生まれながらにして何か、輝くような得意分野を持った者は「天才」と呼ばれ、その力を「才能」と呼ぶ。


しかし、この「才能」が今の今まで誰にも気付かれず、自覚もない者は必ず誰かに「恐怖」を与える存在になる。










Act.16     × 兆候 ×










「今夜?」

「あぁ」

「神姫兄ぃ!おかわりー!!」

「只今お持ち致します」










時は夕刻。

カウンターに3人並んで食事をしていると拓がやってきて真剣な表情でこう言った。










「社長命令だ。今夜攻めるぞ」










最初は何のことだか分からなかったが、隣にいた麗さんがすかさず説明をしてくれた。










「「攻める」って言うのは「攻め込む」ことよ。こっちから敵の本拠地へ戦闘しに飛び込むの」

「敵の本拠地に・・・戦闘!?」

「ただし今回は偵察が目的だ」

「偵察って?」

「お待ちどう様でした。雪凪くんもいかがですか?自信作なんですけど」

「拓も一緒に食わんか?めっさうまいで!このジャンボ唐揚げ・・・「真面目に聞きやがれ」










拓の鋭い目がギンッ!と零時さんを睨むと、零時さんは食べようとしていた唐揚げを落とした。










「社長からの指令はこうだ。「宝石店『アリス』に潜入し、鍵の存在を確認せよ」
 この『アリス』って店に鍵がある可能性が出てきたらしい」

「アリスって言ったら有名なブランドよ?」

「確かに名高い宝石店となれば置いてある宝石の数は半端じゃなく多いでしょうね」

「木を隠すなら森の中。鍵を隠すなら宝石店っちゅーわけか」

「あの・・・すみません」










おずおずと手を上げると麗さんが笑顔で「なに?」と首を傾げた。










「鍵を探しているのに・・・何で宝石店なんですか?」










今度は私が首を傾げる番だった。
一瞬全員がポカンッとしたが、すぐに麗さんは手を叩いた。










「そうだった!ごめんなさい ちゃん。私の説明不足だったわ!」

「えっ?」

「あんな 。『時計の鍵』っちゅーのは『宝石』なんや」

「鍵が・・・宝石?」

「私も実物は見たことがないのですが・・・時計に宝石らしきものを嵌める箇所があるんだそうです」

「それにピッタリ合う宝石・・・つまり『鍵』だ」

「あっ・・・。だから鍵を隠すなら宝石店」










私は1人で納得し、うんうんと頷いた。










「今回の偵察にはSecondから俺と零時。Firstから聖と麗が行くことになった」

「珍しいですねぇ。FirstとSecondが一緒に任務だなんて。おまけに我々4人で・・・ですか」










聖さんがニコニコ笑いながら言うと、拓は眉を寄せてぶっきらぼうに「社長命令だ・・・」っと言った。










「First に Second?」

「この会社ではチームが存在するの。Firstは主に戦闘を得意とする集団・・・聖や私はFirstよ」

「Secondっちゅーんは戦闘組の中でも特殊な特技を持っとる奴らの集まりや!俺や拓はSecondやで!!」

「へぇ・・・」

「それから、今回のこの任務には も連れていく」

「うん。・・・へっ?」

「「はぁ!?」」










零時さんと麗さんは机を叩きながら同時に叫んだ。










ちゃんも!?何をふざけたこと言ってるのよ!!」

は喧嘩もしたことないんやで!?戦闘になったらどないするん!!」

「社長命令だ」

「しかし・・・一体なぜ さんを?」










聖さんの言葉に全員が拓に注目すると溜め息をつきながら私の腕を引いた。










「理由は後で話す。その前に・・・

「えっ。なに?」

「社長がお呼びだ」































再び・・・この部屋に入ることになるだなんて・・・。
私はアンティークな扉を目の前に後ろを振り返った。










「いてね?」

「あぁ。ずっと待っててやっから・・・行け」










コクンッと小さく頷くと、震える手で扉を2度ノックした。
間もなくして中から「どうぞ」という声が聞こえて来た。










ガチャ・・・。





「失礼します・・・」





「やぁ。いらっしゃい ちゃん」










部屋は薄暗く・・・ほのかにアロマの匂いが充満していた。










「あの・・・何か」

「君を呼んだのは他でもないよ」










社長は本棚の中から1冊の本を取り出すと、私に1歩ずつ近付いて来た。
社長の容姿はやっぱり綺麗で・・・油断するとその瞳に飲み込まれそうな気さえしてきた。










「これを、君に見てほしかったんだ」










受け取った本には題名も柄もなかった。ただの赤い布で出来た珍しい表紙・・・
それだけでも高級そうな雰囲気があった。










「開けてごらん?」










言われるがままに本を開くと、中から出てきたものに私は驚きを隠せなかった。










「時計・・・!?」










本は形だけだった。ページである紙の束は全てリアルな作り物であり・・・
真ん中にポッカリと空洞が空いていて、そこに時計は収められていた。

古い・・・アンティークなデザインの、壊れて動かなくなった懐中時計。

いや・・・鍵がないせいで止まったままの魔の時計。










「ここを見て」










社長が指差す先を見ると、本来なら12の数字がある文字盤に妙な形の穴が開いていた。
そして長針と短針は微妙な位置で止まっていた。










「ここに、鍵が入るんだ」










宝石・・・。この時計と対となる鍵である宝石。










ちゃんには、この鍵を見つけてもらいたい」










その言葉に私はゆっくり社長に顔を向けた。










「私・・・が?」

「そう。 ちゃんが」

「無理、です・・・」

「どうして?」

「どうしてって・・・」

「ねぇ。僕が ちゃんをスカウトした理由、聞きたい?」

「えっ・・・?」










社長はニッコリ笑うと、私の髪をそっと手に取り軽く口付けた。










「・・・知りたい?」















× ―――――――――― ×

社長がエロォーい(お前が書いたんだろ)

「時計」の「鍵」は「宝石」にしました。

本当は形の無いものがいいかなぁ・・・っと思ってたんです。

「心」とか「涙」とか・・・。

でも・・・俺の弱い脳みそじゃそんな深い話書けねぇ!!

っと思ったので断念しました。(意気地なし)








2008.12.14