人間は誰しもが心に陰を持ち・・・


他人には絶対に踏み込ませない密室を持っている・・・。








No.3    『Fade』








朝・・・いつものように6時起床。
ちゃっちゃとラフな服に着替えると枕元に置いてあった携帯が鳴り響いた。





「蓮二からメール・・・?」





メールが届くこと自体はそんなにめずらしい事ではなかったが
テニス部の練習があるはずの蓮二がなんで・・・?


開くと文章は短く「今、家の前にいる」












だからなんだ。












とりあえず2階の窓から顔を出すと下で手を振る蓮二がいた。





















「なんか用?」
「久しぶりに会って言う言葉がそれか?」
「わー。蓮二くん久しぶり。元気だったー?(棒読み)」
「・・・俺が悪かったよ」
「で?なんの用?」




「学校に出てこないか?」









またその話?私は首を横に振った。



「悪いけど・・・」
「そう言って・・・いつまで不登校を続けるつもりだ?」
「・・・・・・・・・・。」
「もういいだろ・・・学校に来い」




納得させるような蓮二に私は溜息をついた。








「私の事なんかほっとけばいいのに」
「今までずっとこんなお前の姿を見てほっとけるわけないだろ。今日の朝練は休むと連絡を入れた・・・
 お前が学校に行く気になるまでここで待たせてもらう」



蓮二の目は本気で、私は自分でも驚くほどあっさり諦めた。
本当は・・・蓮二のあの目が苦手で、ただ逃げただけだった・・・。








「はぁ・・・わかったよ。こうなると蓮二しつこいんだから。どうせ夜になっても待ち続けるつもりだったんでしょ?」




準備してくる・・・そう言って私はいったん家に戻った。





















「お前、不登校の間勉強はどうしてたんだ?」





久しぶりに制服を着た。


学校への道のりを歩きながら蓮二はお得意のデータノートを取り出しながら聞いてきた。





「蓮二くん。勉強なんかどーにでもなるよ・・・なんなら今月末にあるテストで私の実力をご覧に入れましょうか?」
「それは楽しみだ。あ、お前あそこで証明写真撮ってこい」



蓮二は証明写真のボックスを指差しながら言った。



「証明写真?なんでよ」
「ちょっと使うんだ」
「私の写真を何に使うっていうの?蓮二くん怖ーい(棒読み)」
「それはもういい」



真面目に睨まれたから仕方ない・・・今回は素直に私が折れた。
写真を撮って蓮二に渡し「何に使うの?」っともう1度聞いてみた。






「写真をここに貼って・・・ここに名前を書いて」
「・・・なんなのこれは・・・?」






渡された紙には「男子テニス部マネージャー希望書」と書かれていた。





「お前にはうちの部活のマネージャーになってもらう」

「はぁ?ふざけないでよ!なんで私が!!」






スッと伸びた腕が希望書を持った私の手首をつかむと、あの冷たい瞳が私を捕らえた。





「お前は少し・・・リハビリをする必要がある。無理をするな。隠すな。
 お前は気付かないうちに自分自身を追い詰めすぎているんだ」

「言ってる意味がわからな・・・」




「だから、なるべく俺のそばにいろ・・・






さっきの冷たい瞳とは逆に優しい笑顔が私に向けられた・・・。







「そばにいれば俺が守ってやれる」














「・・・勝手だよ」















突然やってきて

突然学校に来いとか言って・・・





私の嫌いな冷たい目をしたかと思えば

私の大嫌いな優しい笑顔なんか向けちゃって・・・





簡単に守るとか言って・・・





本当に勝手だよ・・・蓮二。













「あぁ・・・自覚してる」






つかんでいた腕を放し、かわりに私の腰に自分の腕をまわすと半分抱き締められる形で蓮二に引き寄せられた。






「だから早く・・・昔の に戻ってほしい・・・」












そう言うと蓮二は抱き締める腕に力を込めた・・・。
















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この話は面接を受ける前の2人の話でした。


今回の話で何を伝えたかったんだ私は・・・?
ここからヒロインちゃんが変わっていくようにしたいです。





2006.5.21