人は誰かに助けられながら生きている。


人の助けがあるから活きている。


なら1人の人間は・・・どうやって生きたらいい?








No.22    『Fade』








「ジャッカルー!!!」

「・・・はぁー」








教室の扉をバーン!!と開きながら現れたブン太を見てジャッカルはうなだれて溜息をついた。








「大変ねー。ジャックも」

「ジャッカルだ。お前今わざと間違えただろ」



「ニュース!ニュース!!今さっき仁王から聞いた話!!」

「わかった。わかったからもう少し静かにしろよ丸井。俺達すっげぇ目立ってるぜ?」



「大変ねー。ジャッキーも」



「お前もいい加減にしろよ?」








「あれ?そーいや」








ブン太は に目を向けると首を傾げた。








「なんで がここにいんの?」

「いちゃ悪い?」

「じゃなくて。めずらしいじゃん」

「そっかな?」








窓際の自分の席に座るジャッカル。
別のクラスにも関わらず当たり前のようにジャッカルの机に座って会話を続けていた
少しジャッカルを見下ろすように目を合わせるとジャッカルが口を開いた。








「そーでもねぇぜ?こいつよく俺のクラス来るし」

「えっ!そーなの!?」

「うん。」








コクンッと頷く をみてブン太は急にムスッと唇を尖らせた。








「俺、そんな事知らなかった」

「うん。まぁ言ってなかったからね」

「なんでジャッカルなんだよ・・・俺んとこ来ればいいだろぃ」

「ん?何か言った?」

「別に!!」

「なに怒ってんだよ・・・。で?ニュースって何?」








その言葉にブン太はバンッ!と机に手をついた。








「合宿の場所決まったぜぃ!!」

「・・・合宿?」

「毎年恒例夏休み強化合宿!!」



「夏休みって・・・1週間後じゃん!!」

「急過ぎねぇか!?」

「なんか急にコートのあるペンションの予約がとれたんだってよ!!すっげぇいい所らしいぜー♪」



「じゃあ、私も合宿に向けて色々買い出し行かなきゃ。ジャッカル!今日の買い出し付き合って!」

「はぁ!?なんで俺が」

「1番体力あって1番筋力あって、1番雑用に向いてそうだから」








「・・・お前、俺のことからかって楽しんでねぇ?」



「うん。正直ね」








次の瞬間、ブン太は横からジャッカルと との間に割って入った。








!俺が一緒に行ってやってもいいぜぃ?」

「ブン太はダーメ。部室のトロフィー壊した罪で赤也と仲良く、真田に怒られてらっしゃい」

「なっ!何で知ってんだよ!?」

「お見通しです。じゃあジャッカル!放課後よろしくねー!」








手を振りながら は教室を出ていった・・・。
残されたブン太はジャッカルに目を向けると恨めしそうに口を尖らせた。










「ジャッカルのアホ」

「俺かよ!?(汗)」





















それから放課後になって・・・

ジャッカルは両手いっぱいに紙袋をぶら下げていた。








「あとはー・・・」

「まだ買うのかよ」

「あ!レモン、レモン!!」

「レモン?レモンなんか何に・・・」








はフルーツの並んでいる店に入ると、綺麗な黄色が眩しいレモンの品定を始めた。








「ドリンクに混ぜたり、輪切りにしてハチミツと合わせるの。
 水分の吸収が普通のドリンクよりいいし、食べることで疲れもとれるんだよ」

「へぇー・・・」

「いつも配ってるドリンクにも混ぜてるよ?」

「マジで!?」

「マジ、マジ」








あ・・・だから の作るドリンクって、市販のやつより美味いんだ・・・。








は袋いっぱいに買ったレモンを持ってジャッカルの隣に並んだ。










「お待たせ。全部買ったから帰ろうか!」

「あぁ。 、その袋渡せよ」

「えっ?ダメだよ!ジャッカルにこれ以上持たせるなんて・・・」

「いいから貸せって。そのために付き合ったんだから」








ジャッカルは からレモンの入った袋を受け取ると余裕の表情を見せた。








「ありがとう・・・ジャッカル」

「別にいいって」








学校へ帰る道を歩きながら2人は他愛もない話で盛り上がった。
そして合宿の話題を出したのは、ジャッカルだった。










「合宿・・・かぁ。近いんだな、大会」

「自信ない?」

「んなわけねぇよ。ただ・・・」

「ただ?」



「大会が近くなるにつれ部活の空気が張り詰めるんだよなぁ」

「良いことなんじゃないの?」

「張り詰めるっつーよりピリピリしてて居心地悪いんだよ。
 今みたいにこうして話せる雰囲気でもねぇし・・・俺は合宿なら合宿でもっと楽しくやりてぇな」








横目で見たジャッカルの表情は合宿を楽しみにしているような
そうでないような複雑そうな表情だった。










「やろうよ!」










「・・・はっ?」

「楽しい合宿やればいいじゃん!テニスやって、夜は花火にバーベキュー。寝るときは枕投げ大会!」

「それは合宿っていうより修学旅行・・・。それに無理だって」

「どうして?」

「俺達は目の前の勝利しか見ないんだ。勝つためにやる合宿でそんな・・・」








「だったら行くことないんじゃない?」








ジャッカルは を振り返った。
空が赤く染まるのを見つめながら は続けた。








「テニスをするときはテニスにだけ集中すればいい。
 それ以外は修学旅行と一緒でいいんじゃない?みんなと騒いで、笑って、何に影響するの?」








ジャッカルは何も言わなかった・・・。
は構わず続ける。













「ただテニスをするだけなら普段の練習と何ら変わりないし・・・

 生活を共にして、仲間同士の信頼を確かめ合うのが合宿の目的でしょ?

 ただピリピリした居心地の悪い雰囲気で練習すれば強くなるわけでもないんだし。

 だったら皆で行く合宿・・・楽しめるだけ楽しまなきゃ!!」












ジャッカルはフッと口元を上げながら呟いた。















「あの一匹狼だったこいつが・・・仲間ねぇ・・・」















「ん?なに?」

「別に?なんでもねぇよ」















テニス部強化合宿。



今年の強化合宿はなかなか・・・楽しめるかもしれねぇな。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今回は前回よりちょっとジャッカルさんイジメ(笑)

さりげなく仲が良い2人って好きです。

ヒロインさんの心は・・・

変わりつつあるのでしょうか・・・?





2007.7.27