何を基準にして・・・。


辛いだの。


無理だの。


苦しいだの・・・。


人は決めるのだろう?








No.20    『Fade』








「あ、真田。おはよ」
か。早いな」
「真田には負けるよ。競ってるわけでもないけどね」








へへっ。と笑う を見て真田は眉をしかめた。








「どうしたの?真田」
。少し動くな」
「へっ?」








真田は片手で肩をつかむと、もう一方の手の平を の額に軽く押し当てた。








「ち、ちょっと真田!?」
「熱・・・あるな」








トントンッと額を叩くと真田は の腕をつかみ学校に向かって引っ張った。








「うわっ!さな・・・真田!?」
「お前は今日休め。よく見ればフラフラだしな」
「大丈夫だよ!熱なんて・・・」





「真田? を誘拐してどうするつもりだ?」








振り返るとテニスコートに向かう途中の柳が2人に向かって手を振っていた。








「蓮二助けて!真田に襲われるー!!」
「襲う気か?真田」
違う。熱があるんだ・・・保健室に連行してもいいだろ?」






「あぁ。よろしく頼む」

「なっ!?裏切り者ー!!








ズルズルズルーッと引きずられていく を見送りながら柳は口元を隠して、笑った。













「あの真田がな・・・」















ガラッ。















扉を開けると保健室特有の消毒の臭いが鼻をついた。








「先生はいないのか」
「そりゃ休日だから・・・ね」








視界が歪み、 は体が前のめりに倒れるのがわかった。













ドサッ!!













「限界だったようだな」
「・・・っ!?」








力が抜けた の身体を真田は軽々と抱き上げると近くにあったベッドへ座らせた。








「ごめん・・・真田」
「なぜ謝る?」
「だって!!」


が必死に仕事をしていた事くらい全員わかってる。
 それこそ倒れるんじゃないかと心配になるくらいにな」


「・・・・・・・・・・。」








「案の定お前は倒れた」
「だからゴメンって・・・」








真田は冷凍庫から氷をいくつか取り出すとビニール袋に詰め、
それをタオルにくるんだ物を の額にそっと押し当てた。








「冷たっ・・・」
「以前、お前が俺に言った言葉を覚えているか?」



「えっ?」










熱のせいで頬を真っ赤にした を見て真田はフッと笑みを浮かべると窓の外に視線を移した。















――― 真田の体が壊れたりしたらどうするの!!


――― あのね真田。努力と無茶は別物だよ?


――― もっと自分を大切にして?真田・・・。















「お前は、俺に大切なことを教えてくれた。
 あのままじゃ俺は本当に倒れるまでやっていただろう」








今のお前みたいにな。

そう付け加えた。










「あの時お前は俺に向かってあれだけ言ったんだ。もちろん俺が休めと言ったら休むな?」








あぅっ(痛)。








「いや、でも・・・たいしたことないし、私が仕事しなきゃ」
「ダメだ。悪化するぞ」
「でも・・・」








引く態度を見せない に真田は深く溜息をついた。








「こんなこと言うのは正直恥ずかしい気がするんだが・・・」
「うん?」








に氷を包んだタオルを渡すと真田は立ち上がり、背を向けた。















「心配なんだ・・・無理されると」















「へっ?」
「後でまた様子を見に来る。いいな?ゆっくり休め」










ピシャン!!










有無言わさずに保健室を出ていった真田。
残された はしばらく呆然とベッドに座っていた。




















「う・・・ん?」










いつの間にか眠っていたみたいだ・・・。








少し開いていた窓の隙間から心地よい風が入り込み、白いカーテンを揺らしていた。
腕時計を覗き込むと自分が3時間も眠っていたことが分かる。








「ありっ?」








周りを見渡してみると赤也がベッドに寄りかかって眠っており、
仁王は窓辺で・・・ブン太は机に突っ伏して寝息を立てていた。








「起きたか?」
「真田・・・蓮二?」








2人は隣に並ぶと蓮二が私の額に手を当ててきた。








「どうだ?」
「下がってはいると思うがまだ熱いな」
「ち、ちょっと?」
「じゃあ俺は幸村達を呼んでくる」
「あぁ。頼む」








軽くスルーされた(悲)。








蓮二が保健室を出ていくと真田は険しい顔をしながら側にあったイスに腰かけた。








「お前は・・・」
「はい。すいません」
「まだ何も言っていない」








「お前は誰かに頼る・・・という行為をしたことがあるか?」
「頼る・・・?そりゃあ」
「ないな。」








遮られてしまった。
頼むから話を聞いてくれ。真田よ。










「お前は仕事でも何でも1人でやろうとしすぎだ」
「・・・・・・・・・・。」
「なぜ人を頼らない」
「なぜって・・・」
「俺達が頼りないか?」








言葉が返せない。
それは図星だからなんかじゃなくて真田の眼が怖かったからだ。








「お前を見ていると昔の俺と重なる時がある・・・」
「昔の真田と・・・?」
「お前に会う前の俺だ。自分の力だけを信じてきたような奴だった・・・でも」








真田は一呼吸おいてから再び言葉を繋げた。










「あれから少し・・・周りにも眼を向けてみた。
 こいつらがいるからテニス部があるんだと思い始めてきた」








眠っている赤也達にチラッと眼を向けてから真田は次に私の眼を見直した。










「もちろんその中にお前も含まれる・・・
「・・・っ?」
「お前も外せない仲間の1人だ。だから・・・」








真田はうまく言葉が見つからないのか考えながら話しているようだった。















「1人で・・・抱え込むな」










「真田・・・」
「1人で難しいなら俺達を頼れ。いいな?」
「あっ、はい」








思わず返事をしてしまった。
しかし真田の言葉は素直に嬉しかった・・・。










仲間・・・。そっか、私こいつらの仲間なんだ。










それから蓮二がジュースを買いに行っていた幸村達と帰ってきて、
なぜか独り暮らしである私の看病をすると赤也達が言い始めたので再びテニス部全員での
お泊まり会が決行された。



正直、具合悪いんだから静かにしてほしい・・・。と、思ったが・・・
その日の私は、なぜか満たされたようないい気分だった。















うん。仲間か・・・。





悪いもんじゃない・・・。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

こんな感じの真田さんを書いてみたかった。

ので、書いてみた(爆)

あの人はブン太や赤也の面倒を見てるせいで

メンバーの様子の変化とかにすぐ気付きそう・・・。





2007.5.12