カチッ・・・。





「ふぅー・・・」










いつもの銘柄の煙草を1本くわえて慣れた手付きで火をつける。
口から吐く白い煙は見上げた空に溶けていった・・・。










「もっしもーし。そこのお兄さん?」
「あっ?」










公園の1番端にあるベンチにドカッ!と座っていた俺の目の前に
ちっこい女が偉そうに仁王立ちをしながら現れた。










「お兄さん。見た感じ学生さんだね?しかも山吹中ときたもんだ」
「誰だテメェ・・・」
「私?私は氷帝3年、










3年!?こいつが?
あんまりちっこいもんだから、もっとガキかと思ったぜ・・・。










「ガッキ!?」










どうやら最後の方はうっかり口に出していたらしい。
ガキという言葉に相当キレたのか・・・女はビシィッ!!と俺の顔を指差した。










「それ。やめてよ」
「あっ?」
「煙草!」










煙草?視線を下げると、さっきより灰の部分が長くなった煙草が指に挟まっていた。
俺は見せ付けるかのように口にくわえる。










「煙草がなんだっつーんだよ?」
「消せっつってんだよ」










命令形かよ!!(怒)










「あぁ?俺に指図すんじゃねぇ!ドタマかち割んぞ!!」
「つべこべ言ってないで・・・」










シュバッ・・・!!





「っ!!?」










「黙って消しゃいいんだよ」










風がふいたかと思えば目の前にいた女が片足を浮かしたまま相変わらず俺を睨みつけていた。
くわえていた煙草の火は・・・消えてる。



まさか蹴りで煙草の火だけ消したっつーのか?何者だ・・・こいつ。










「余計なお世話かもしれないけどさー。煙草は体に悪いんだよ?お兄さん」
「本当に余計なお世話だ。俺の体なんかテメェには関係ねぇだろ」
「いつ、誰がお兄さんの心配したんだよ。お兄さんが煙草で体壊そうが私には関係ナッシング」
「あ゛ぁ?」
「私が心配してるのは、あの子達の体の方です!」










振り返る女。

その視線の先には幼稚園のエプロンを着たガキ共がはしゃぎながら公園の遊具で遊んでいるのが見えた。
俺はまだ長さがある煙草をその場に落として、火を足で揉み消した。










「うん?どうしたのかな、お兄さん?」
「あ?別に・・・もういらねぇから消しただけだ。文句あるか」
「ふーん?あそこで遊んでる子達のためじゃないんだー?」
「何でガキ共のためにわざわざ消さなきゃなんねぇんだよ」










立ち上がって公園から出て行こうとすると、女は俺を追い越し再び目の前に立ちはだかった。










「なんだよ!邪魔だ、どけ!!」
「実はお兄さんすっごくいい人?酷いこと言って悪かったよ」










そう言って制服のポケットの中をあさると、女は1つの棒付きキャンディーを取り出した。










「悪く言ったお詫びだよ!また縁があったらどこかで会おうね!」










俺にキャンディーを押し付けると女は笑顔で手を振りながら去っていった・・・。
俺は手の中にあるキャンディーを握り締めながらフンッと鼻を鳴らした。










「縁があったら・・・な」










しかし、押し付けられたキャンディーが豚キムチ味だと気付いたときは2度と会いたくねぇと心から思った。















2008.3.12