積み上げてきたモノ。


それを壊すと罪悪感。


壊されると絶望感。


私はどちらの感情?








No.24    『Fade』








合宿が始まって初日、全員ジャージに着替え終わると
テニスコートが完備されている施設へ向かった。








「おーおー!いいコートじゃん!!」
「文句なしっスね」








綺麗に整備されたコートには全員満足そうな表情をしていた。








「あ、そうだ」








赤也はおもむろにラケットを取り出すとタオルの準備をしている の元へ駆け寄った。








先輩!」
「ん?どうしたの?」
「俺との試合の続き、やりましょ!」
「はっ・・・?」








赤也は がマネージャーになった初日に保留となった試合の決着をつけようとしていた。








「何言ってんのいきなり。そんなのダメに決まって・・・」

「いや。やってもらおう」








横からそう言ったのは幸村だった。








「幸村!何を言って・・・!?」
「練習はこの2人の試合を見てからにしよう」








それだけ言うと幸村は背を向け、試合がよく見えるベンチへ向かって行った。















「・・・おい。幸村、何のつもりだ?」








後ろから追い掛けてきた柳が声をひそめた。
幸村は振り返ることもせずにコートへ入る2人を見つめている。








「学校で初めて のテニスを見た時に思ったんだ・・・。
 あれはそこらのレベルのプレーヤーじゃない」

「なっ・・・!それを確かめるための試合か!!」
「止めても無駄だよ・・・ホラッ」








幸村の視線を柳も追う。
するとそこには真剣な眼差しで、2人を見つめる仁王・ブン太・柳生・ジャッカル・真田がいた。

全員の目が試合を楽しもうという目でないことは明白だった。








突き刺すような・・・

見定めているような・・・そんな視線。










「全員気付いてるんだよ。 の異質に・・・」








柳は自分のラケットを持って開始を待つ を悲しそうに見つめた。
審判として入った柳生が片手を高く上げる。








「前回の試合に引き続き、5―1からのスタートで・・・」



「待って!!」







の声がコート中に響き渡った。








「前回のカウントは取り消し。0―0から勝負だよ・・・赤也」
「へっ!望むとこっスよ!!」








ボールを高々と投げて、試合は始まった・・・。












パンッ!



バシッ!!     パァン!!












0―1・・・。












ギュンッ!!







「チッ・・・!!」











1―1・・・。











パンッ・・・。




ビシィ!!















「1―3!!」


「よっしゃあ!!」








「赤也が3ゲーム取った・・・!」
の奴、本気出てんのかぁ?」

「いや、 は前の試合と変わった様子はないな。変わったのは・・・赤也だ」













「どうっスか。 先輩?お望み通り強くなったでしょ?俺」

「・・・そうだね・・・」












――― ゾクッ!!












試合を見ていた幸村達に寒気が走った。










の目が・・・変わった」










スッ・・・と瞳を閉じたかと思ったら次の瞬間、スラァ・・・っと の目付きが変わった。

冷たい・・・全てを見透かしたような・・・オーラさえ感じる気迫だった。









赤也もそれを感じたのかラケットを構え直す。










「いくよ・・・」










はトンットンッとボールを2回弾ませると、真っ直ぐ一直線に投げた。












「幸村・・・学校であいつのプレイを見て異質を感じた。と言ったな?」
「えっ?」





「残念だが・・・違う」










滑らかな、流れるような動きで はラケットを振った。











「主導権は渡さねぇ・・・!このまま俺が勝つんだ!!」










赤也は、これから飛んでくるであろうボールに向けてラケットを構えた。












・・・ピチャーン・・・。












水音が聴こえた気がした。










「・・・えっ?」









気がつくと はすでにラケットを振り下ろしていて
後ろでは黄色いボールがコロコロと転がっていた。












「今のは・・・」



「あれが本当のあいつのテニス・・・『水月下』だ」










時が止まったかのように。全員が変貌してしまった に固まった・・・。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ついに出ました。本気のテニス!

つまり以前、赤也と試合をした時は
本気・・・というわけではなかったってことですね。

どんだけっスか!!?(お前が書いたんだろ)





2007.9.29