明るい光の世界より
暗い陰の世界の方が
早く弱った心を締め付ける・・・。
No.4 『Fade』
面接をした次の朝、柳達は部室でマネージャー希望書をまとめていた。
ガチャッ!!
「おーっス!」
「ちーっス!!」
元気よく現れたブン太と赤也は柳達がまとめている名簿の束が目の入ると嫌そうに眉をしかめた。
「えーっ!まだ残ってんのかよ!?」
「途中で逃げ出した奴がよく言うぜ・・・」
「だって・・・。あと何人残ってるんスかぁ?」
「99人」
「「えぇえ―――っ!!?」」
グッタリと床に座り込むとブン太が不機嫌そうにフーセンガムを膨らませた。
「あと99人も残ってんのかよー?じゃあ今日もテニスできねぇじゃん」
「いや、後の99人は面接しなくてもいいんだよ」
「「えっ・・・なんで??」」
再びブン太と赤也の声が重なる。
幸村はおかしそうにクスッとほほ笑むと1枚の紙を目の前でヒラヒラと揺らした。
「もう彼女に決めたから♪」
「あ、こいつって・・・」
「確か・・・柳先輩の従兄弟?」
それは見覚えのある写真と名前が書かれている希望書だった。
「そういえば昨日2人は途中で逃げ出したので彼女本人に会ってませんでしたね」
「柳生たち会ったの?どんな奴だった?」
「どんな奴と聞かれると説明に困りますが・・・なんて言うか」
「不思議な女」
柳生の言葉を遮って仁王は机の上であぐらをかいた。
「今までの女と全っ然違う。初対面でいきなり俺らのこと睨みよった・・・
しかも、幸村相手に1歩も引いちょらんかった」
「付け足すと彼女・・・今まで学校に通ってなかったんだって」
その言葉にブン太は「やっぱりー!」っと声を上げた。
「今まで学校に来なかったんだろ?俺そいつのこと見たことねぇもん!!」
顔が広いブン太が知らなかったくらいだ・・・全員が初対面でもおかしくないだろう。
それを聞いて赤也が首をかしげた。
「つまり登校拒否だったってことっスか?でも・・・そんな人にマネージャーなんて務まるんスかねぇ?」
「問題ない。あいつにとってマネージャーの仕事など体力が有り余ってしょうがないくらいだろうし・・・」
「そ、そんなにすごい人なんスか?」
「会えばわかるだろ」
「ちなみに彼女は今日の放課後から来てもらう予定だから♪」
幸村は特有の笑みを向けると真田とメニューの確認を始めた。
「なに?幸村ずいぶん機嫌よくね?」
「新しいマネージャーを
に決めてからずっとあんな感じだ」
「幸村部長が気に入ったってことっスか?」
「幸村に気に入られた女ってどんな奴だろ?俺今から楽しみになってきたー!!」
■
昼休み、偶然見つけたくつろぎスポットで私はお弁当を広げた。
ここは人が全然いなくて日当たりがよく、大きな木が私の元に木陰を落としていて・・・
授業をサボるにはもってこいの場所だった。
よし。今度サボるときはここに決定。
「いただきまーす」
綺麗に焼けた玉子焼きを口に入れようとした瞬間。
ポケットに入っていた携帯が私に電話がきたことを知らせた。
私にはくつろぐ時間さえも許されないのだろうか。
「・・・蓮二の奴・・・」
ディスプレイには蓮二の名前が表示されている。
私はその瞬間、絶対無視を決め込んだ・・・。
「・・・ったく。しつこいなぁ・・・」
さっきから鳴り止む様子もない携帯を私は恨めしく見つめた。
どうやら私が出るまで止まる気がないらしい。
私は仕方なく電話に出た。
「ただ今電話に出ることができません。発信音の後にメッセージを・・・」
「今どこにいるんだ?」
「だから、発信音の後にメッセージを」
「どこにいる」
「・・・学校の裏庭・・・」
それを聞くと蓮二は電話を切り、10分もしないうちに私を見つけ出した。
「よっす!」
「いつもここで食べているのか?」
「まぁね」
「はぁ・・・クラスの輪に入ろうとは思わないのか」
「バカ言わないで。教室で大騒ぎしてる奴等の輪に入って何が楽しいの?」
「そうだな・・・お前ならそう言うと思ったよ」
蓮二はそう言うと私の隣に腰を下ろした。
「いい知らせがあるんだが・・・」
「あんまり期待しないね」
「そう言うな。朝練のとき正式にお前がマネージャーに選ばれた」
は一瞬動きを止めたが「フーン・・・」っと軽く返事をして再びお弁当を食べ始めた。
「どんな手使ったのか知らないけど・・・うまく丸め込んだみたいだね」
「人聞きの悪い。部員全員の賛成のもと決まったものだ」
「・・・へぇー・・・」
「今日の放課後からお前にも部活に出てもらう。遅刻するなよ」
私の頭を軽く撫でると蓮二は来た道を戻っていった・・・。
「リハビリ・・・ね」
呟くと側に置いておいたジュースを飲み干した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ただ今電話に出ることが出来ません。
発信音の後にメッセージを・・・ブツッ!!
ってのが私の流れです。
2006.6.4