過去を見つめたくなければ
振り返らなければいい・・・
その代わり・・・
苦しみが長くなるよ?
No.27 『Fade』
今日1日の練習も終わり、全員ヘトヘトになって帰ってきた夕食の時間。
「ありがとう蓮二。助かったよ」
「あぁ。いつでも言ってくれ」
はセッティングされたテーブルを見つめて「よしっ!」っと手を叩いた。
「あとは皆が来るのを待つだけ!」
今キッチンに立つのは俺と
のみ。他は全員入浴中だ。
俺はチャンスだとばかりに隣で満足そうに笑う
の手を引っ張って、無理矢理こっちを向かせた。
「れ、蓮二?どうしたの?」
「
・・・」
向き合うと俺は目の前にいる従兄妹を見つめた。
「赤也との試合・・・途中から昔のお前のテニスに戻っていたな」
「そう、だった・・・?」
「あぁ・・・だが、お前らしくなかった」
「えっ?」
「なぜ、あんな悲しそうな顔でテニスをしたんだ」
ドクンッ・・・!!
の顔が険しくなった。
「そ、そうかな・・・?そんなことないよ?」
「何を想ってラケットを握った」
ドクンッ!!
「何って・・・そんなの」
ジリッジリッと迫ると
は逆に後ろへ後退り、ドンッと壁に背をつけた。
「まだ・・・あの日の事を引きずっているのか?」
の体が小さく震えた。
「
・・・お前はいつだって自分1人で何でもやろうとした。何だって乗り切ろうとした」
フッ・・・と肩の力が抜けて、目の前にいる存在をそっと抱き締めた。
「れん、じ・・・?」
「頼むから・・・」
どうやら怖くて震えていたのは・・・。
「辛いときは・・・俺達を頼ってくれないか」
俺の方だったらしい・・・。
は本当に人に頼ることをしなかった。
何でも1人でやろうとした。
だから・・・痛みも、辛さも、苦しさも・・・全部全部背負いこんだ。
どんどん重くなるその手錠も、どんどん締まるその鎖も。
はいつまで耐えるのだろうと思うだけで胸が締め付けられた。
今、俺の腕の中にいるこの存在がいつ消えてしまうのかと思うと本当に怖かった。
早く、早くこいつの手錠も鎖も取り払って自由にしてやりたい。
軽くしてやりたい・・・っと願った。
「ありがとう・・・蓮二」
はそっと俺の背中に腕を回して顔を埋めた。
「でも、私は皆に甘えることは出来ない」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「蓮二の言葉、嬉しかった」
を離すと軽く笑みを見せ、キッチンを出ていった。
その様子を見届けてから俺はグッタリと肩を落としてキッチンを出た。
ガチャ。
「・・・いつから聞いていたんだ?仁王」
「あれま。バレバレ?さすが参謀。
には気付かれんかったから安心しんしゃい」
「詐欺師ならもっとうまく盗み聞くんだな」
「もしかして怒っちょる?盗み聞きしたん。けど残念」
バンッ!!と仁王は俺の横に勢いよく手をついた。
「俺もめっさ苛々しとるんよ」
「仁王がそんなに感情剥き出しなのも珍しいな」
「柳。確かに俺は・・・俺達は
の過去も、背負っとるもんも知らん。けど・・・」
あのキッチンから出てきた時の
の顔・・・。
寂しそうやった・・・。
「
がマネージャーになったばっかの時・・・あのキッツイ眼ぇ見て俺と同じ人種やと思っとった・・・」
誰も信じてないような・・・野良猫みたいなあの眼。今でも覚えてる。
「けど違った。
は・・・あいつは人を嫌っとるんやなくて自分を嫌っとる。
周りの人間を傷付けんのが怖いきに自分から距離を作っちょったんじゃろ・・・?」
本当は気付いていた。
仁王がここまで読んでくることも・・・
全てが崩れていく音にも・・・気付いていた。
仁王だけじゃない。幸村も、赤也も・・・
全員が
の笑顔に違和感を感じ始めている可能性だってある。
「柳・・・頼むけぇ」
俺はその時やっと決心した。
「
のこと・・・話してくれん?」
俺が終りにしよう・・・と。
「・・・わかった」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ついに柳が語る!
続きは徹子○部屋で!(オイッ
2007.12.1