「よぅ。あんたが ?」



「・・・・・・えっ」










Act.2     × スカウト ×










天井を仰ぎ見ると、見知らぬ男の顔がそこにあった。










ガタンッ!!!










「なっ!?だっ・・・誰っ!!?」
「そんなに驚くことねぇだろ」










ソファから勢いよく立ち上がると はパニック状態になりながらも、今の状況を理解しようと必死だった。



さっき帰った親戚は、自分が家に戻ったすぐ後に来たのだから、このリビング以外の窓は開けていない・・・
その他の戸締りは完璧・・・そして、玄関だってしっかり鍵は閉めたはずだ。















見ず知らずの男が入ってこれるはずがない!!















しかし現に男はそこにいる・・・目が覚めるような黒髪を波打たせ、
長い前髪から覗く黒い瞳をした男は よりも背が高く・・・年上のようだった。










「もう1回聞くけど・・・あんたが ?」
「あ、あなた誰?それに・・・なんで・・・私の名前」
「それはこっちで調べ済みだから。ターゲットの情報を事前に得るのなんて当たり前だろ?」
「はぁ?言ってる意味がわからない・・・それに、どうやってこの家に」










ゆっくり1歩ずつ後ずさりをしながら玄関に向かう を見て、男は溜息をつきながら
人差し指で「一」を描くように横に振った。















バンバンバンッ!!!















「なっ?!」










次の瞬間、 と男がいるリビングすべてのドアと窓が勝手に閉まり、鍵がかかり、
カーテンまでもが外の風景を遮った。



廊下へ続く扉は、鍵がないにも関わらず がいくらドアノブを回しても押しても堅く閉じたままだった。
は体中の血の気が引いていくのを感じた。










「な、なにをしたの!?」
「・・・うるせぇな。もうちょっと静かにできねぇの?」










男が1歩近付くたびに は1歩後ろに下がった・・・しばらくして の背中は壁にぶつかり
男は を挟み込むように片手を壁につけると、顔を覗き込むように視線を合わせた。










「俺は雪凪 拓(ゆきなぎ たく)。勝手に家に入ったのは謝っからさぁ・・・。そう怖がんなよ」










もう一方の手で拓が顔に触れようとすると、 はその手をはらいのけた。










「可愛くねぇの・・・」



「私が聞いてるのはそんなことじゃない!!・・・何者なの?あなたは・・・」










下からあくまで強気姿勢で睨みつける に苦笑いすると拓は体を離し、
清潔そうな白いシャツの懐から1枚の名刺を取り出した。












「裏職『Angerl』から・・・社長の令により、 をスカウトしに来た。
 なんか知んねぇけど社長があんたのこと気に入ったらしいんだよ」












はわけがわからず、ただ固まっているといつの間にか拓の腕が
自分の腰に回っていることに気付いた。










「ちょっ!な、何すんの!?」
「嫌がっても連れて来いっていうのが社長の命令なんだよね」
「ふざけないでよ!放して・・・!!」










拓は人差し指を口の前に持っていき「しーっ」と言葉を遮ると不敵な笑みを浮かべ
の耳元に自分の口を近づけた。










「・・・言い忘れてたけどさ、俺って短気なんだよね。だから」




















「・・・あんまりうるせぇとお前のこと無理やり黙らすかもしれねぇよ?」




















―――――  ゾクッ!!












信じられないほど低く・・・殺気に満ちた声、 の額には汗が滲み出た・・・。










「んじゃあ、とりあえず俺達の会社に来てもらうから」
「えっ!?」
「大ー丈夫!会社に行ったとして入社するかしないか決めるのはお前だから」










有無を言わさずにヒョイと を抱き上げると拓は家を出た。










「ま、待って!私まだ行くなんて・・・」
「まぁまぁ。おしゃべりするなら飛びながらしてやっから」
「飛び・・・?」












次の瞬間拓を見るとバサァ!!という音と共に拓の背中から、
黒い・・・大きな翼が広がった。



天使の翼がそのまま漆黒の色に染まったかのような美しさ・・・
は思わず言葉を失った。












「動くなよ?」












悪戯っぽく笑うと拓の足は地面を離れ、2人は空を飛んだ・・・。
それと同時に は言葉を失う。無理もない。



自分は今、見知らぬ男に抱き上げられながら空を散歩しているのだから。

















自分の腕の中でなにも言わない を見て、拓は首をかしげた。










「なに驚いた顔してんだよ?」

「お、驚くに決まってるでしょ!?人間の背中には翼はないし空は飛べない!!
 あなた本当に人間!!?」

「あー。うるせぇ女だな本当に・・・じゃあ俺が普通の人間じゃなかったら納得するわけ?」
「えっ・・・?」

「まぁ・・・何も知らないまま行ってもしゃーねぇしな。じゃあ、まずは
 俺達が生きてる闇の世界と、今向かってる会社「Angel」について・・・」










風が、くせのある拓の髪を優しく揺らした。










「この世には2つの世界が存在するのは知ってるか?表と裏・・・言い方を変えれば光と闇。
 表っていうのはお前達が生きてる光がある世界・・・裏っていうのはその逆だな。
 俺達が生きてる真っ暗闇の世界」










「暗闇・・・・・」










「そして裏の世界には、表の世界に捨てられた者・・・自分の居場所がなくなった者・・・
 理由はさまざまでも、光を浴びることを許されない奴等が集まってる」



「・・・会社っていうのは・・・?」










「ある目的のために働く裏組織・・・まぁ会社だな。そんな会社が、こっちの世界じゃ
 いくつもあるんだ・・・同じ目的を持って。その中の1つがこれからいく店「Angel」」



「どうしてそんな所に私が呼ばれるわけ?スカウト・・・・って言ったっけ?」
「理由は俺にもわからねぇ。俺はただ連れて来いって言われただけだからなぁ」










背中の翼を閉じると2人はゆっくり地面に降りた。
翼はそのまま散るように消えていき、服には破れた跡もなかった。










「なら・・・何を目的に、どんな仕事をしてる会社なの?」










の質問に拓は「そうだなぁ・・・」っと呟くと、急に声を低くして の目を見つめた。

















「お前みたいな表の世界に住む人間が想像もできないような仕事・・・・・かな?」

















そのとき拓は・・・あの時と同じ、不敵な笑みを浮かべていた・・・。















× ―――――――――― ×
まず登場してきたオリキャラは

雪凪 拓(ゆきなぎ たく)です!!

皆さん覚えてくださいね。

この子は私の好みって言うか・・・好きキャラ傾向で

書いていきたいと思ってます!!!







2006.10.24