過ぎ去りしの血を持つ者は・・・

りに落とされ、に身を置く・・・

月日が過ぎ、が弱り始めたことを知る。

残された生気を振り絞り・・・

形を変えた魔力・・・それが時計

と1つのなったとき・・・

この世のすべてを支配する・・・・・・・










Act.1     × 始まりの日 ×










ここは見た目にも無駄に大きく、飾りを施した家々が立ち並ぶ高級住宅街。



その中にある、一見落ち着いた印象を受けるこの家にたった1人で暮らしているのは
現在高校に通う16歳の だ。








なぜ1人なのか、答えは簡単。
彼女の両親はすでに亡くなってしまったから・・・そして兄弟もいない。










10年前、まだ が6歳のとき・・・家族で買い物に出かけようとしたのが悪かった。
運転席に父親、助手席に母親が座り は後部座席に座っていた。





突然・・・対向車線を走っていた車が大きく道を外れて 達の車と正面衝突したのだ。
相手は酒を飲みながらの運転だった。










目の前から衝突された父親と母親は即死・・・ は後部座席に座っていたことから
軽い怪我だけで済んだ。










いや・・・軽くなんかない。
彼女の心には・・・もう埋まることのない穴が空いてしまった・・・・・。





自分ではどうしようもない、大きな穴が・・・・・・。















初夏、トントンと階段を下りてくる音だけが聞こえてくる朝・・・音の主である
は鞄を片手に、机の上に置いてある家の鍵に手を伸ばした。






「あとは・・・っと。そうだ」






鍵を制服のポケットにしまい込むと棚の上に並ぶ写真の前に立ち、手を合わせた。
その写真はどれもこれも、幸せそうに笑う家族の写真だった。








「行ってきます」








写真に向かって微笑みかけると家中の戸締りを確認して は家を出た。
ある封筒を手に持って・・・。















「学校をやめる!?」
「はい!」






が通う高校の職員室で、担任の教師が声を上げた。
手にはさっきの封筒が握られていて、そこには綺麗な字で「退学届け」っと書かれていた。






「やめるってお前!そんな」
「もう、決めたことですから。お世話になりました!」










頭を下げると早々と学校を出て行き、青い空を見上げ はフゥ・・・と溜息をついた。





「お母さんが聞いたら怒ったかな?」





なんて・・・ありもしない想像に、
また地面を見つめるのだった。










は中学のころからうすうす・・・高校になってハッキリと
自分の立場がどんなものかを理解し始めていた。
そして、近所の大人達、親戚・・・それらの目が自分を見ていることにも。
最初は気にしていなかった、無視していればそんなこと軽く流せるものだと知っていた。


しかし現実は残酷なまでに厳しい。










!聞いてるのか!!?」
「・・・聞いてますって。そんな大声出さないで下さいよ」








机をバンッ!と叩いて怒鳴りつけているのは、 の遠い親戚。
彼は10年前からずっと、この家を売り一緒に暮らそうと言い続けている。


しかし・・・ の答えは10年間、変わったことがなかった。










「家を売る気はありません。ここは私達3人の家です」

「あのな !何回も言うようだが、なぜお前はこの家にこだわる!?
 両親もいない!兄弟もいない!!だったらこの家を売って俺達と暮らしたほうが・・・」

「お気遣いありがとうございます。でも、この家を離れる気はありません」










両親がいなかろうが関係ない。
自分1人になっても3人で暮らしてきたこの家がある限り。
これからもここで暮らしていくと・・・生きていくと決めたのだ。
昔の も今の も答えは一緒・・・なにも変わっていないのだ。


と向かい合うように座っていた親戚はギリッと歯軋りをする。


わかってる。どうせこの親戚の目的は『金』。父親が残したこの家と財産が狙いなのだ。
の断固たる態度を見て、さらに苛立ちが増しているようだった。










「とにかく!来月までには準備をしておけ!この家を売る準備をだ!!いいな!!?」





バタンッ!!





「っ!!うるっさいなぁ・・・」





力任せに扉を閉めたせいで、耳にキーンと音が残る。
はボーッとカレンダーを見つめていると、あることに気がついた。








「そろそろだなぁ。お父さんとお母さんの命日」








出していたお茶2つをキッチンへ運び、座り心地がいいソファへと移った。





来月・・・来月になったら、またあの親戚はやってくる。あまり気にすることじゃない。
答えは「NO」と決まっているから。








たしかに には両親がいないが、2人が残してくれた家・・・幸せがつまった3人の家。
これだけあってどこが不自由だろうか? の心は決まっていた。










人間なんて、自分の欲望・願望・煩悩を満たすためならなんだってするんだ。
自分のため、お金のためなら他人がどうなろうと関係ない。


だったら私もそうしよう。たった1人で自分のために生きていこう。
誰にも文句は言わない。言わせない。言いたくない。










「あーぁ!」








ボスンッ!っとソファの背もたれに首を倒して、 は天井を仰ぎ見た。










「よぅ。あんたが ?」
「・・・・・・えっ」














「あんたをスカウトしに来たんだ」















× ―――――――――― ×
始めてしまった・・・オリジナル小説。

うわー。どうなっていくんやコレ・・・。

ががががが、頑張るゾ!(ガッツ!)





2006.8.26