定められた運命か・・・
それともただの偶然か・・・
どちらにせよ、私はこの大きな手をとってしまった・・・。
Act.8 × 動き出した歯車 ×
またここへ戻ってきた。
レンガ造りの入口に、ロウソクの灯りしかない頼りない階段。
そこに踏み込む1歩手前で
は小さく息を飲んだ。
「やっぱ怖くなったか?」
後ろから聞こえてきた声に振り返ると、拓の背中から漆黒の翼が消える瞬間だった。
その美しさに、
は思わず見とれてしまった。
「おーい」
「はっ、はい!?」
「・・・ガチガチじゃん」
拓の手には行きにはなかった大きめの鞄が担がれていた。
それは・・・
があの家を離れたという決心の証。
「だ、大丈夫!」
「本当かよ?」
「大丈夫!大丈夫!」
自分に言い聞かせるように言葉を繰り返す。
拓は溜め息混じりの笑顔を向けると、
の頭にポンッと手を置いた。
「まぁ、すぐに慣れんだろ。もし何かあったら俺に言え」
「う、うん・・・」
鞄を担ぎ直すと拓は薄暗い階段をスタスタと軽快に降りていき、私はその後を追った・・・。
「
やー!!」
パァーン!!
酒場に入ってすぐ、飛びついて来ようとした零時さんの顔面を拓が足で蹴り返した。
「いったぁー!!何すんねん拓ぅ!!(泣)」
「あ、悪ぃ。ウザイ犬が飛び付いてきたのかと思った」
「噛みついたる!!」
ギャーギャーと喧嘩を始める2人。
しかし、後ろからやってきた人物に思いっ切り頭を殴られると拓と零時さんは、頭を抱えながらその場に倒れ込んだ。
「うるさいわね!あんた達は!!」
「麗さん・・・(汗)」
麗さんは私を見ると少し悲しげな笑顔を向けた。
「
ちゃん・・・戻ってきてしまったのね。ここに」
「す、すみません・・・あの」
麗さんに手を握られながら視線を足元にチラッと移した。
「どうしたの?
ちゃん」
「あの・・・拓と零時さんが動かないんですけど・・・」
2人はまるで屍のように横たわったままだった・・・。
ガチャッ!!
「今日からこの部屋を使っていいからね!!」
麗さんに案内された部屋はそんなに広いというわけではないが
ベッドと机があって1人部屋には十分なスペースだった。
「じゃあ鞄を置いたら色々と案内するわね」
「お願いします」
「それから・・・拓」
「あ?」
「社長がお呼びよ・・・」
その言葉に空気が氷ついたのを感じた。
「わかった・・・」
拓が部屋を出て行くと残った私達の間に苦しい空気が流れた。
「ほな!
ちゃんに中、案内したろか!」
「そうね!
ちゃん、行こう?」
零時さんの明るい声のおかげで麗さんにも笑顔が戻り、2人に手を引かれながら私は会社・・・
『HellAngel』の中に足を踏み込んでいった。
■
「雪凪。約束通りちゃんと僕の人形を連れて来てくれたんだね」
「・・・はい」
「嬉しいなー。しかも雪凪達と一緒にここで暮らすんでしょ?」
「えぇ・・・」
「1度は逃がしておいて、辛い現実と向き合ったところで雪凪が優しく手を指しのべる。
弱った仔猫ちゃんはその手をとる。そしてスッカリ騙されちゃってる仔猫ちゃんは檻の中。さすが雪凪!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「オマケに優しくしておけば逃げ出すこともない・・・か。
まぁどーせ帰る場所なんてないんだから連れて来ちゃえばこっちのモノだしね。
あとは雪凪が仔猫ちゃんのお世話をしてあげればいいだけ」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「クックックッ・・・。騙されているのに気付いてないもんね。彼女はさ。
今のうちに首輪を付けて鎖に繋げておかなくちゃ。逃げ出さないように・・・」
「ッ・・・」
拓は口を押さえて座り込んだ。
「どうしたの?雪凪」
「ちょっと・・・気分が。もう行ってもいいですか?」
「うん、いいよ。じゃあ雪凪?くれぐれも・・・僕の人形から目を離さないでよ?大事な駒なんだから」
クスッと妖しげに笑う社長に背を向けて、拓はなるべく冷静を装って社長室から出た・・・。
その後・・・社長室の机の上にはチェスの駒がバラまかれ、社長の長い指がポーンの駒を拾いあげた。
「可愛い可愛い僕の駒・・・」
うっとりとそれを見つめると、ポーンの駒はサラサラと砂に変わっていき・・・
最後には跡形となく消え去ってしまった。
「僕のために・・・動いてもらうよ」
止まっていた各々の歯車がカチリッという音と共に動き出した・・・。
× ―――――――――― ×
社長怖ぁーい!!(泣)
自分で書いといてなんですが・・・
キャラ変んんんー!!(涙)
あ、はい。俺が書いたんですね。
でも社長はこのキャラでなければなりません!!
2008.3.6