なんて言った・・・?


今この人なんて言ったの?


人形・・・?










Act.4     × 人形 ×










「に・・んぎょう・・・?」
「そう。人形」






社長の腕は肩から腰に回り、 は体を震わせた。






「君には願いがある?」
「はっ?」
「願いだよ。叶えたい夢、願望。あるでしょ?」
「願い・・・」






叶えたい夢、願望。

ネガイ・・・?








「例えば、死んだ家族を蘇らせたい・・・とか」






社長の言葉に は呼吸を忘れた。








「な・・・にを言って・・・」
「叶えてあげるよ?その夢を」






拓は何か言おうと1歩踏み出したが、社長のオーラに思わず足を止めた。






「10年前に死んだ両親に会いたくない?」
「待って・・・なんで両親のことを知ってるの!!?」
「なんでって?」

「だって、おかしいじゃない!!名前も歳も・・・
 家族のことも何で見ず知らずのあなたが知ってるのよ!!?」

「フフッ。なんでも知ってるよ?君のことなら何でも・・・」






腕を腰に回したまま、もう一方の手を の頬に移した。

その手は・・・信じられないほど冷たいものだった・・・。








「い、や・・・」


「君は1人なんだよ?」








「触らないでっ!!!」



「社長!!!」








拓の言葉に の髪に触れようとした社長の手が止まった。






「なんだい?雪凪」
「そいつを、放してくれませんか?」
「なぜ?」






ほほ笑む社長に近付くと、そこにある手から を引き離して自分の腕に収めた。








「震えてるじゃないですか」








ガクガクと震える を支えるように拓はギュッと抱き締めた。






「返してくれない?まだ話は終わってないんだ」
「嫌です。今まで表の世界にいた女ですよ?」
「・・・だから?」
「いきなり会社に入れとか、願いを叶えるとか言ってもパニックになるだけじゃないですか」
「だったら?君はどうしたいのかな、雪凪」
「俺に・・・任せてくれませんか?」






君に?

社長は小さく笑った。






「しょうがないね。雪凪・・・やってみなよ」
「・・・ありがとうございます・・・」



「あ、雪凪!」






を抱き上げ、部屋を出て行こうとする拓を呼び止めると社長はスゥッと音もなく歩み寄った。

そして拓の腕の中で気絶している の前髪をそっと除けると額に軽くキスをした。










「なくさないでよ?僕の大事な人形なんだから・・・」






「はい。わかりました・・・」








再び背を向けると拓は社長室を出た。



そこには1人、長い指で口元を押さえながらクスクスッと笑う社長が残っていた。































ガチャ・・・。








「・・・つかれた・・・」

「拓!どないしたん!!?」






扉を背にズズズッ・・・っと座り込む拓に零時が駆け寄った。








「俺やっぱ社長、苦手だ・・・」
「はっ?」
「あの眼・・・」










人間じゃねぇよ・・・。



冷たい・・・あの眼。










「拓ぅ!!」
「うるせぇな!なんだよ!?」
めっさ熱いねん!!」






零時の腕の中で眠る は体中が熱く、息がかなり荒くなっていた。






「あんの社長・・・何しやがった!」
「どないする?」
「はぁ・・・。しょうがねぇな」










俺に・・・任せてくれませんか?










「何であんなこと言ったんだろ・・・」
「なんやて?」
「いや、なんでもねぇよ。とりあえず俺の部屋に移動させろ」
「そんで?」
「麗の奴を呼んでくるから俺のベッドに寝かせとけ」



「なんやて!!?」






零時が急に大声を出したので拓は一瞬ビクッ!っと体を震わせた。










「な、なんだよ?」


「俺かてまだ拓のベッドで一緒に寝たことないんやで!?」


「テメェは1回死ね」






後ろで何か言っている零時は無視して拓はスタスタと酒場の方へ足を進めた。










「俺、なんで・・・」








小さく呟いてすぐに首を振った。








「いや、気のせいだ・・・」















× ―――――――――― ×

社長は若いです。

そして黒いです。

いつでも黒スーツで手には白い手袋。

なんか執事っぽい人だと思っていて下さい。



あと社長のアレはセクハラだと思っ・・・(待てそこ!!)





2007.9.16