「心と脳は違うんだ。感じる事と考える事が違うようにね。
お前には、心で感じる人になってほしい・・・」
Battle 〜02〜 【 チーム 】
夜。ほとんどの家の明かりが消えている遅い時間。
不二の家では1ヵ所だけ電気がつけられたままだった。
バサッ!!
青と白が美しいジャージを羽織ると、不二は机の上にある写真立てをそっと手に取った。
コンコンッ。
「えっ。姉さん?」
「周助、また出かけるの?」
扉を開けて現れたのは不二の姉、由美子。
不二は写真立てを机の上に戻してからニッコリと笑みを浮かべた。
「気になる噂を聞いたんだ。あの子かもしれない」
「ねぇ周助。他に方法はなかったの?私に出来ること、何かない?」
「姉さんは心配性だね。大丈夫だよ」
鞄を手に取ると、不二は由美子の横を通り玄関へ向かった。
「周助!!」
「約束したんだ。あの子は、僕が見つけるって」
バタンッ。
由美子はしばらくその場に立ち尽くすと、不二の部屋に入り机の上にある写真に目を向けた。
「あなたは今、どこにいるの?ねぇ・・・
ちゃん」
■
ザッ。ザッ。ザッ。
『HurtBattle』 は 「チーム」 で結成される。
数あるチームの中、様々なバトルで勝ち続け・・・
名を上げたチームであれば一般の若者の間でもその名は知られている。
「遅かったな」
特にこのチーム・・・
『青学』 は、確かな実力とメンバー1人1人の特性で今はもう、その名を知らぬ者はいない。
「全員来たか?」
「えっと・・・。不二がまだかな」
「越前はともかく、不二先輩が来てないなんて珍しいっスね」
「どういう意味っスか・・・」
顎に手を添えて考えるそぶりをしていた菊丸は「あっ!」と笑顔を浮かべた。
「あれ!不二じゃない?」
真っ直ぐ指差した先には、1つの人影がゆっくりこちらに歩み寄っていた。
光がないせいで顔がハッキリとは分からない。
「よし。これで全員そろったね」
「おーい!不二ー!!」
菊丸がブンブンと元気よく両手を振る。
しかし、人影は何の反応も返さないまま静かに歩み寄ってくるだけだ。
菊丸は首を傾げた。
「あ、あれ?」
「なんか・・・様子おかしくないっスか?」
「あれは・・・」
手塚の視線が鋭く人影に向けられる。
「不二じゃない」
ザッザッザッザッ・・・。
砂を蹴る音だけが静かな空間に響く。
青学のメンバーは全員戦闘体勢に入った。
「ねぇ」
目を見開いた。声が女のものだったからだ。
「あんた達はチーム?それともただの夜遊び軍団?」
落ち着いた・・・綺麗な声だ。
相変わらず顔はハッキリしないが、そんなに年上でないことは分かる。
同い年くらいだろうか・・・。
「君は?こんな遅い時間に何してるんだい?」
ニッコリ笑みを向けながら大石が尋ねる。
同時にゆっくり女に歩み寄った。
「ここは危ないよ。送ってあげるから帰ろうか」
スッ。
手の平を向けられ「止まれ」の意味だと受け取った大石は足を止める。
少しイラついた様子で女が口を開いた。
「聞こえなかった?あんた達はチームなのかって聞いてるの」
大石はまた優しく笑いながら頷いた。
「あぁ。そうだよ?『青学』ってチームなんだ」
それを聞いた瞬間、女はニヤッと不気味な笑みを浮かべた。
「そう・・・。それなら」
パァンッ!!
「っ!?」
「ちょっと遊びに付き合ってよ」
女の脚は大石の顔目掛けて蹴り上げられた。
素早く反応した大石は寸前で防御したが、 ギリッ と脚を受け止めた腕が鳴る。
「お、大石!?」
「大石先輩!!」
後ろでメンバーが叫ぶ。
あまりにも予想していなかった展開に全員が動揺していた。
ザザッ!!
「君は・・・何なんだ?」
脚を振り払った後、1回の跳躍で距離を広げた大石。
女はクスッと小さく笑うと、人差し指を口に寄せた。
「秘密。今から解散するあんた達に言う必要もないでしょ?」
今まで静かだった空は急にザワめき始め、風が木々を揺らす音だけが聞こえていた。
◆ ―――――――――― ◆
えーと。1話目で説明したように、テニス感ゼロでありながら
テニプリでバトル小説を書くつもりでスタートしたこの連載。
学校名の『青学』をここではチーム名で使用してみました。
ヒロインも、もちろんバトります!
ちょっと無理がある展開かもしれませんが、皆様の広い
心で受け止めてくださいませ。
2009.8.8