パチンッ!!





「勝つのは俺だ!」




「「「キャーッww」」」








これは氷帝ではいつもの光景だった。
跡部の指パチ、セリフ・・・そして女の子の黄色い声。
これがテニス部の日常。











「・・・うるっさい・・・」








しかし、これが日常ではない人間が1人。なぜかテニス部の部室でピアノを弾いていた。
・・・正確にはピアノにうなだれていた。








「最近またギャラリーが増えましたね」
「あぁ、大会が近いし・・・今コートで試合してんの跡部だろ?」
「はい。忍足さんと試合のはずです」
「うわっ。倍増」





部室には の他に鳳と宍戸と日吉・・・そして隣で眠るジローがいた。
4人はソファに座って(1人は眠って)会話を進めている。






「防音対策の完璧な部室のはずなのに・・・」
「どんだけデケェ声で叫んでんだよ?」
「芥川さんはよくこの声のなか眠れますね・・・」











「亮ー。テニス部っていつもあんな感じなのぉ・・・?」



は後ろから宍戸の背中に抱きつき、宍戸はそんな の頭をポンポンと叩いた。



以前も言ったことだが、2人は幼馴染でこんな行動をしようが周りは一切気にしない。
むしろ兄弟として見ている節がある。
(宍戸→兄。 →妹)









「まぁ・・・こんな感じだな」
「うっそ!あんた達あの大声援の中で毎日テニスしてんの!!?
 すごいね尊敬する!むしろ呆れる!!」










「それは喧嘩を売っているんですか・・・ 先輩」
「あら何?私とやろうってーの日吉?悪いけど、私は今イライラしてんだから手加減しないわよ・・・」





火花を散らす両者。
鳳は困ったように笑い、宍戸は の制服をつかんでピアノまで引きずっていった。








「お前はピアノの練習でもしてろ」
「私はあんた達と違って静かな状況じゃなきゃ練習できねぇんだよ」
「口調が変わってますよ?」
「亮。なんかイライラする・・・あとすっげぇムカムカする」
「俺が知るかよ」


「芥川さんでも見つめてたら力抜けるんじゃありませんか?」
「日吉。それ遠まわしにマヌケ面って言ってる?」
「やめとけ日吉。ジローが永遠の眠りについちまう」










「大丈夫ですよ 先輩!試合終わったみたいですし・・・もう静かに」






パチンッ!


「俺様の美技に・・・酔いな」






「「「「「キャアァ―――――ッッ!!!!!」」」」」














ブチッ!!!















「あれ・・・宍戸さん。静かになるどころかヒートアップしてますね」
「そうだな」
「しかも今、何かがキレる音もしましたよね」
「・・・そうだな・・・」

















「フッ、どうした忍足?」
「あー!くやしーわ。また負けた!!」




コートに座り込む忍足を跡部が見下ろして笑った。








忍足は眼鏡をはずして流れ落ちる汗をジャージで拭う・・・。


跡部は汗で濡れた髪をサッとかき上げた・・・それだけでギャラリーは









「「「「「キャアァアァ―――――ッッww!!!!」」」」」








失神寸前。そろそろ倒れる女子生徒も出てくるころだろう。










「跡部くん素敵ーw」
「忍足くーんww」
「死ね日吉ぃい!!!」
「私のタオル使ってくださーいw」
「私のドリンク飲んでくださーいww」
「下剋上だ!!!」












なんか変なの混じってたーっ!!?









「跡部!」
「跡部さん!!」







そこに現れたのは困惑状態の鳳とジローを引きずりながら心配そうに部室を見つめる宍戸だった。








「鳳。気のせいやと思いたいんやけど・・・今部室から変な叫び声聞こえんかった?」
「たぶん気のせいじゃないと思います」
「跡部!今すぐこのギャラリー黙らせろ!」
「あぁ?なんで俺がお前に命令されなきゃいけねぇんだよ?」
「いいから黙らせろ!部室が大破するぞ」








跡部と忍足は部室から


「甘いわね日吉!あんたの力なんてこんなものなの!?」
「負けて後悔しないでくださいよ?手加減はしませんからね!!」


などという叫び声が聞こえるとサーッと血の気が引いていった。









「なにがあったんだ!説明しろ!!」
「このギャラリーのせいなんです!」
のやつがあまりの騒がしさにキレて日吉のやつに喧嘩売ったんだよ」
「そしたら日吉がその喧嘩買って〜あんな状態」




まだ眠いのかジローが半開きの瞳をこすりこすり起き上がった。




「だいたいなんで実家が古武術の道場やってる日吉にあいつが対等に渡り合えてるんだよ!?」
「跡部さん知らないんですか?」
は空手・柔道・合気道・・・」
「ぜーんぶ上級者レベルなんだよー?」






「「知らねぇよ!!(へんよ!!)」」








「誰か止められるやつはおらんのかいな!!」
「唯一止められるのは樺地だけなんです・・・でもあいつ今日部活休んでて」
「どーすんだよ!!?」












「ごめんごめん。委員会で遅れちゃった」
「俺もー!なに?今休憩中?」



そこに現れたのは委員会で遅れてしまった滝と岳人だった。
鳳が2人に今の状況を説明すると滝がクスッとほほ笑んだ。








「じゃあ今部室にいるあの2人を黙らせればいいんだね?」
「やめとけって滝。今行ったらとばっちりだけで気絶させられるぞ」
「大丈夫。大丈夫」









滝は怖がる様子もなく破壊音が響く部室へ入っていった。











ガチャ(入る)














ドサッ!!(何かが落ちる音)















ガチャ(顔だけ出す)







「もう大丈夫だよー!2人ともよく寝てる♪」











寝てる・・・!?













その後レギュラー陣が中に入ると、争った後がある部室の真ん中に







顔を真っ青にして眠る日吉と がいたそうな・・・。
















2006.4.15