流した分だけ思い出す・・・
流した分だけ気が付いた・・・
あぁ、そうか・・・
私は、泣く事を忘れてたんだ・・・
No.35 『Fade』
夢をみた・・・。
暗闇の中で誰かが叫んでる。
誰・・・?
「お父さん・・・!お母さん・・・!!」
あれは・・・。
「どこ!?1人にしないでよ!!」
私・・・?
瞳から大粒の涙を流しながら幼い私が叫んでいた。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
呪文のように何度も何度も謝罪の言葉を呟きながら・・・
止まらない涙を手で不器用に拭い続けている。
「あっ・・・」
ペタンッと座り込む幼い私を見て思わず駆け寄ろうとした。
すると後ろから誰かが私の肩をつかみ、それを止めた。
「誰!?」
振り返った瞬間、眩しいほどの光が私を包み込んだ・・・。
「んっ・・・」
うっすらと目を開けて私は目覚めた。
開けられたカーテンからは少し高くなった太陽の光が容赦なく差し込み
鳥の鳴き声が私の目覚めを急かしているようだ。
「夢・・・か」
ベッドから上半身だけ起き上がり、まだボーッとしている頭で昨日のことを思い出す。
飛び出していった私のことを雨の中探し回ってくれた皆。
私を笑顔で呼び戻してくれた皆・・・。
「
・・・?」
振り返ると、扉を開けて部屋に入ってきた蓮二が私を見るなり力強く両肩を掴んだ。
「
・・・!!」
「蓮二・・・。どうしたの?」
蓮二は私をギュッと抱き締めると「よかった・・・」と耳元で呟いた。
「苦しいよ。蓮二・・・」
「仕方ないよ」
続いて部屋にやってきたのは幸村だった。
蓮二の肩に触れると、蓮二はそっと私を離した。
「柳は
が心配で昨日一睡もしなかったんだから」
「えっ?」
「幸村・・・余計なことを言うな」
はいはい。っと幸村は笑うと再び部屋を出ていった。
「みんなにも知らせてくるよ。あと・・・冷たい飲み物も一緒に」
「あぁ。頼む」
ガチャン。
扉が閉まり2人だけになると蓮二は私のいるベッドに腰かけて溜め息をついた。
「昨日・・・お前あの後倒れたんだぞ」
「えぇっ!?」
「雨の中ずっと座り続けていたんだ。当たり前の結果だろう」
ハァッ・・・。
わざとらしく溜め息をついて見せる蓮二のシャツを、私は無意識にギュッと握り締めた。
キョトンと蓮二が不思議そうな顔を向けてきた。
「なんで・・・」
「えっ?」
「なんで・・・私を追ってまで迎えにきたの?」
シャツを握る手に力がこもった。
「私は罪人だった。自分が死ぬはずだったのに人を巻き込んだ。皆も巻き込むかもしれない!
だから人とは関わらないで1人で生きていこうって決めた!!それなのに・・・!!」
蓮二が・・・力をこめたせいで白くなった私の手を、優しく包み込んだ。
「それなのに・・・皆と過ごすうちに何かが変わった。1人が寂しい。1人が・・・怖い」
「そうだな。1人は怖い」
顔を上げると蓮二がもう片方の手で、そっと私の髪に触れた。
「だからお前には俺達がいる。どんなに不安な気持ちになろうと、俺達はお前の側にいる」
「・・・皆のことは・・・信じたい。だけど、皆のことが好きだから・・・尚更怖くなる」
もしも急に皆が離れていったら・・・私は本当に壊れてしまう気がする。
嫌われたらと思うと胸が苦しくて仕方がない。
「だったら、話してみるといい」
「えっ・・・」
「お前の過去も。お前が不安に思ってることも。
あいつらが好きだということも・・・全部あいつらに話してみろ」
「だけど、もし・・・!!」
「もし・・・。なんだ?」
蓮二は立ち上がると、バタバタと音がする扉の向こうを見つめた。
「俺を信じろ。
」
ガチャッ!!
扉が開くと、みんなの笑顔が瞳に飛び込んできた・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
帰って来たー。よかったぁ。
やっぱり蓮二はヒロインにとって
お兄ちゃんって感じですかね?
蓮二をかっこよくしたくて言わせたのが
最後のセリフ・・・(笑)
2008.2.10