わったよね?見てたよ」





不二はそう言うとニッコリほほ笑んだ。




















「ちょっと乾。全勝した奴が私と試合なんて・・・そんなこと勝手に決めないでくれる?」
「じゃあさっきの状況の方がよかったか?なんなら元に戻してもいいんだぞ」
「助かったわ。ありがとう」
「どういたしまして」










は乾が楽しそうな顔で紙コップに何かを注いでいるのに気がついた。
わかっていた事だがそれは怪しげな液体・・・ の顔が引きつる。








「新作・・・?」
「あぁ。飲んでみるか?乾スペシャルドリ「遠慮しときます」



「まぁいいよ。今回このランキング戦で全勝した奴にはもれなく・・・
  と試合をする権利プラスこの乾スペシャルドリンクを飲む義務が与えられることにしよう」












義務ですか・・・。












「それは試合前?試合後?」
「もちろん試合前」
「・・・そぅ・・・」











どうやら全勝しようが試合まで至らない予感。
は張り切っているレギュラーに向かって静かに合掌した・・・。











2006.4.20