表の顔は天使のようでも・・・
その裏側に待っているのは地獄絵図だね・・・?
クスクスッと笑いながら誰かがそう言ったんだ・・・。
Act.10 × 嘘か真か・・・ ×
きれいに空になった皿を聖さんが片付けている間に、麗さんが私にこの裏社会のくわしい話をしてくれた。
「うちの会社の名前は「Angel」けど他社からはこう呼ばれているの」
「HellAngel・・・」
聞こえてきた声に振り返ると、拓を部屋まで連れていっていた零時さんが私の隣に腰かけた。
「皮肉なもんやなー。「天使」なんつー可愛い名前やのに陰で「地獄天使」なんて呼ばれてるんやで?この会社は」
「零時!拓はもう大丈夫なの?」
「部屋でグッスリ寝とるわ。社長室で精神力使い果たしたんやろなー」
そう言いながら零時さんは奥の部屋にいる聖さんに食事を注文した。
「願いが叶う幻の時計と鍵。その時計を持っとるんやから他の会社がここを敵視するのは当たり前やな」
「じゃあ・・・鍵は?」
「鍵はまだ見つかっていないの。うちの会社が持っているのは鍵がないと動かない壊れた時計だけ」
「ですから我が社は血眼になって鍵を探しているというわけです」
奥から聖さんが大盛りのスパゲッティを持って帰ってきた。
「はい。どうぞ零時くん」
「うっまそー!!いただきまーす!!」
スパゲッティにがっつく零時さんを見ながら聖さんは話し続けた。
「この裏社会で生きる者達は皆、世間から捨てられた人間です。社長が無限の力を手に入れた時・・・
もしくは自分が手に入れた時、理想とする世界を造り上げようとしているのが我々なんですよ」
「深い事情がある者もいれば、ただ単純にスリルを求めてこの世界にいる者もいる・・・。
でも、そんな理由なんて一切関係なく時計と鍵の奪い合いは起こる」
「戦争ですよ・・・。殺し合い、奪い合い、裏切り合い・・・
たった1つの力を手に入れるために自分を変える。それが裏社会の現実です」
思わず息を飲んだ。麗さんも、聖さんも、さっきまで美味しそうに食事を頬張っていた零時さんも・・・
全員の瞳が冷たく伏せられた。
「殺し合い・・・なんて、ドラマや映画の中だけの話しだと・・・」
「思いたいですよね。しかし残念ながら・・・」
「現実よ」
「
はパニックになるかもしれへんけど・・・。わかって?これが俺達の仕事やねん」
体が震えているのを隠すように両手をギュッと握り締めると顔をあげた。
「大丈夫です!まだ、話の内容はつかめないけど・・・私も会社に入ったからには、この世界で生きます」
「
ちゃん・・・」
「今日はちょっと疲れたので・・・先に休みます。おやすみなさい」
頭を下げて自分の部屋に戻ろうとしたら、後ろから聖さんに呼び止められた。
「あぁ、それなら待ってください。
さん」
「はい?」
聖さんはカウンターの棚から淡いピンク色の布に包まれた箱を私に手渡した。
「夜食にどうぞ。まだ部屋の片付けが残っているのでしょう?」
「えっ、あ・・・ありがとうございます!!」
夜食を受け取ると3人にもう1度「おやすみなさい」と言って私は足早に自分の部屋に戻ったのだった。
「強い子ね・・・あの子」
「しかし分かりません。社長はなぜ、
さんをスカウトしてこの会社に・・・」
「やっぱりあの噂はホンマなんちゃう?」
「噂?」
「
が時計の鍵に関する情報を握っとるっちゅー噂や・・・」
■
聖さんに夜食もらっちゃった。
麗さんも優しいし。
零時さんと一緒にいるとなんだか楽しい・・・。
こんな気持ち、本当に久しぶり。
は聖から受け取った夜食を強く抱き締めながら考えた。
本当にあんな優しい人達が殺し合いを・・・?
叶えたい夢のために人を殺すの・・・?
立ち止まっていた私の後ろから、誰かがいきなり肩をつかんだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なんか「説明する」とか言って
全然詳しい話をしてない気が・・・。
いや、気が・・・じゃなくて、してないのか(汗)
と、とりあえず会社の仕事は「手段を選ばないハンター」
みたいなもんだと思っていてください!!(どんなだ)
2008.6.9