別れは出会い。
終りは始まり。
エピローグはプロローグ・・・。
今まで本当に、ありがとう・・・。
No.40 『Fade』
キィッ!!
「到着しましたよ」
「はい。どうもありがとうございました!」
タクシーから降りて空港に入ると
はチケットに書かれている時間と飛行機の便をチェックした。
「ちょっと早すぎたかな」
時計を見ると
はコートでボールを必死に追い掛けるメンバーの姿を思い描いた。
「みんな頑張ってるかな。ドリンクはあれで足りたかな・・・?」
考えれば考えるほど、胸の中に熱いものが込みあげてきた。
「全国制覇・・・一緒にしたかったな」
小さなアルバムを取り出すと1ページずつ捲っていく。
練習に疲れてソファで寝てしまった赤也とブン太。
買い物には必ずついて来てくれて荷物を持ってくれた柳生にジャッカル。
実は器用で料理上手な蓮二と仁王。
毎日の練習メニューや部員達の成長に気をつかっていた真田に幸村。
短い間だったかもしれないけど・・・。
このメンバーに出会えて本当によかった。
最後のページを捲ると、昨日もらった写真が目に入った。
全員が笑顔で、写真から楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
その中には、自分も写っている・・・。
「みんな・・・」
小さく呟いた
の耳にアナウンスが響いてきた。
そろそろ時間のようだ。
「さようなら・・・」
アルバムを閉じて大事そうに鞄に入れると搭乗口に向かって歩き出した。
「
センパーイ!!」
――― えっ?
「
ー!!」
バッ!!と振り返るとそこには・・・
学校で練習をしているはずの幸村、真田、蓮二、ジャッカル
ブン太、仁王、柳生、赤也が息を激しく荒げながら少し離れた所で足を止めた。
「なんで・・・」
「今日、お前が海外へ行くと言って…黙ってる奴がいると思うか?」
全員、苦しそうな・・・怒りのような表情を浮かべて私を見ていた。
「
先輩!!」
「赤也・・・」
「なんで・・・なんで黙って行こうとするんスか!!
俺達が頼りなかったから!?苦しんでた
先輩を守れなかったからっスか!!?」
「違うっ!!」
私は首を大きく横に振った。
「皆には感謝してる!感謝してもしきれないくらい・・・」
私の目に浮かんだ涙は溢れ落ち、頬を濡らした。
「幸村からは「自分を大事にすること」を教わった・・・。
真田には「仲間を頼ること」を教わった・・・。
柳生には「人を好きになること」を教わった・・・!!」
「
・・・」
「
さん・・・」
「ブン太は私に「笑うこと」を教えてくれた・・・。
ジャッカルは「仲間の大切さ」を教えてくれた・・・。
仁王は「自分を隠さないで生きること」を教えてくれた!!」
「
っ!」
「
・・・!!」
「赤也は・・・「私が1人じゃないこと」を教えてくれた・・・」
「
・・・先輩・・・」
「蓮二は・・・そんな私をずっと支えてくれた「いつでも私の力になってくれた」!!」
「・・・・・・・・・・・・・。」
手を頬に添えると私は温かい涙を流していることに気付いた。
「私がこんな風に泣けるようになったのも皆のおかげ・・・。
皆が私に「泣き方」を思い出させてくれたんだよ・・・!!
忘れかけてた、でもまた泣けるようになった!!」
だから・・・!!!
「・・・・・ありがとう・・・・・」
声が震えてうまく言えなかったが必死に伝えた。
涙が止まらなくて・・・とてもじゃないが笑って別れられそうにない。
「さよならじゃないよね?」
対照的に落ち着いた声でそう言ったのは幸村だった。
「ここでさよならじゃないはずだ」
「そうですね・・・。私達はここで
さんの帰りを待ちます」
「
の居場所は、ずっと空けとくきに・・・いつでも帰ってきんしゃい」
「帰ってくるときは土産忘れんなよ!」
「その時はまた買い物付き合ってやるからな」
「
。お前には帰ってくる場所がある」
「安心して行ってこい。お前は変われる」
「帰ってきたら・・・また試合してくださいよ。それまでに俺、もっと強くなってやるから!!」
ありがとう・・・。
ありがとう!
ありがとう!!
私は顔を上げると大きく息を吸い込み、満面の笑顔を浮かべて手を振った。
「いってきます!!」
背を向けて走り出すと後ろから声が私の背中を押した。
「「「いってこい!!!」」」
そして・・・私達の夏は終わった・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
別れじゃない。
お前がどこに行っても帰りを待ってる。
だから泣くんじゃなくて、笑顔で行って来い。
そして、笑顔で帰ってこい。
待ってるから。
いつまでも待ってるから・・・。
2008.2.15