昔の記憶は大事にしろって言うけれど・・・


大事にしたいほどいい記憶なの?








No.5    『Fade』








夢を見た・・・


暗闇の中で誰かが叫んでる・・・。


誰・・・?


誰なの・・・?


叫んでいるのは・・・誰?
















っ!!」






――――――― ハッ!!






机の上で俯いていた顔をバッと上げると、目の前にはテニス部の
レギュラージャージを着た柳が立っていた。


時はすでに放課後。教室には2人以外誰も残っていなかった。






「蓮二?」
「嫌な夢でも見たのか?・・・うなされてた」
「別に・・・大丈夫。ちょっと変な夢を見ただけ」




ニコッと笑うと柳は軽くポンポンっと の頭を撫でた。




「無理をするな」
「してないよ?」





は鞄をつかみ席を立つと何も無かったように教室を出た。
柳はジッとその場から動かずに俯いている。









「何やってるの?部活行くんでしょ?」
「あぁ・・・そうだな」





廊下を歩きながら柳は不意に少し先を歩く の手を握った。
予想していたことだが は驚いて振り返った。









「ちょっ!何!?」
「いや、別に・・・なんとなく?」
「なにそれ!?蓮二それセクハラになっちゃうよ!!?」
「俺ならいいだろ」
「バーカ」






すぐに手を離した
しかし柳は気付いていた・・・ の手の平が汗でグッショリ濡れていたことに。















夢を見たと言ってたな・・・またあの日の夢か?

こいつが目の前でこんなに苦しんでいるのに・・・。

俺がこいつのために出来ることは、なにもないのか・・・?






もどかしさが柳に襲いかかった。
何にもできない自分が情けなく思えて握り締めた拳が小さく震えた。
















「蓮二。どうしたの?具合悪い?」
「なんでもない。それより・・・遅刻する。早く行くぞ」
「うん。ただし具合が悪いならちゃんと言ってよ?」




それでも屈託ない笑顔を向けられると柳はフッと笑みを浮かべてしまうのだった。





















「なぁー。まだ来ねぇの?マネージャー」
「柳が迎えに行ってるはずだよ」






練習をしていた手を止めて幸村は不機嫌そうなブン太にほほ笑みかけた。






「あの女には興味あるけぇゆっくり話がしたいのぅ」
「あ、柳先輩来たー!!」





赤也の言葉に全員が振り向く、するとそこには2人以外すでに面識のある と柳が
こちらに向かって歩いて来ていた。



幸村はすぐに集合をかけ2人もその中に加わった。

















。3年。今日からマネージャーをやることになりました。よろしく」




テニス部の部員は全員、その の外見ですでに無言になっていた。
そんな中口を開くのは以前にも会ったことがあるレギュラーの面々。






「仁王雅治。よろしくー」
「柳生です」
「ジャッカル桑原だ」
「真田だ。マネージャーになった以上仕事はしっかりしてもらうからな」




「僕は幸村。あそこで固まってるのが丸井と切原だよ。じゃあ君には早速仕事を教えていくね」
「それなら俺がやろうか?」
「いいよ。僕がやる。じゃあついて来てくれる? さん」





幸村の言葉に は黙って頷くと2人は部室へを消えていった。


















「う・・・わぁ!なんかすっげぇ緊張したー!!」
「あいつ本当に俺達と同学年かよ!?」





口々に騒ぐメンバー。
新しいマネージャーに対する印象もバラバラなら
今後 に対する期待も色々なのだろう・・・。













そんな中、仁王がたった1人。
ニヤッと笑みを浮かべながら部室を見つめていた・・・・・。
















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ヒロインはどんな夢を・・・。

柳の悩める原因とは・・・。







2006.6.11