闇の中をさ迷って・・・
やっと見つけた小さな光・・・
優しく包み込んでくれた温かさに・・・
自然と涙が流れ出た・・・。
No.26 『Fade』
カチャ。カチャ。
合宿2日目の朝。
全員で机を囲んで
の作った朝食を食べていた。
「今日の片付け当番は
と赤也だったな」
ギクッ!!
と赤也の箸が同時に止まった。
「頼んだぞ赤也。
」
「あ、えぇ・・・っと」
「残りの俺達は先にコート整備しに・・・」
「待ちんしゃい」
もぐもぐと口を動かしたまま俺は参謀に目を向けた。
「今日の片付け当番は俺と
じゃろ?じゃけん赤也はコート整備行ってきんしゃい」
「えっ・・・仁王先輩?」
参謀はフッと笑うと「あー。そうだった。そうだった」と手をあわせた。
「じゃあ仁王、
。俺達は先にコートに向かっているな」
「プリッ」
全員外に出払ったあと、食器を下げて流台で
と皿洗いを始めた。
スポンジで汚れを落とした
から食器を受け取り、俺がタオルで拭く作業を繰り返した。
「赤也とケンカでもしたん?」
「ぅえっ!?」
うをっ!と・・・危か。
の手から滑り落ちた皿を床ギリギリでキャッチした。
「し、してないよ!なんで?」
「昨日のあの試合からお2人さん、口聞いちょらんじゃろ?」
「だから当番代わってくれたのか。ケンカっていうか・・・急に何でか赤也が冷たくなって、さ」
ハハッ・・・っと軽く笑う
を見て違和感を覚えた。
「赤也が急に冷たくなった原因、知りとぉ?」
「えっ?」
振り返った
の頬をムニッとつまんでやった。おまけに横に引っ張ってやる。
「これじゃよ」
「ふぇ!?」
「笑い方が変なんよ。無理して笑っちょる顔。赤也が怒るんも当たり前」
手を離してやると
は痛そうに頬を押さえた。
「
が言いよったんよ。無理すんなって・・・自分を作んなって・・・。俺に説教したん覚えちょる?」
うつ向いて黙る
の頭をわざとガシガシ乱暴に撫でてやった。
「赤也は意地張っちょるだけじゃき。またその内しつこく勝負挑んでくるけぇほっときんしゃい」
「・・・うん。ありがと!仁王!」
ドクッ・・・。
目の前で明るく笑う
の笑顔は・・・やっぱり違和感があった。
練習が始まって全員が夢中になってる隙に、俺は参謀を呼び出した。
もちろん・・・誰にも見つからんような場所に。
「何だ。どうかしたのか仁王?」
「参謀に聞きたいんよ。
のこと・・・」
参謀の顔がわずかに険しくなった。
「俺は詐欺師、けどあんたは参謀。騙し合いは面倒やし単刀直入に聞く。
は・・・何であんな無理した笑顔で笑うん?」
参謀の顔がますます険しくなる。
「・・・参謀なら知ってんやんなぁ?」
なるべく冷静を装って・・・ポーカーフェイスは俺の18番。
「
を見とって思ったんやけど・・・。
、過去に何か抱えちょるんやない?」
俺の言葉を最後にしばらく沈黙が続くと、不意に参謀がフッと笑った。
ドクッ・・・。
「あっ・・・」
と同じ・・・悲しそうな笑顔。
「さすがと言うか・・・、そこまで読んでくるとはな。詐欺師」
「同じ、なんよ」
「ん?」
「昔の俺と同じなんよ。周り気にして、笑いたくもないのに笑ったあの無理矢理な笑顔が・・・」
「確かにそうだ・・・」
参謀・・・柳は仕方なそうに溜め息をつくと、ゆっくり口を開いた。
「あいつは・・・あの日から笑わなくなった」
「あの日?」
「あぁ・・・」
柳は真っ青な空を仰ぎながら落ち着いた様子で言った。
「
が罪人になった、あの日から」
俺は思わず眉をひそめた。
「
が罪人?何の冗談言うとるん」
「もちろん俺だってあいつが罪人だなんて思っていない。
だが・・・あいつは自分のことを人殺しだと思ってる」
「人殺し・・・!?」
「蓮二ー?仁王どこー?」
遠くから
の声が聞こえる。どうやら休憩時間に入ったらしい。
「時間切れのようだな」
「待ちんしゃい。まだ肝心なこと聞いちょらんぜよ」
「焦るな。仁王」
柳は背を向けながら歩き出した。
「終わりの時は、近付いている・・・」
「はぁ?」
その時の柳の後ろ姿が、あまりにも寂しげで・・・悲しげだったもんだから。
思わず呼び止められずにいた・・・。
砂時計はサラサラと・・・
確かに時を刻み込む・・・
戻ることのないその砂は・・・
時に優しく・・・
時に悲しく・・・
地に向かって流れ落ち・・・
最後の時を刻んでいる・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
柳から飛び出た驚きの言葉。
さぁ、このまま。
ラストの階段へ・・・。
2007.11.22