切ないloveソングが好きだ・・・。








MD








放課後の教室・・・傾き始め、赤く染まっていく夕日を見ながら、
はMDプレーヤーのボタンを押した。
ヘッドホンを耳にあてるとお気に入りの曲が頭の中に流れ込んでくる・・・。


は音楽が大好きでよくMDを聞く。
登下校中に軽快な曲を聞けば気分も楽しくなる。
夜、寝るときはクラシックを聞けば朝起きたときに気持ちがいい。






そして、最近のお気に入りは、loveソング。
切ない歌詞が は好きだった・・・。


夕日を見ながら誰も居ない教室でMDを聞くと
自分1人の世界にいるようで、 は静かに目を閉じた。










ガラッ!




突然教室のドアが開き、 は驚いてそちらに振り返った。



「あれ? さん。まだ残ってたの?」

「あ、不二君・・・」


教室に入ってきたのは同じクラスの不二だった・・・。
は以前から不二の存在を気にしていた・・・いわゆる片思いだった・・・。







「不二君・・・部活は?」

「うん。これから!ちょっとノート忘れちゃってね」


そう言うと不二は自分の机の中をゴソゴソと捜し始めた。
少しして「あった」と に笑顔を向けた。
は不二のその笑顔が好きで自分も笑顔を返した。







「・・・音楽好き?」

「えっ・・・?」


不二は の席の前に座ると体ごと後ろに向き直った。


「教室でもいつも聞いてるよね・・・?MD。」

「あ、うん!大好き!」

「・・・僕も好きだよ。」







は思わず笑みがこぼれた・・・。
自分の好きな物が不二も好きだということが嬉しかった。


「僕も聞いていい?」

「うん。」


がヘッドホンを取ろうとすると不二は の左手をつかんだ。


「こっちだけでいいよ」







そう言うと不二は の左耳のヘッドホンだけ取り、
自分の耳にあてた。


の鼓動は早くなった。
不二は の机に頬杖をつきながら目を閉じて音楽を聞いていた。
そんな不二と の顔は近い位置にある。
は顔が熱くなってくるのを感じた。







「この歌好きなの?」

「うん。メロディーも歌詞も好きなんだ」


今2人が聞いているのは、切ない恋の詩を歌にしたもの・・・。
はそっと窓の外の夕日に目を向けた・・・。






フワッ・・・。







「・・・っ!!」




突然不二は夕日を眺めていた の髪に優しく触れた。
の顔は赤さを増した。



「なっ!?ななな何!?不二君!!」

「えっ?ううん。キレイだな・・・って思って」



不二は の髪から自分の頬へ手を戻すとクスッと楽しそうに笑った。








「ねぇ・・・ さん?」

「は、はい!?」

「この曲が終わったら伝えたいことがあるんだ。いいかな?」

「えっ?うん。」





曲が終わると同時に、彼の一言で の片思いも終わりをつげた。








―――――――――好きなんだ。 さんのこと・・・。









END