そこには異様であり・・・

意外であり・・・

異常な光景が広がっていた・・・。










Act.13     × Side ×










「なっ、なんだよこれぇえ!!?」










黒い集団の持っていた銃やピストルからは、まるで銃自体が燃えているのかと思うくらい黒い煙が溢れ出ていた。










「なに・・・?」










その光景に思わず後退る。










「拓・・・?」










拓の目はさっきまでの目じゃない。










見開いていて・・・

瞳孔が開ききっていて・・・

光なんて感じられない・・・



人間の目じゃない・・・。










「おい!何だよこれぇ!?やめろよ!やめろ!!



「だからさ・・・」










ブジュアァァ・・・!!





「ギ、ギィヤァアァー!!」










鼓膜に響く生々しい悲鳴。

それだけでも身の毛がよ立つほどなのに。





私は・・・見てしまった。










「ヒィ・・・!!」










手が・・・溶けてる。

煙に包まれていた銃は跡形もなく水のようにビチャビチャと床に溜まり・・・

それを持っていた男の手はドロリッと手首から先が消えていた。










「俺は短気だって・・・言っただろ?」





「あぁ・・・あぁあぁぁー!!!










異常だ・・・異常すぎる。

何だこれは?

私は一体何を見てるんだ・・・?










「うぐっ・・・」










頭の中がクラクラして何も考えられない。

とにかく、胃の中から逆流してきたものを口を押さえて必死に我慢した。










「あーらら。派手にやってるねぇ・・・拓?」










後ろを振り返るとニッコリと笑みを浮かべた社長がゆっくりと拓に歩み寄った。










「しゃ、ちょう・・・?」

「何をそんなに怒ってるの?拓」










拓からは・・・何か「気」を感じた。

ゾクッ!とする・・・怖い、冷たい・・・。

これは・・・「殺気」










「あ・・・悪魔・・・お前が「悪魔」か!!」










悲鳴にも似た怒鳴り声で男は叫んだ。





悪魔・・・?










「人間じゃねぇ!悪魔ぁ!!地獄に帰れ・・・消えろ!悪魔ぁあぁぁ!!



「うるさいなぁ・・・」










ジュワァッ・・・!!





「えっ・・・!?」










社長は騒ぐ男に向かって手を伸ばすと、男はまるで水が蒸発するかのように消えてしまった。



なに1つ残さずに・・・。


















「うわぁあぁぁ!!?」








「き、消えた!!?」















消えた男の仲間が騒ぐ・・・。

社長はただニッコリ笑うと1番手前にいた仲間の首をガッ!とつかんだ。










「ぐぅ・・・!?」

「おとなしく帰って君達のボスに伝えてくれる?うちを潰したきゃ社員全員で来い・・・ってね










その時の社長の笑顔が・・・

怖くて・・・

恐くて・・・

コワクテ・・・。










真っ黒なその瞳に吸い込まれたら2度と抜け出せなくなるような・・・そんな恐怖に体が震えた。










「消えて。目障りだから」










パッ。とその手を離すと黒の集団は狂ったように悲鳴をあげながら全員で銃を構え、その銃口を拓と社長に向けた。















ブジュアァァ・・・!!





ジュワァッ・・・!!















しかし・・・次の瞬間にはもう、誰1人としてその姿を保っている者はいなかった。






残っているのはただの・・・赤い水溜り。














「あっ・・・あぁ・・・」





「あーぁ」










社長はまるで、縁日で貰った風船が割れてしまった。

そのくらいの様子で残念そうに溜め息をついた。













「 壊 れ ち ゃ っ た ・ ・ ・ ♪ 」


















狂ってる・・・!!















私はその場でガクッと膝をつくと目を閉じて耳を塞いだ。

まだ蘇るアノ光景。

まだなり響くアノ悲鳴。

グラッと頭の中が真っ白になり、私はその場に倒れこんだ。




















【 拓side 】










ちゃん!!」










麗が叫ぶから振り向くと、 が顔を真っ青にして倒れていた。










「チッ・・・」










まぁ・・・予想はしていた。

こいつの目の前で人間を消すこと・・・「人殺し」をすることがどんなことか。

もう俺達にはない感情・感覚・神経をこいつは持ってる。

だからこんな結果になるのを分かっていて俺は目の前で殺人を犯した。










「麗・・・どけ」

「拓。なにを!?」










麗の腕の中から を奪い抱き上げると、俺は奥まで続く廊下へ向かい・・・

止まることなく の部屋まで歩を進めた。










ガチャ。










以前、こいつが俺を進んで部屋に入れたおかげで迷うこともなく部屋を間違えることもなかった。

部屋の中はもう荷物の整理が終わっていて1番奥にあるベッドに の体を寝かせた。










真っ白な肌。そこには真っ赤な血が流れていることだろう・・・。



薄く開かれた唇。そこからは人を助け、慰める言葉が出てくることだろう・・・。



閉じられた瞳。それは光を集め、人を優しく見つめることだろう・・・。










「くそっ・・・」










こいつは俺とは違う。

こいつは悪魔じゃない。

こいつは闇じゃない。

こいつは・・・こいつは・・・





黒い血が流れていたり・・・

一言で人間を絶望へ追い込んだり・・・

突き刺すような視線で闇の中へ葬ることは・・・しない。










「 悪 魔 は 人 を 殺 す ・ ・ ・ 」










だけど悪魔は・・・絶対人には勝てない。















× ―――――――――― ×

俺・・は、一体・・・。

何が書きたかったのでしょうか・・・?(聞くな)

あっと・・・。

他のキャラ達の戦闘シーンはこれから書いていくので

ひとまず拓の悪魔の力だけ今回描きたかった・・・。

のでしょうか?俺は(だから聞くなって)







2008.8.4