1人じゃなにも出来ないくせに。


人は皆、自分1人で何でも出来ると錯覚する。








No.11    『Fade』








ガラッ!!






「買ってきた・・・」
「わーい!さっすがジャッカルー!!」
「ありがとうございまーす♪」






午前中の授業も一段落して憩の時間の昼休み。

袋いっぱいにパンやらジュースやらを詰め込んで部室に現れたジャッカルは
全員の拍手によって迎えられた。










「やっぱ買い出しはジャッカルだよなー!」

「速いし背は高いし。インパクトあるから購買のババァ達も
 ジャッカル先輩にだけはサービスするんスよね!」

「インパクトって何だよ・・・」

「えっ?肌とか顔とか頭とか?」

(やっぱり・・・)






ジャッカルが部屋の隅で静かに涙をためていると
仁王がパンの袋を開けながら不思議そうに尋ねた。






「そういや・・・ は?」
「へっ?」
「あ、いねぇ・・・」






見渡しても の姿はなく、いるのはレギュラー陣だけ。






「さっきまでいたよなぁ?」
「あぁ」
「俺、 の分も買ってきたんだぜ?」






すると柳はフッと思い出したように呟いた。






「もしかしたら・・・」
「柳、知ってんのか?」
「あぁ。たぶんあそこだ」































少し風が強い今日、 は以前見つけたサボりスポットで何をするわけでもなく
ただボーッと空を見上げていた。






「あ、いた!」
「んぁ?おー。ジャッカルー」






突然現れたジャッカルは溜め息をつくと座っている の目の前で
少し腰を曲げて見下ろした。






「よくここだってわかったね?」
「柳に聞いた。ところでお前ここで何してんだよ!昼飯は?」
「・・・まだ」
「ほらっ!!」






ズイッと差し出された袋には の好きな菓子パンとコーヒーが入っている。
は首をかしげながらジャッカルを見上げた。






「買ってきた。あいつらも部室で食ってるからさぁ・・・来いよ」


「ヤダッ」

「即答かよ!?」


「うーん・・・あまり食べたい気分じゃないの」

「気分の問題じゃねぇだろ!!?」






しばらくたっても動こうとしない を見てジャッカルは静かに口を開いた。






「なぁ・・・」
「ん?」
「前から思ってたんだけどお前ってさぁ・・・たまに一匹狼なところあるよな」






「え。そうかな?」






「あぁ。部活中も・・・なんか孤独だし、今日だって知らないうちに消えたじゃねぇか」
「それは・・・」
「しかもお前の行き場所は誰も知らねぇし・・・。わかるのは柳くらいだぜ?」








小さく笑うと は草の上に寝そべり空を仰ぎ見た。
風に揺られる草の感触が少しくすぐったい。








「ダメかな・・・一匹狼じゃ」
「あ?」

「誰かと一緒にいると・・・気遣ったり、少し我慢が必要な時だってあるし。
 面倒って言うか・・・疲れちゃうと思うんだ。そういうのってさ」






強い日差しを は片手で遮った。






「1人だったら・・・そんな無駄な事考えなくて済む・・・」
「俺は・・・」






聞こえてきた声に はジャッカルの方へ顔を向けた。






「お前の言ってる事、わからなくはない・・・けど。やっぱり寂しくねぇ?1人って」






ジャッカルは困ったような顔をして言葉を探すように話し始めた。








「俺だったら何かやるとき、1人より・・・あいつらと一緒の方が何倍も楽しい。
 テニスもそうだけど、飯食ったりただ喋ったり、たまに喧嘩とかしたりさぁ・・・
 それって1人だとできねぇ事じゃん?」






だったら・・・っとジャッカルは真剣な顔をして見せた。










「一匹狼より、集団でいた方が楽しくねぇか?」










は何も言わず起き上がると風で長い髪をなびかせながら目を細めた。






「そうかな・・・」






先輩ー!!」
「あ、赤也と・・・みんな?」
「帰ってこねぇから俺達が探しちまったよ」






部室にいたはずのレギュラー陣が全員、 の穴場に集結すると
好き勝手に座って持参していた昼食を広げ始めた。






メンバーが来た途端、静かだった空間に笑い声が絶え間なく響いている。






「ねぇ・・・ジャッカル」
「ん?」
「こいつらと一緒にいた方が何倍も楽しいって・・・このこと?」
「・・・さぁな」






はしゃいでいるメンバーを見つめながら とジャッカルはお互いに笑顔を向けた。
















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お次はジャッカル氏との絡みでございます。

正直もっと「ハゲ」とか

「父親無職」とかでイジメたかった・・・(悪)







2006.10.7