人の心を人は見ることができない。


だから一生懸命に人は人を知ろうとするのだ。








No.12    『Fade』








「ありえねぇ・・・」
「なんで?」
「ありえねぇだろぃ・・・」
「だから、なーんーでー?」






赤也とブン太は1枚の紙切れを食い入るように見つめながら叫んだ。






が学年順位2位ってどういうことだよー!!?」

「どうって・・・見たまんまよ。ねぇ?」
「あぁ。」
「って、お前は堂々の1位じゃねぇか柳!!!」






ブン太は声を上げ、赤也は今だにテストの結果表を見つめながら震えていた。






「学校に通ってなかったわりにやるのぅ・・・
「正直、驚きました」
「学校に通ってなくてもそれなりにね。どう蓮二?安心した?」
「あぁ。無駄な心配だったよ」
「それに比べて・・・」






仁王はブン太の制服のポケットに入っている
クシャクシャに丸められた紙を見つけるとヒョイッと奪ってみせた。






「あぁ!?仁王!!」






紙についたシワを伸ばしながら全員、仁王の持つブン太のテスト結果表を覗き込んだ。






「おー。これまた・・・」
「あらららら。」
「返せよ!!」






バッ!と紙を奪い返すブン太。
それを見て赤也は腹を抱えながら爆笑していた。






「あはははは!!丸井先輩かわいそー!!」
「ちなみに赤也の結果表はここに」
「なっ!なんで持ってるんスか!!?」
「さっき盗りましたー♪」






笑顔で赤也の結果表をヒラヒラさせる
仁王はニヤッと口許を上げながら手を伸ばした。






「おー。ようやった
「はいよ仁王さん!」
「あぁー!!!」






必死に奪い返そうとする赤也をブン太は道連れだと言わんばかりに押さえ付けた。






「赤也・・・!なんなのこれは!?」
「英語なんて壊滅的ですね・・・」
「進級すら危ういな」
「俺にも見せろぃ!!」






ギャーギャー騒がしいメンバーを見つめながら溜め息をつく真田。
その隣で、メニューを考えていた幸村がパッと笑顔を浮かべた。






「メニュー決めたよ!」
「なに?どうしたの幸村」
「勉強会しようか!」

「「「はぁ!!?」」」






唖然とするメンバーの中に1人だけ笑顔を浮かべる幸村・・・
こうしてテニス部の緊急勉強会は始まった。































「あ、違うって。ここはxの2乗だから・・・」
「わかんねーよ!なんでこうなんの?」
「あんたの計算が間違ってるからでしょーが!!!」






は事前に用意しておいたハリセンでスパァンと俺の頭を殴った。






「痛ってぇ!」
「はい。ブン太もう1回」
「・・・鬼ぃ」






あれから勉強会は始まって、俺の勉強は が見ることになった。
よりにもよってなんで なんだよ・・・。
そして、そのハリセンは何なんだよ!!?






俺は問題を解くフリをしてチラッと の顔を盗み見た・・・。










正直、俺は が苦手だった・・・。





初めて見たときからこいつは同じ歳とは思えないほど大人びてて
どこか冷めてて・・・特にあの孤独な眼が苦手だった。





たまにフッと寂しそうな顔するくせに、すぐにまた笑顔になる・・・
そんな不安定な性格も気に入らなかった。










「・・・ん?なーにブン太?」
「っ!なんでもねーよ!!」








俺はこいつのこと、よくわからねぇ・・・。








。ここの問題、わかんねぇ」
「あ、ここはね・・・」






時間が静かに進む中、教える側の話し声・・・教わる側のシャーペンの音。
そして、たまにハリセンの軽快な音が部室中に響いていた。










「うしっ。出来た!!」
「どれどれ?」






全問解き終わった俺の解答に が赤いペンで丸をつけていく。
俺はその様子をじーっとガムを膨らませながら見ていた。






「よっし!全問正解だよブン太!」
「マジ!?キャッホーイ!やっぱ俺って天才的だろぃ?」
「すぐ調子に乗るんだからぁ・・・」








なんだよー。
せっかく全問当たったんだからもうちょい俺の実力認めてくれたっていいんじゃねぇの?



でも・・・まぁ の教え方がうまかったのも事実だしなぁ。
やっぱお礼とかした方がいいのかな・・・?








!」
「ん?なに?」
「やるよ。お礼!」






って言っても・・・ガムしかないけど。






「えー?ブン太がお礼?めずらしー!」
「なっ!いらねぇんだったら返せよ!」






取り返そうと思ったらヒョイッと軽くかわされて俺のガムは の口の中に消えた。






「くれたんだから、このガムは私のだよー」
「なんだよ・・・食うんだったら素直にそう言えよな!本当にお前って可愛くねぇ・・・」



「あ。」
「えっ?」






「おいしいじゃん!これぇ」















トクンッ・・・。















なんだよ・・・こいつ。





できるじゃんか・・・そういう顔。















「どうしたの?ブン太」
「えっ・・・あ」






自然に笑うとこんなに綺麗な顔するんだ・・・ って。






「お前さ・・・」
「うん?」
「笑った方がいい顔するんだな」






俺の真似なのか、ガムを膨らませていた は眉をしかめるとパチンッとフーセンを割った。






「なに急に・・・?」
「お前さ!今みたいに笑った方が絶対いいって!!」
「はぁ!?」
「さっきの 、すっげー可愛い!!」






俺は・・・今日初めて の素顔ってやつを見た気がした・・・。















勉強会終了後。






「なんね?ブン太の奴、急に に懐きよったん?」
「フフッ・・・」
「どうかしたか?蓮二」
「いや、なんでもない・・・」






あの丸井まで を気に入ったか・・・
これからどうなるのか楽しみだな。 ・・・。
















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
丸井ブン太との絡みでしたー!!

少しずつ動くブン太の心。

少しずつ変わる ヒロイン の心。

さて・・・お次は?







2006.10.21