私とあの人との関係は「幼馴染」それ以上でもそれ以下でもない。
近いようで・・・遠い存在・・・。










シルバーリング









「ゲームセット!ウォンバイ跡部6−0!!!」



「「「キャー!!!」」」







「よしよし・・・順調だね景吾」















私の幼馴染・・・それは今あのテニスコートの真ん中で注目を独り占めしている
「跡部景吾」
テニス部の部長で生徒会会長。学校中の女子達の憧れの的。



それが私の幼馴染。











「遠いよなぁ〜・・・」






幼馴染という壁は近いようであまりにも遠い。
今の私なんか光の中にいる陰のよう・・・地味にその光を応援し続けている陰のよう。
















「あれ? 先輩じゃないですか?」
「ん?おー。長太郎!お疲れ様ー!!」
「応援に来てくれたんですか!!」



「あ、うん・・・まぁね」







長太郎から顔を逸らしながら私は耳を押さえたい衝動にかけられた。










「ねぇ・・・あそこで長太郎くんとしゃべってる子って誰?」
「知らないの?跡部くんの幼馴染とかいう子だよ」
「なんで長太郎くんと仲よさげにしゃべってんの?」
「はっきり言って跡部くんの幼馴染だからって調子に乗ってない?」











わざとだろうか・・・私に聞こえるように言ってくる。
その声が長太郎にも聞こえたのか、顔を伏せている私を心配そうに見つめた。






先輩・・・」
「あ、私ジュース買って来るね!」
「えっ、ちょっと待って下さい!! 先輩!?」





私は長太郎の横を通り過ぎ、逃げるようにその場を立ち去った。











先輩!待って下さい!!」
「長太郎!ついて来たの!!?」
「だって・・・ 先輩が心配だから。あんなの気にしない方がいいですよ?
 なんだったら跡部さんには俺が言いますから一緒に応援席に来て下さい!!」




真剣な顔をして、長太郎は私の手を握ってくれた。










「ありがとう。でも・・・ダメなんだ」
「えっ・・・?」
「私はフェンスの外から応援するだけで精一杯なの。それだけで十分。
 長太郎は試合に勝つことだけ考えて!!頑張ってね!!」
「・・・ 先輩」
「景吾にも頑張ってって・・・伝えて?」







バイバイっと手を振ると私は笑顔を向けて長太郎の前から消えた。




















「遅かったじゃねぇか鳳。どこに行ってたんだよ?」
「跡部さん!早く 先輩を追いかけて下さい!!」
「はっ?お前何言って・・・」
「今、 先輩すごく苦しいと思います・・・でも俺には何もできません・・・
  先輩を助けられるのは跡部さんだけなんです!!」
「・・・ が来てんのか?」
「はい。ずっと・・・跡部さんのこと応援してました・・・。
 ギャラリーに陰から何言われても、跡部さんの試合だけは最後まで見てたんです!
 行ってあげて下さい・・・お願いします!!」




跡部はスッと立ち上がると長太郎の肩に手を置いた。






「お前がそんな顔してんじゃねぇよ」
「・・・じゃあ!!」
「待ってろ。今度は陰からじゃなくてど真ん中で応援させてやる」








跡部はテニスコートを飛び出し、探した・・・自分の幼馴染を。
















幼馴染という近いようで遠い・・・低いようで高い壁は、自らの手で突き崩せば
案外容易く崩れ落ちるものなんだ・・・。



それがわかれば恐れるものなんて・・・なにもないんだ。
















「さて、帰ろうかな」




ベンチに座っていた は自分の腕についている腕時計を覗いた。
別に帰ってもやることなんてないけれど、ここにいても私にできることは何1つない。















正直、フェンスの外でキャーキャーと声援を送る女の子達が羨ましかった。
いいなぁ・・・ってずっと思ってた。
自分の意見をちゃんと言えて、自分の存在を主張できて。



私とは正反対。



私も自分の気持ちをちゃんと言えたら・・・
こんなに苦しい思いなんて、しなくて済むのにね・・・。


















「勝手に帰ってんじゃねぇよ」



「えっ」






俯いていた顔を上げればそこには・・・自分を見下ろす跡部がいた。







「景吾っ!?なんでここに!」
「それはこっちのセリフだ!来たのなら声かけるとか・・・メールくらいよこせ!」
「いや、だって景吾には試合に集中してほしかったし・・・私なんかいてもいなくても」
「はぁ・・・お前ちょっと付き合え!!」
「どこに!?って、うわっ!うわ!!」






跡部は の腕を引っ張ると人がいない茂みの中に連れて行った。
茂みの中からでは、外の様子はまったく見えないが選手を応援する声だけはよく響いてきた。








「お前今日、何の日か覚えてるか?」
「今日?えっと・・・何の日だっけ?」





跡部は大げさに溜息をつくとジャージから小さな包みを取り出した。
淡い水色の箱にリボンがついている可愛らしいラッピングだった。






「自分の誕生日まで忘れてるんじゃねぇよ!今日は だろうが!」
・・・あぁ!!」
「ったく・・・」






跡部はリボンを解き、箱を開けると中からもう1つ・・・今度は丸みを帯びた箱が現れた。










その箱を開けるとそこからはシルバーのリングが1つ、光を浴びてキラリと光った。















「景吾・・・これは?」
「俺からの誕生日プレゼントだ。手ぇ出せ」





戸惑っていると、跡部は の右手を握りそっと薬指にそれをはめた・・・。






細いシルバーのリングはなんのデザインも施されてなく、ただシンプルなだけだが割合センスのいいものだった。






「学校でつけててもバレにくいのを選んだ。ずっとつけとけ」
「・・・なんで?」
「変な男がつかねぇようにだ。今はこんなのしかやれねぇけど・・・
 そのうちこっちの指につける指輪、買ってやるよ」





跡部はそういうと の左手薬指にそっとキスをした。













もし自分の気持ちに正直になれるのならば・・・
1番にあなたに伝えたい言葉があります・・・。












「景吾・・・大好き」











それから景吾に手を引かれ、みんながいるテニスコートに戻った。
でも今度はフェンスの外ではなくて・・・景吾がいるフェンスの中。













「ちょっと!なんであの子、跡部くんと一緒にいるわけ!?」
「信じらんない!!なんであんな子!?」







また聞こえる・・・あの声。
はギュッと右手の指輪を握った。













「なに勘違いしてんだよ?」









えっ・・・?









跡部は の腰に腕を回すとギャラリーに顔が見えないように抱き締めた。









「こいつはお前らなんかより、ずっといい女だぜ?」








右手の薬指にはめられた指輪がそれを肯定するかのように細く輝いた。
















〜〜〜〜〜〜〜〜〜
瑞希様の誕生日ドリということで書かせていただきました
跡部ドリ!!!なんかもう・・・謝罪の言葉しか浮かんできません(涙)
ロマンチックでいきたかったんですが・・・どこで間違えたんだろう(汗)



とにかく!!瑞希様!お誕生日おめでとうございます☆