真っ暗な空間にいた私・・・


突然聞こえた誰かの声・・・


振り向いたその先に見えたのは・・・


笑ったあの人の顔でした・・・。








No.33
    『Fade』








「ハァ・・・ハァ・・・どこだ!?」










丘を駆け降りて大通りに出た赤也。
こんなに暗くなってもまだ明かりのついている店がいくつもあったが赤也はそれら全てに背を向け歩き始めた。



先輩があんな煩ぇとこにいるはずねぇ・・・。










「どこだよ・・・」










必死で探すうちにポツッ・・・と降り始めの雨が赤也の足を止めた。










「マジかよ。 先輩濡れてねぇかな・・・」










雨は次第に強さを増していく。
ペンションを飛び出した時に比べるとだいぶ落ち着いてきた赤也は、雨なんて気にしない様子で を探し続けた。










先輩・・・暗い中1人で怖がってねぇかな・・・」













――― 暗闇が怖いの・・・どうしても。













「まさか・・・1人で泣いてねぇよな・・・」













――― あいつはあの日から笑うことを忘れた・・・。













「どこだよ・・・」










どこにいるんだよ・・・ 先輩・・・!!













先輩ー!!」










誰もいない真っ暗な通りに向かって叫ぶ。
もちろん返事なんて返ってくるはずがなく・・・小さく溜め息を吐いた。










「えっ。公園・・・?」










静かに存在した公園は街灯が1つ2つしかなく、薄暗い中に遊具がボヤァと浮かんで見えた。










「公園か・・・何年ぶりだっけな」










そんな物思いに更けながら歩を進めるとポッカリ空いた広い空間に出た。
ユルユルなネットに消えかかっているライン・・・。










「テニスコートか?これ・・・」










手作り感のあるコートを木々が囲み、その中でも一際大きな樹木の下に
ベンチが1つポツンとそこにあった。










「あっ・・・」










そのベンチに座る人影・・・探し求めていた人物。










・・・先輩」










赤也はゆっくり、背を向けて座っている に近付いた。
自分自身を抱き締めるようにして震えている儚い存在・・・。













「赤也・・・」













フッと、消えそうな声に赤也もすぐ後ろで足を止めた。













「みんな・・・」













胸がキュッと苦しくなるのを感じた。













「助けて・・・」





先輩・・・」













静かに、優しく・・・ を後ろから抱き締めると、ビクッと体が小さく震えた。













「やっと・・・見つけた」

「あか、や・・・?」

「探したんスよ?」










の体は、やっぱり細く、か弱く、頼りなく・・・そして、愛しかった。










「どうして・・・」

「言ったでしょ? 先輩が助けて欲しい時にはいつでも行くって。約束したじゃないっスか」










さらに強く、 を抱き締める腕に力を込めた。










「でも・・・私は」

「過去、 先輩に何があったのか詳しく知らない・・・ってか関係ない」










柳先輩から聞いた昔の話。

初めて気付いた本当の気持ち・・・。















「俺は・・・」










「赤也! !!」










その声に赤也は腕を離し、 が振り返ると柳達が全員揃って息を荒げていた。










「蓮二・・・みんな、何で」

「迎えに来たんだよ」

「帰ろう。 ・・・」










スッと手を差し伸べる柳。 はゆっくり立ち上がると、小さく震える手を伸ばした・・・。





















――― お前がやったんだ!!















ドクンッ!!


















「あっ・・・」

?」




















――― お前のせいで!!




















!?」

「いやっ・・・!!」










再び頭を抱えて「声」を消そうとする。
しかし「声」はさらに の脳内に響き出した。






















――― お前が人と関わるとかならず不幸にする。それがわからないのか!!








――― 2度と私達の前に現れないで!!























、大丈夫か!?」

「触らないで!!」










は肩に触れた柳を、力いっぱい突き放すと目付きを変えた。
あの・・・昔の、野良猫のような瞳に。










「最初に・・・言ったじゃない。私と関わらない方がいいって・・・私と関わっても後悔するだけだって」















だから・・・。



お願いだから・・・。



助けなくていい・・・。



これ以上、私に優しくしないで・・・。













「もう・・・ほっといて」













崩壊の音は・・・止まらなかった。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「助けて」とあなたが言えばどこへでも。

前作と弱冠重なるように書いたつもりなんですけど・・・

繋がってますか?(汗)







2008.2.8