絶望を知っている天使と幸せを想い願う悪魔・・・。
全ては時が進むままに・・・。
Act.14 × もう1人の(天使) ×
【
side】
気付いたから闇の中でうずくまっていた私。
上・下・左・右・・・どこを見ても暗闇ばかり。
背中がゾクッと嫌な汗をかいた。
・・・。
「えっ?」
・・・・・
・・・・・。
「お父さん・・・?」
・・・・・
・・・・・。
「お父さん!?」
私の名前を延々と呼び続けるのは確かに父の声。
しかし、その声もどんどん遠ざかり消えていくように小さくなっていった。
「やだっ!待って・・・待ってお父さん!!」
力いっぱい手を伸ばすと、必死にその手を握った。
「おいっ。
・・・」
「んっ・・・」
うっすら目を開ける。
夢・・・か。ここはどこだろう?真っ暗だ・・・。
しかし今の今まで眠っていた私にとって暗闇はそんな障害にはならなかった。
「拓・・・?」
暗闇に慣れた目には拓が覗き込むようにして私を見ているように思えた。
「気分は・・・どうだ?」
「あっ、うん。平気・・・」
ベッドに寝ていたらしい私は上半身を起こして、拓と向かい合うように座った。
そして思い出す・・・あの光景を・・・あの悲鳴を・・・。
「拓・・・」
「ん?」
「拓は・・・なぜ悪魔になったの?」
自然と口にしてしまった言葉。
その瞬間、拓の瞳が見開かれユラッと少しだけうるんだのが分かった。
「さぁな。覚えてねぇよ・・・気付いたらそう呼ばれてたからな」
「気付いたら?」
「物心ついたガキのころから・・・ずっと」
初めて・・・見た。こんなにも悲しげで・・・苦しそうな拓の表情は。
「違う・・・」
初めてじゃない。前にも1度見たことがある。
「違うよ」
「あ?」
「拓は・・・思い出せないんじゃない。思い出したくないんだよ」
私は拓の両肩辺りのシャツをギュッと力の限り握り締めた。
「なにを・・・」
「思い出したくない過去が拓にそんな顔させるんじゃないの?
何か辛くて苦しいことから逃げるために記憶から消しちゃったんじゃないの!?」
「な、なんで・・・なんでお前にそんなこと言われなくちゃいけねぇんだよ!!?」
拓は本気で怒鳴っているようだった。
だから・・・尚更シャツを強く握り締めた。
「似てるの!」
「はっ?」
「似てるの・・・。一緒なの。私と」
物心ついた子供のころから1人だった拓。
物心ついた頃に事故で両親を亡くした私。
幼いころから会社の中でポツンッと生きてきた拓。
幼いころから血の繋がっていない他人の中にポツンッと存在した私。
似てる。似てるの。
その拓の孤独な瞳も・・・
感情を丸呑みにしていた唇も・・・
氷に包まれて見えない心も・・・
すべてが、私と一致する・・・。
どこかで見たことがある拓の寂しく苦しげな顔・・・。
鏡に写った・・・私の顔。
「バカ言ってんじゃねぇよ。離せ」
冷たく言い放つと拓は私の手を乱暴に振りほどき、部屋から出ていこうと背を向けた。
「待っ・・・。拓!」
立ち上がって必死に手を伸ばす。
なぜだか、このまま拓を1人にしてはいけないような気がして・・・。
その瞬間グラッと視界が歪んで足の力が抜けた。
ガタンッ!!
「
・・・!?」
拓のシャツをつかんだまま倒れ込むと同時に私は確信した。
「いったぁ!!」
「何やってんだよ!?立てねぇくせに無茶すんなって!!」
「拓は、違うよ?」
「えっ?」
「悪魔じゃないよ。拓は」
確信した。
今私は、確かに確信を持てた。遅すぎたくらいだ。
「いきなり、何言ってんだよ。呪いは使える・・・
羽も黒いし、人間も消せる・・・これが悪魔じゃなくて何なんだよ」
「表があれば裏がある・・・」
「はっ?」
「周りが何と言おうと、私はそうは思わない。見えたの」
確かに見えたの。
悪魔化した拓の奥に、苦しむ・・・「もう1人の拓」
「拓は悪魔なんかじゃない。だって・・・」
倒れた瞬間、私の体を支えてくれた拓の手をギュッと握った。
「拓は・・・こんなに、温かい」
フワッ。と、柔らかい何かに包まれる。
拓は私の背中と頭に腕を回して肩の上に顔をおいた。
「た、く・・・?」
「悪ぃ・・・。もうちょっと、このまま」
耳元で呟かれた言葉。
私はただ・・・温かいその腕の中で安心感に満たされた。
「怖くないよ・・・」
それが自分自身に向けての言葉なのか、拓に向けての言葉なのかは分からない。
どちらにせよ、拓は拓であり拓以外の何にでもない。
私はそのまま・・・再び意識を手放した。
× ―――――――――― ×
なんかグダグダですみません(汗)
でも!でもでも、このシーンは・・・
このセリフはどうしても書きたかったんです!!
拓には必要なんです!!
なんでかって?
・・・・・・・・・・なんでだろう?(オイッ!!)
2008.8.13