「ダメだよ。どんな理由があったとしても、理性を失った戦いはしてはならない。
何も考えられない戦いからは・・・何も生まれない」
Battle 〜06〜 【 リユウ 】
「周・・・?」
「ごめんね。
・・・騙すようなことして」
グルッと周りを見渡すと、自分を中心に9人の男達が輪になるように立っていた。
蹴り飛ばしたはずの越前が何でもないようにスッと立ち上がりニッと笑う。
「結構いい蹴りするじゃん」
「なっ・・・!?」
全然ダメージを受けた様子がない越前。
どうやらあの状況で
の蹴りを腕で受け止めることでガードしたようだ。
「そこにいる不二先輩に頼まれてさ。あんたが逃げられないようにハメたわけ」
よく見ると確かに知った顔もある。
はようやく理解が追い付いたように、ゆっくり息を吐いた。
「なるほどね。やられたよ・・・でも、だったら何?これで私を捕まえたつもり?」
「君とバトルをする気は無い。ただ俺達は、仲間の頼みを聞いただけだ」
視線を不二に向けると、スッとその切れ長な瞳が
を貫いた。
「
・・・僕はどうして君がHurtBattleに
参加しているのか分からない。あの日、僕達の前から消えた理由も」
「その質問なら、どちらも同じ答えになるよ」
「えっ?」
「強くなりたいから・・・」
は、真っ直ぐ・・・不二を見据える。
その堂々とした立ち姿と、突き刺さるような冷たく・・・鋭い瞳。
全員、ゾクッ!と
から発せられるオーラに寒気を感じた。
しかし、その美しい姿に見とれる矛盾も同時に感じていた。
「強く・・・。だから出会うチームに次々とバトルを?」
「確かに、強くなるためにバトルしてたっていうのもあるけど・・・」
フッ。と少し自虐的に笑うと切なげに瞳を細めた。
「嫌いなんだ。『チーム』がさ」
「えっ・・・?」
「くだらない集まりを見てると潰したくて潰したくて堪らなくなる。
だから全滅させてやったんだ。ちゃんとルールとやらに従ってね」
ハッ!と息を飲んだ不二は小さく唇を噛み締めながら眉にシワを寄せると、ゆっくり手塚に振り返った。
「手塚・・・」
「・・・あぁ、構わない」
バッ!と振り返る不二の瞳は吊り上がっていて、見るもの全てを貫くようだった。
「
・・・君にバトルを申し込むよ」
その言葉に、様子を見守っていたメンバーが全員驚きの表情をした。
はニヤリッと口角を上げる。
「戦利品は?」
「その代わりに条件を出すよ。僕が勝ったら・・・君にはチーム青学のメンバーになってもらう」
今度はメンバーから「えぇ!?」とか「はぁ!!?」とかいう
叫び声が響いたが、不二は何も言わずに
の返事を待った。
「・・・わかった。受けるよ」
その言葉に、青学メンバーは一気に沸いた。
ギュッ・・・。
は革の手袋を再び引っ張って、自分の手にしっかり嵌まっているかを確かめる。
不二はスッ・・・とジャージの内側に手を入れると何かを取り出した。
それを見た瞬間、乾が敏感に反応する。
「めずらしいな・・・不二が 『針』 を出した」
「それだけ不二先輩が本気ってことっスね」
不二の指には数本の細い針を挟んであった。
裁縫をする時によく使うものではなく、糸より細く、手の平同等に長い特注の 『針』 だ。
暗い中ではまったく見えないが、月の光りで一瞬だけキラリッと不気味に光る。
「手加減はしないよ」
「・・・されたら困るよ」
風がバサバサと2人の髪を激しく揺らす、ザリッ・・・と足の裏で砂を踏み締めた。
ザッ・・・!!
ザンッ!!
お互いを睨み付けながら同時に、同じ横方向へ走り出す。
バトルがスタートした。
◆ ―――――――――― ◆
なんとか臨場感(?)が出せるようになりたい。
実はこのHurtBattleで鍛えたいと思っています。
頑張るぞ。どうかお付き合いください。
さぁ・・・不二とのバトル。いきます!!
2010.2.13